日本や世界各地を旅していろんな料理や食文化を検証した食エッセイです。
といっても堅苦しさはまったくなく、まずは「ニラミダイの研究」なんてのから始まります。
京都にニラミダイという風習があると紹介されているのですが、私の住んでいる大阪でもあります。
いや、ありましたと過去形で表現したほうがいいのか。
いまの家庭でどれほど『にらみ鯛』をやっているでしょう。
これは元旦に鯛の塩焼きを出すのですが、箸をつけません。
名前どおり睨むだけです。
三が日これで過ごしまして、四日目にようやく箸をつけます。
しかし三日経った鯛の塩焼きは果たして美味いのか。
著者は実際に鯛の塩焼きを2匹購入し、1匹は72時間後に、もう1匹は毎日少しずつ食べて味の変化を調べる。
ご丁寧に写真まで付けてルポしておられます。(笑)
私の家では元旦だけ睨んで二日目から箸をつけましたが。
省略形でしょうか。(笑)
他には「貴族から乞食まで パリジャンは毎日なにを食べているのか」。
日本人ってフランス料理というと綺麗に盛り付けされた皿が順番に出てくるフルコースを思いがちですが、普通の人たちがそんなものを食べているわけがない。
日本人が料亭や割烹の料理を家庭で食べていないのと一緒です。
一般のパリジャンの食事は質素です。
昼はビフテキ・フリット。
ビフテキにポテトフライが添えられたものです。
凝ったソースなどなく味付けは塩コショー。
夜はスープにサラダ、週末はこれにちょいとした魚や肉の料理。
こんな感じです。
ビフテキというと豪華なように思えますが、日本人の鯖の塩焼きみたいな感覚です。
エジプトの「ハトを撃つ男」なんてのも面白いですね。
エジプトには鳩がいない。
みんな食べてしまうから。
実によろしい。
鳩は平和の象徴なんて言われていますが、元々は食用にしていたんです。
その歴史はニワトリよりも古い。
その他、沖縄の豚料理やラーメンについての考察など。
美味しく楽しめる一冊でした。