6月の半ば、昼寝をしていた徳正が目を覚ますと右足の膝から下が中位の冬瓜ほどに膨らんでいました。
脛毛も抜け落ち緑色になった足は形といい手触りといい、冬瓜そのものです。
そして親指の先が破れ、水が滴り落ちます。
徳正は寝たきりになり傍目には眠っているように見えますが、意識はあります。
しかし言葉を発することも体を動かすこともできません。
ある夜、右の爪先にむず痒いような痛いような感覚を覚え、目が覚めます。
足元にはぼろぼろの軍服を着た男たちが並び、先頭の足元にしゃがんでいる男は徳正の右足首を両手で支え持ち、踵から滴り落ちる水を口に受けていたのでした。
順番に水を飲み、敬礼して壁の中に消えていく兵隊たち。
毎晩現れるようになる兵隊たちは何者なのか・・・・。
シュールでユーモラスでブラックで悲しい作品です。
他にも2編収録されており、どれも沖縄を舞台にしています。
「風音」は垂直に切り立った崖にある古い風葬場の頭蓋骨の話です。
風が吹くと泣くという頭蓋骨。
その頭蓋骨にこだわる清吉は何を知っているのか・・・・。
「オキナワン・ブック・レビュー」がちょっと異色といいますか。
書評という体裁をとりつつ、遊びながら皮肉の効いた風刺をしていて笑えました。
それぞれタイプの違う作品で、作者の幅の広さが伺える短編集です。
ラベル:小説