深夜二時四十六分。
想像力の中だけでオンエアされる『想像ラジオ』。
小さな海辺の町からDJアークが発信しているのですが、その場所はなんと高い杉の木の上。
木のてっぺんに引っかかり仰向けになって首をのけぞらせた状態での放送です。
曲をかけ、リスナーからのメールを紹介し、そして自分のことを語っていく中でだんだんとその町やアークに何が起きたのかが読者に見えてきます・・・・。
東日本大震災を題材にしているわけですが、これはまあ読み始めてすぐにわかります。
ただこの作品ではいかに震災が凄まじいものだったかとか、どれほどの被害があったのかとか、原発がどうだとかいうことを語っているわけではありません。
そういうハード面ではなくもっとソフト面といいますか。
震災で無事だった人と亡くなった人、この世とあの世、現実と非現実、それらを渾然とリンクさせ一体化させ、つながりを描いています。
あの世というのはこの世があってのことなんですよね。
自分が今生きているから死んだ者のことを思うことができる。
あの世というのがあるとして、もしそこに死んだ者の意識があるのだとしたら、やはり生きている者のことを思っていることでしょう。
行ったことがないのでわかりませんけども。(笑)
アークも中2になる息子のことを思い、奥さんのことを心配しますし。
死による別れは悲しく寂しいことですし、心残りも生まれますけども。
けど、想像力でそれを少しでも補うことが可能なのかなと。
相手を思い続けること。
耳をすませば、想像力で大事な人の声が聞こえてくるのかもしれません。
ラベル:小説