放送局で事務職をしている倫子。
3年近く一緒に暮らしていた同じ局のディレクター達彦をガンで亡くします。
一緒に暮らしていたといっても達彦には妻子がいました。
不倫です。
その3年間は2人にとってどのような日々だったのか・・・・。
話は達彦の葬式から始まり、出逢いに向かって遡っていくという構成です。
そして最後にまた現在へ。
しかしなんともピュアといいますか純愛といいますか。
いや、不倫しておいて純愛もないんですけどね。
話自体が浄化されたような純粋さです。
とにかく悪い人が出てこない。
達彦は妻がいるというものの倫子を決して都合のいい女扱いしているわけではなく、その想いは純粋です。
倫子が達彦の妻を訪ねていっても妻は逆上することもなく。
達彦の前に田口というプロデューサーと付き合っていた倫子ですが、達彦は田口と一緒に仕事をすることになり2人の過去を知ります。
つまり倫子は田口の“お古”なわけですが、そんなことを気にする達彦ではありません。
また田口も倫子と達彦の関係を温かく見守っています。
仏のような人たちですね。(笑)
この作者の作品は以前に「花狂い」と「不随の家」という2冊を読んでいるのですが、それらはもっと読者に問いかけてくるような雰囲気があり、また考えさせられもしました。
ですがこの「あなたがいてもいなくても」にはそのようなのがありません。
裏がなく、ひたすら2人の深い愛を読ませられます。
ここまで徹底的に書かれますと、いやもう参りましたというほかありません。
実際これはこれでアリな読み応えあるいい恋愛小説だと思いますけどね。
ラベル:小説