小説家と翻訳家の対談集です。
内容はタイトルの通り。
第一章では高橋氏が「小説の書き方」を、第二章では柴田氏が「小説の訳し方」を、お互いに対しての質問形式で語り合っておられます。
第三章ではお二人がそれぞれ海外文学を60冊選び、「小説の読み方」について。
第四章は同じく日本文学を60冊。
第五章では「小説の読み方、書き方、訳し方」として、総括のようなものですか。
一流の小説家や翻訳家はどのように小説を読み、書き、訳しているのか。
とても興味深い内容でした。
それらについて語ることによって当然古今東西の作家や作品が紹介されているわけで、ただの創作論や翻訳論というだけでなく作家や文学の評論にもなっています。
なので小説を書こうとしている人や翻訳を目指している人たちはもちろん、小説に興味ある人たち全体が楽しめる内容です。
海外文学については私はあの独特の翻訳臭のようなものが苦手であまり好きではないのですが、しかしそれも翻訳者によりけりですし、柴田氏の「あらゆる翻訳は誤訳である」という言葉になるほどという思いがしました。
「何かが必ず失われると。要するに負け戦だけど、いかによく負けるかの努力はしていくということです」
私は海外文学は原文で読まない限りその作家(作品)を本当に味わったことにはならないという考えなのですが、残念ながら私にはそのような才能はありませんしそこまで努力する気力もありません。
なので高橋氏が紹介した「翻訳は原作の劣化系ではなくそれとは異なった作品」という考え方ではなく、「オリジナルが100でどこまでマイナスを避けられるか」という考え方での翻訳を読んだほうがいいのかなと。
それでもやはりそれは翻訳者の文体であり原作者の文体ではありませんけども、少しでも原文の雰囲気を味わえるのではないですかね。
第三章で「まず、訳者で選んでみる」とあるように、海外小説の場合まずは好みの翻訳者を見つけてその人の作品から入っていくのが親しくなる近道かもしれません。
などとつらつら考えた次第です。(笑)