2016年12月15日

「ダック・コール」稲見一良

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美校を出て小さなデザイン会社に勤めたものの、2年で仕事に夢も抱負も無くした青年。
何もかも投げ出して旅に出ましたが、だからといってどうなるものでもありません。
お金も底をつき、嫌でも家に帰らなければならなくなったそんな日。
青年は河原で石に絵を描く男に出会います。
男と一緒に車で雨やどりしながら、青年が見た6つの夢の物語・・・・。
どの作品も稲見一良らしいハードボイルドな内容です。
ハードボイルドといえば探偵やバーといったベタな設定が思い浮かびますが、もちろんそのようなうんざりする話ではありません。
決定的瞬間を映画フィルムに収めなければならないにもかかわらず、その瞬間に羽ばたいた幻の鳥に向けてシャッターを押してしまったカメラマンの助手。
密猟という秘密を持ち合い冒険する中年男と少年。
脱獄した囚人を銃を持って追いかける二世部隊出身の男。
船の事故で海に漂流する男の陸に残した人への思い、鳥や海ガメとの奇妙な出会い、など。
男のささやかな夢といいますかロマンといいますか、そのようなものを感じます。
心の中にぽっと暖かい火が灯るような作品集です。
硬質な文体ですが読み心地がなめらかなのは、決して作者がエエカッコしたヒーローを描こうとしていないからではないでしょうか。
むしろ不器用で自分に正直なゆえに人生を損しているような男たち。
そんな人物たちへの作者の暖かな眼差しを感じます。
他の作品集も何冊か読んでいますけども、どれもいいですね。
珠玉という気がします。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 『い』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする