2016年02月09日

「トキワ荘実録 手塚治虫と漫画家たちの青春」丸山昭

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マンガの歴史を語る上で触れないわけにはいかないトキワ荘。

手塚治虫をはじめとして、寺田ヒロオ、石ノ森章太郎、藤子不二雄赤塚不二夫などが人気マンガを生み出し、夢を追いかけた砦でした。

トキワ荘について書かれた文献はいろいろとあります。

ドラマにもなりましたし、ドキュメンタリーで取り上げられたりもしています。

藤子不二雄の「まんが道」などは当時をじっくりと読みやすく描いた名作です。

この本もそんなトキワ荘時代を回想した一冊。

著者はトキワ荘全盛時代を知る元手塚番編集者です。

初対面の手塚治虫はとても人当たりのよい気さくな人物でした。

ところがどっこい。

締め切りから逃げる逃げる。(笑)

どこにいるのか居所がわからない。

著者以外にも手塚番の編集者たちはずいぶん泣かされたようです。

石ノ森章太郎や赤塚不二夫に少女マンガを描かせたのも著者。

各マンガ家にとって著者との出会いは大きかったようです。

この本を読みますと古きよき時代だったんだなという印象を受けます。

マンガがまだ今ほど日の目を見るような時代ではありませんでした。

しかし皆のマンガに懸ける思いはほとばしっていたんですね。

ラベル:漫画本
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2016年02月07日

「日本料理神髄」小山裕久

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料理人として現在日本料理界を代表するひとりである著者。

この本では二つの章に分けて日本料理を語っておられます。

第一章では『考えてきた』ということで、今まで著者が経験してきたこと考えてきたことを若い料理人に対してアドバイスするというような体裁です。

第二章は『話してきた』。

いろんな人との対談集です。

湯木貞一、徳岡孝二、田崎真也、石鍋裕、ベルナール・ロワゾー、陳建一、ベルナール・パコー、三國清三ジョエル・ロブション山本益博

第一章では非常にわかりやすく日本料理について解説しておられます。

だしについて、「切る」とはなにか、「焼く」とはなにか、「蒸す」、「揚げる」、「炊く」ということ、などなど・・・・。

日本料理の基本についての話しといえるでしょうか。

第二章はいろんなジャンルの料理人と対談しておられるので、これはある意味基本を踏まえた上での応用という読み方もできるかもしれません。

やはり日本料理の料理人だからといってそれだけに閉じこもっていていいはずはなく、いろんなジャンルの料理に対してのコミュニケーションは必要でしょう。

もっとオープンになりませんとね。

著者はパリでフランスの料理人を対象とした日本料理のフェアなども成功させておられますし、海外での活躍をしておられます。

このような正統派の料理人がきっちりと日本料理を海外に伝えていただきたいですね。

本書は料理素人にとっても非常にわかりやすく理論的な内容の一冊です。

ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 03:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 『こ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月05日

「女面」円地文子

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夫を亡くしたあとも短歌雑誌を主宰する姑の三重子と一緒に暮らしている泰子。

まだ若く美しい泰子に伊吹と三瓶という男たちが思いを寄せます。

泰子もその二人に対してはまんざらでもない態度を取るのですが、どうも煮え切りません。

どうやら三重子の影響が大きすぎるようです。

やがて泰子は伊吹と男と女の関係になります。

しかしそれにも三重子の意図があったのです・・・・。

この作品で描かれているのは三重子と泰子という女のしたたかさと怖さです。

作中で三重子が源氏物語について書いた随筆があるのですが、これが三重子の恋愛観・人生観であり、その奥には作者の主張があります。

女性の登場人物でもうひとり三重子の娘で春女という女がいるのですが、白痴という設定です。

この春女がいろいろと含みのある三重子や泰子と対照的であり、何も考えることなくただ雌としての存在として描かれています。

そんな女たちに男たちは振り回されるわけですが、やはり女のほうが一枚も二枚も上手なんだなと思わされます。

裏のある女に比べたら単純な男なんてかわいいものです。(笑)

ただ三重子が泰子と春女を使ってまで実行する企みの執念が私にはわからない。

そんなことしたからってどうなるの? という思いです。

ラベル:小説
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2016年02月03日

「空想科学漫画読本」柳田理科雄

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漫画、アニメ、特撮などの設定を科学的に検証するという「空想科学読本」シリーズ。

今回は「空想科学“漫画”読本」ということであり、漫画に絞って取り上げられています。

「北斗の拳」に出てくる17メートルもの大男。

こんな相手と戦って主人公は勝てるものなんでしょうか。

というか、そんな人間がいるというのがすごいのですが。

「巨人の星」の大リーグ養成ギプスは本当に役に立つのか。

「キャプテン翼」の若林君の能力は実はとんでもないレベルだった。

「リングにかけろ」の必殺技の凄まじさといったら・・・・。

などなど。

いままでに何度も書いてきたと思うのですが、笑いの手法のひとつとして馬鹿馬鹿しいことを真剣に論じるというのがあります。

これがその類ですね。

この本に取り上げられている作品を読んだ読者は、当時おそらくなんの疑問も持たずに受け入れていたと思います。

それはやはり「マンガだから」。

ありえないという常識はもちろんわきまえつつ、しかしそんなことは頭の隅っこに追いやり存分に世界に浸っていたはずです。

そこに「ちょっと待った」とチャチャを入れたのがこの本です。

まあミもフタもないツッコミなんですけどね。(笑)

でもこういう楽しみ方もありなわけで。

この本によって自分の好きなマンガ作品が貶されたなんて思う人はいないのではと思います。

むしろ「そうそう、そうなんだよね」と一段と愛着が湧くのでは。

ちなみにこのシリーズの科学的検証について間違いを指摘する本もあります。

科学的な間違いというのは訂正する必要があるというものの、いちいち目くじら立てるのもちょっと野暮かなという気もしますけどね。

それをいうとこの本自体がそうなるか。(笑)

ラベル:漫画本
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2016年02月01日

「木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか(上・下)」増田俊也

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 『木村の前に木村なく、木村の後に木村なし』

あまりにも有名なこの言葉が柔道家・木村政彦の強さを表しています。

柔道において15年間無敗で全日本柔道選手権を13年間保持したという伝説の人物です。

そんな木村がプロレスラーに転向し、当時プロレス界でスターだった力道山とどちらが強いのか世紀の一戦として試合することになります。

ですが試合は力道山の一方的な攻撃の前に木村がなすすべもなく崩れ落ちてしまうのです・・・・。

木村政彦という最強の柔道家の半生を描いた渾身のルポタージュです。

まさに渾身という言葉が当てはまる作品ですね。

木村の少年時代から師匠である牛島辰熊との出会い、人間離れした猛烈な練習の毎日、その結果得られた異様ともいえる肉体と圧倒的な強さ。

プロ柔道の立ち上げからプロレスへの転身。

そしてこの作品のメインである力道山との試合。

無残に敗れた木村のその後。

著者は時間をかけて丁寧に取材を重ねておられます。

その結果今まで明らかになっていなかったいろんな事実さえもつきとめておられます。

タイトルからもわかるように著者のスタンスはあくまでも木村側です。

力道山との試合については、筋書きがあったにもかかわらず試合中に力道山が一方的に約束を破り不意打ちのような攻撃を仕掛け、木村を倒したというのは明らかな事実です。

しかし最初から真剣勝負として試合していればどうだったのか。

著者は何人ものプロ格闘家に取材しVTRを観てもらい当然木村が勝っていたという言質を引き出そうとしますが、思うような答えが返ってこず自身の客観性のなさがあったことも吐露しておられます。

たしかに当日の木村のコンディションはよくなかったようですね。

明らかな練習不足もありますが、筋書きがあり最初から試合結果が決まっているのですからなにも真剣に取り組む必要もない。

ところが力道山はみっちりと練習して体を作ってきていたようです。

契約の時点から胡散臭い行動を取っていた力道山は、はなっから真剣勝負を仕掛けるつもりだったのでしょう。

木村は力道山の狡猾さに敗れたのです。

ですがもし最初から真剣勝負という前提であったなら、しかも木村全盛の時代であったなら。

とても木村が負けるとは思えません。

あとでどうこう言っても詮無いことですが。

この試合後の木村も著者はしっかりと描いておられます。

不世出の柔道家の記録として、実に読み応えのある力作でした。

posted by たろちゃん at 03:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ま』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする