2016年09月10日

「相剋の森」熊谷達也

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クマを狩る猟師マタギの親睦会を取材で訪れた編集者の美佐子。

会場で「今の時代、どうしてクマを食べる必要があるのか」とぶち上げます。

雰囲気の悪くなった会場を出た美佐子は、ロビーで吉本というカメラマンに声をかけられます。

そこで吉本が言った「山は半分殺してちょうどいい」という言葉が頭を離れません。

なぜ人間は動物を殺すのか。

マタギは自分たちが生きていくために果たしてクマを狩る必要があるのか。

山を殺すとはどういう意味なのか。

美佐子は彼らの懐に入り込んで取材を始めます・・・・。

「森」シリーズ3部作の第1弾です。

といっても3作に繋がりはありません。

むしろこの「相剋の森」は吉本が主人公だった「ウエンカムイの爪」の続編といえます。

最近は動物愛護が相当うるさく言われています。

もちろん動物の命は大切であり、人間の身勝手でそれを奪っていいわけはありません。

マタギに対しても当然その考えはぶつけられます。

しかし昔からそのような暮らしをしてきた人たちはいまだいるわけです。

クジラやイルカにしてもそれらを捕獲し、食料としてきた文化があります。

単純に第三者がしゃしゃり出て反対を唱え批判できるほど浅い問題ではないでしょう。

都会の理屈と自然の理屈は違いますしね。

ただどこかで折り合いはつけなければならず、この作品にもそういう問い掛けがあります。

シリーズ2作目の「邂逅の森」ほど緊迫感あるシーンはありませんが、しかし大自然を相手に生きる人間を描き、読み応えのある作品となっています。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 02:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 『く』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする