2017年02月07日

「漁師だけが食べている直伝浜料理」野村祐三

CIMG2993.JPG
料理と言いましてもいろいろとありまして、例えば和洋中というジャンル分けができます。
高級店の料理と庶民店の料理という分け方もできます。
プロの料理と素人の料理なんてのも。
で、本書は漁師が作る(食べている)浜料理の紹介です。
漁師ですからもちろん料理に関してはプロではありません。
しかし魚については知り尽くしているわけで、素人というわけでもない。
魚の鮮度に関してはケチの付けようがありません。
それをその場でしか食べられないような料理法で食べたりするわけですから、高級店でも味わえないほどの美味だったりします。
そんな漁師だけが食べている直伝の浜料理を日本全国食べ歩き、紹介したのがこの本です。
北海道から沖縄まで46もの漁師料理が紹介されており、すべてレシピ付き。
どれも実に美味しそうです。
但しこの本で取り上げられている料理というのは飲食店を紹介したグルメガイドの料理とは違い、各地に昔から伝わる伝統料理だということを認識せねばなりません。
昔ながらの料理が姿を消していく昨今、食文化の伝承という思いも著者は込めておられます。
特に和食から洋風な食事への移行、そして魚料理は敬遠される傾向にあります。
ぜひ魚を使った和食というものを見直したいものです。
本書で紹介されている料理の魚はけっこうどこでも購入できる物がほとんどです。
地元のように捕れたばかりの物をその場でというわけにはいきませんが、自宅での再現は可能。
試してみたいですね。
ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 『の』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月05日

「どら焼きの丸かじり」東海林さだお

CIMG2994.JPG
グルメエッセイといえば東海林さだおの“丸かじりシリーズ”。
これで30作目とのこと。
いやあ、すごいですね。
数えてみますと35本収録されています。
それが30冊ですからね。
ちなみに2017年2月現在で39作。
週刊朝日に連載されているのが単行本となり文庫本となるわけですが、週刊誌の連載ですから当然週に1本書くことになるわけで。
連載開始が1987年ですから、それを30年続けておられるということです。
これはもう偉業としか言いようがありません。
さて、今回は「どら焼きの丸かじり」ということで、収録作の中の「愛すべきどら焼き」が表題作といえましょうか。
まずはしっとりと茶色いあの見た目。
ビロードのような皮のふくらみ。
ツヤがあってテリがある。
そして手にずっしりと重い重量感に頼もしさを感じつつ、半分に割るときのムリムリ感、断層のタテにスカスカと霜柱がきれいに立ち並んでいる割れ目の描写と続きます。
もちろんカステラや餡の食感甘味についてもじっくりうっとりと語りつつ、幸せに浸るのです。
しかし、ふと現実に目覚め、疑問を持ち、検証に入るわけです。
どら焼きというのは下にカステラを敷き、餡を乗せ、上にもう一度カステラを乗せフタをしている。
だがあれはフタなのか?
フタをしてあるのか、かぶせてあるのか、のっけただけではないのか。
上と下の間にすき間があり、中の餡が見えているではないか。
フタならばすき間が無いようにもっと配慮すべきではないのか。
ちょっと自覚がないんじゃないか・・・・。
とまあ、ショージ君の追及はパラノイア的に続いていくのであります。(笑)
ここがミソなんですね。
他の収録作にしても、ただ何々を食べました、何々屋に行きましたでは済まない。
食べ物にはそれぞれ人格(?)があり、そこには食べ手との格闘がある。
店に行けば駆け引きがあり、ドラマがあります。
焼き肉屋に行って「さあ、焼き肉だ」と心を奮い立たせ、帝国ホテルにわざわざハンバーガーを食べに出かけ、団子屋に行って自分で団子を焼き、立ち食いそば屋で温にするか冷にするかで迷い、そばだけではなくうどんという手もあったのかとうろたえる。
食べることに勇猛果敢に挑みつつも躊躇逡巡し、一喜一憂喜怒哀楽、当たって砕けて泣き笑い、満腹満足不満足、抱腹絶倒丸かじり。
愛すべき小市民の姿がそこにあります。
ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 『し』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月03日

「少女マンガ家ぐらし」北原菜里子

CIMG2995.JPG
マンガ家が書く本といえば、本業のマンガを除きまして大きく2種類あります。
まずは「マンガ家入門」といった類いの本ですね。
マンガを描くためのノウハウが書かれた技術書です。
原稿用紙のサイズはB4です、用紙にはケント紙、画用紙、模造紙などがあります、ペン先にはかぶらペン、Gペン、丸ペンなどがあります、といった道具の紹介。
そしてコマ割り、構図、効果線、スクリーントーンの使い方云々・・・・。
こういう本はたいがい大御所ですね。
石ノ森章太郎の本が有名ですが、手塚治虫藤子不二雄なんかも出しておられます。
そしてもうひとつはエッセイ。
これもやはり大御所が多い。
なので時代は昭和、トキワ荘が必ず出てきたりきます。(笑)
地元の田舎でマンガに出会い、マンガ家を目指して上京。
四畳半のアパートでひたすらマンガを描いていた云々・・・・。
マンガにかけた青春期といったところ。
自伝ですね。
で本書なのですが、そのどちらでもありどちらでもなく、ちょっと今までになかったかなといった内容です。
タイトルの通り、少女マンガ家はどのような暮らしをしているのかと。
技術的な指南もあり自伝的な内容でもあるのですが、もっと具体的日常的にマンガ家というのは普段どのような生活をしているのかといったようなことが書かれています。
もちろんそれはマンガに関わる範囲内でのことですけど。
大先生のお話を伺うというよりも、友人のマンガ家に話を聞くという感じでしょうか。
なので現在マンガ家を目指しておられる人には、けっこういい刺激になり勉強にもなるように思います。
憧れの存在がぐっと身近に感じられるといいますか。
この本が出版されたのは1993年。
私はこの著者のお名前を知らなかったのですが、さほど大きな作品を残したわけでもなく、現在は活動しておられないようですね。
しかしこのような本を書いた人でも、10年後20年後にはどのようになっているのかわからない。
そういう世界です。
この本プラスその後の消息を含め、まさにマンガ家ぐらしがどういうものかを物語っているのではないかと。
ラベル:漫画本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 『き』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月01日

「少女には向かない職業」桜庭一樹

CIMG2996.JPG
大西茜は13歳の中学2年生。
山口県下関の沖合にある島に住んでいます。
父親は5歳の時に亡くなり、現在は義父と母親との3人暮らし。
いつも不機嫌な母親とはしっくりいっていません。
義父は仕事もせず毎日酔っぱらっているアル中です。
留守中に小遣いを盗まれたり大事にしていたゲームのデータを壊されたり、暴力をふるわれたり。
夏休みに入り、地味なクラスメートの宮乃下静香と親しくなった茜は、静香の立てた計画でそんなろくでもない義父を殺すことに・・・・。
読む前はちょっとオタクなラノベかなと。
ま、そういう雰囲気もあるのですが、いや、でもじゅうぶんに読まされましたね。
2人組の少女が殺人を計画し実行するという話なわけですが、女子中学生の家庭や友達に対しての脆くて不安な気持ちもしっかりと描かれています。
まだ自分ひとりでは生きていけない少女の大人に対する怒りや恐怖や絶望感。
ひりひりするような痛みを感じます。
そして秘めた残虐性。
「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」にもそのようなものがありましたね。
こういう話を淡々と書くのがこの作者のすごいところでしょうか。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 『さ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする