三上義信はD県警の元刑事で現在は広報官。
家庭では一人娘が失踪中です。
職場では警務部と刑事部の軋轢、そして記者クラブとも事件の匿名問題で揉めており板ばさみ状態です。
そんな中、昭和64年に起こったロクヨンと呼ばれる少女誘拐殺人事件の被害者宅に警察庁長官が視察に訪れることになります。
三上は調整のため被害者宅を訪れますが、遺族は拒否。
刑事部からも警務部の犬だと顰蹙を買います。
しかし遺族を説得し長官の視察を実現させるのが三上の仕事です。
警務部長からもなんとしてでも遺族を説得しろと叱責されるのですが、やがて長官視察には真の目的があることを知ります。
そして視察前日、それに合わせるかのようにD県警を揺るがす大きな事件が・・・・。
さすがの横山秀夫、ビシッと締まりのある文章で読ませてくれます。
刑事の魂を持っていながら広報官として刑事部を敵に回すような仕事をしなければならない苦悩。
組織の一員として個人を殺してでも仕事をまっとうしなければならない葛藤。
そして失踪中の娘に対して父親としてなにも理解してあげていなかったのではという後悔。
いろんな思いを抱えて三上は目の前の仕事に向き合います。
ロクヨンの真実が書かれた『幸田メモ』や長官視察の目的などに読んでいて引っ張られるものがありますし、後半三上が事件に同行して犯人を追う展開も緊迫感がありました。
ですが、結局その事件の解決が中途半端ですし、三上の娘の件もそうです。
せっかくここまで来てという消化不良感がありました。
ラベル:小説