2000年、倉敷。
大原美術館で監視員を務める早川織絵は学芸課長小宮山に呼び出され館長室に連れて行かれます。
そこで館長の宝尾と共に待っていたのは暁星新聞社の東京本社から来た文化事業部長高野でした。
暁星新聞社はこのたび東京国立近代美術館と組んでアンリ・ルソーの展覧会を開催する予定だといいます。
その展覧会にニューヨーク近代美術館(MoMA)所蔵の『夢』を借りることができるかもしれないとうのです。
しかしMoMAのチーフキュレーターであるティム・ブラウンが条件を出してきました。
交渉の窓口に早川織絵を起用せよと。
あのMoMAのチーフキュレーターがなぜ日本の地方美術館で一介の監視員をしている織絵を指名してきたのか。
そして話は1983年のニューヨーク、バーゼルへと飛びます・・・・。
いやぁ、読まされましたねぇ。
まず冒頭で一介の美術館監視員である織絵が実は・・・・という軽いジャブがあり、その後は過去に遡ってティム・ブラウンに視点が移り、織絵との関わりが描かれていきます。
ここでルソーについての人物や作品についての謎が提示され、ピカソの存在も絡んで。
ミステリーの要素があり、織絵とブラウンの対決といった展開が話を盛り上げます。
いろんな絵画も登場し、思わず自宅にある画集を引っ張り出してきて見直したりもしました。
特にルソー。(笑)
名画というのは神秘的な魅力がありますね。
画家は絵にどのようなメッセージを込めたのかとか、意外な意図があったりだとか、本当にその画家の手によるものなのか贋作なのかとか。
過去の人であり作品であるだけに謎も多い。
そんな名画の魅力を上手くミステリーに仕立てた秀作だと思います。
ラベル:小説