2016年03月20日

「芸術は爆発だ! 岡本太郎痛快語録」岡本敏子 編著

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芸術家、岡本太郎。

彼を現役で知っているのは30歳以上の人たちになりますかね。

テレビにも出演し、個性的な言動で人気もありました。

作品の代表作はやはり大阪万博の太陽の塔でしょう。

この太陽の塔制作のエピソードが紹介されていますが笑えますね。

万博のシンボルゾーンの大屋根は丹下健三の設計です。

その高さは30メートル。

構造計算が難しく時間がかかるそうです。

そこに乗り込んできたのが岡本太郎。

「太陽の塔の高さは70メートルだ。ぐんと、ぶつかるんだ」と、大屋根に穴を開けろと言い出します。

建築家たちはカンカンになって怒ったそうですが、結局は太郎の情熱に圧倒され大屋根をぶち抜いて太陽の塔が突き抜けるというあの造りになってしまったそうです。

その太陽の塔ですが、あるジャーナリストが太郎に質問したそうです。

「どうしてあんなものが出てきたんですか?」

30メートルの屋根をぶち抜く70メートルの塔。

誰しもその発想を知りたいところです。

太郎は「それはねぇ・・・・」と言ったきり答えが出てきません。

長い沈黙に何かまずいことを聞いてしまったのかと、ジャーナリストとカメラマンは冷や汗をかきながら身を小さくしていたそうです。

やがて太郎がぽつりと言います。

「それは・・・・当人に聞いてみないと解らないねぇ」

「えっ?」

さすがの岡本太郎ですね。(笑)

その他、岡本太郎のいろんなエピソードや痛快な発言が収められています。

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2016年03月18日

「ホルモン奉行」角岡信彦

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ホルモン。

美味しいですねぇ。

酒のアテとしては確実に正肉よりも上に君臨します。

でもワインという感じではないですね。

やはりビールか焼酎でしょうか。

さて、この本ではそんなホルモンを食文化としていろんな面から紹介しておられます。

ただ単に焼肉好きの人があちこち焼肉屋に行ってあんなの食べたこんなの食べたというような内容ではありません。

しかし決して堅苦しい内容ではなく、実にあっけらかんと楽しく読めます。

まずは部落や在日朝鮮人の歴史から入り、取材しておられます。

ホルモンを語る上でやはりこれは避けて通れませんしね。

なので部落のホルモン料理である『ころ炊き』や『ドロ』などといった料理も紹介しておられ、私などはそんな料理があるなど初めて知りました。

そして最近大阪でよくみかける『かすうどん』に使われる油かすの製作現場を取材したり、牛や豚に限らず馬肉でつくる『さいぼし』を取材したり。

海外にまで足を延ばしておられます。

BSE騒動に怒ったりも。

非常にバラエティに富んだ内容です。

著者のホルモンにかける愛着がひしひしと伝わってくるこの一冊、ホルモン好きはぜひ読むべし。

ラベル:グルメ本
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2016年03月16日

「柴田さんと高橋さんの小説の読み方、書き方、訳し方」柴田元幸 高橋源一郎

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小説家と翻訳家の対談集です。

内容はタイトルの通り。

第一章では高橋氏が「小説の書き方」を、第二章では柴田氏が「小説の訳し方」を、お互いに対しての質問形式で語り合っておられます。

第三章ではお二人がそれぞれ海外文学を60冊選び、「小説の読み方」について。

第四章は同じく日本文学を60冊。

第五章では「小説の読み方、書き方、訳し方」として、総括のようなものですか。

一流の小説家や翻訳家はどのように小説を読み、書き、訳しているのか。

とても興味深い内容でした。

それらについて語ることによって当然古今東西の作家や作品が紹介されているわけで、ただの創作論や翻訳論というだけでなく作家や文学の評論にもなっています。

なので小説を書こうとしている人や翻訳を目指している人たちはもちろん、小説に興味ある人たち全体が楽しめる内容です。

海外文学については私はあの独特の翻訳臭のようなものが苦手であまり好きではないのですが、しかしそれも翻訳者によりけりですし、柴田氏の「あらゆる翻訳は誤訳である」という言葉になるほどという思いがしました。

「何かが必ず失われると。要するに負け戦だけど、いかによく負けるかの努力はしていくということです」

私は海外文学は原文で読まない限りその作家(作品)を本当に味わったことにはならないという考えなのですが、残念ながら私にはそのような才能はありませんしそこまで努力する気力もありません。

なので高橋氏が紹介した「翻訳は原作の劣化系ではなくそれとは異なった作品」という考え方ではなく、「オリジナルが100でどこまでマイナスを避けられるか」という考え方での翻訳を読んだほうがいいのかなと。

それでもやはりそれは翻訳者の文体であり原作者の文体ではありませんけども、少しでも原文の雰囲気を味わえるのではないですかね。

第三章で「まず、訳者で選んでみる」とあるように、海外小説の場合まずは好みの翻訳者を見つけてその人の作品から入っていくのが親しくなる近道かもしれません。

などとつらつら考えた次第です。(笑)

ラベル:書評・作家
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2016年03月14日

「聖の青春」大崎善生

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将棋界のトップクラスA級に在籍し29歳という若さで逝去した棋士、村山聖。

重い腎臓病を抱えながらも名人を目指して命がけで将棋を指しました。

自分には時間がないとわかっていたが故に、将棋にかける情熱は凄まじいものがあったようです。

そんな村山聖の生涯を描いたノンフィクション。

著者は「将棋世界」という雑誌の編集長をしていましたので、間近で村山を見ておられました。

なので村山の素顔などもよく知っておられます。

その筆からは将棋にかける凄まじい執念とは対照的な、純粋で無邪気な面も描き出されています。

そして師弟愛。

森信雄と村山との師弟関係は普通には考えられない関係です。

師匠の森は村山のパンツまで洗ってあげたといいます。

それほどの愛おしさを師匠は持っておられたんですね。

またそこまでさせる魅力が村山にはあったということです。

「もし」とか「れば」などの話をしても詮無いことですが、体のハンデもなく存命ならばどれほどの活躍をされたのだろうと残念でなりません。

ただハンデあってこその“怪童”村山聖だったとは思いますが。

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2016年03月12日

「せきれい」庄野潤三

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裏表紙には傑作長編と書かれていますが、小説というよりはエッセイですね。

日々の暮らしを淡々とした筆致で描いています。

ただこういうのも作者が小説だと言いきればそれはやはり小説なのかもしれません。

読むぶんにはどちらのジャンルであろうが関係ないわけですが。

誰の生活もそうだと思うのですが、ここに描かれている毎日に大きなドラマはありません。

近所のパン屋でパンを買っただの、庭に花が咲いただの。

子供が孫を連れてやって来ただの。

ご近所さんから物をいただいただの。

あまり代わり映えのない毎日の描写なのですが、しかしこれがなんとも優雅で贅沢なんですね。

作者は毎日ハーモニカを吹き、妻はピアノを弾き、曲やそれを作った人たちに感心し敬う。

庭に咲いた花に感動し、遊びに来る鳥たちに目を細める。

豊かな暮らしというのはこういうものなんだなと思わされます。

お金があるとかないとかじゃない。

もちろんお金があってこその生活だという現実はあるにしても。

贅沢な食事をした、高価な物を買った、海外旅行に行った、そんなことを鼻高くして語る俗な趣味とは無縁の日常です。

よろこぶ、うれしい、おいしい、ありがたい、そのような言葉が頻繁に出てきます。

周りの人々や自身が毎日を無事に元気に過ごせていることや、自然に対する感謝の気持ちが溢れ出ています。

心が穏やかになる清々しい一冊でした。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 02:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 『し』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする