シリーズ第14弾。
いつもの連作短編とは違い長編です。
二人の浪人者に襲われつつもそれを軽く撃退した男。
息・大治郎でもその男に勝てるかどうかの腕です。
それをたまたま目撃した小兵衛は、男の名が波川周蔵であることをあとで知ります。
そんな波川が大治郎を襲う計画に加担しているというのです。
気が気ではない小兵衛。
ですが波川という男、決して悪い人物ではないと小兵衛は見ます。
はたして波川を巻き込み大治郎を襲撃する計画というのは、誰がどのような理由で企てているのか・・・・。
前作あたりからでしょうか、主人公の秋山小兵衛の言動に大きな変化があります。
老いによるものでしょうか。
以前の小兵衛にはなかった言動が目に付くようになってきました。
これは作者の池波正太郎氏の当時の近況が反映していたのかもしれませんね。
作者の計算によるものもあったでしょうし、自然と筆ににじみ出るものもあったと思われます。
ただ物語としてはこれで正解かと思います。
シリーズで長期に至る場合、やはり登場人物も歳を取っていくわけですから。
それによる変化もまた長期シリーズの楽しみのひとつでしょう。
本作、波川の人物がよかったと思います。
シリーズも大治郎の妻・三冬の父であり小兵衛とも懇意である老中・田沼意次が失脚し、いよいよかなといったところです。
ついにあと2作となってしまいました。
ラベル:時代小説