2017年03月05日

「三屋清左衛門残日録」藤沢周平

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用人の職をしりぞいて隠居し、惣領又四郎に家督を相続した三屋清左衛門。
本来なら役料を取り上げられ今の屋敷も出なければならないのですが、藩主の好意で出るにおよばずとなり、隠居部屋までも普請してもらいました。
そんな中で悠々自適の暮らしをしたいと思っていた清左衛門ですが、襲ってきたのは世間から隔絶されてしまったような自閉的な感情でした。
そのような気分を振り払うため、経書を読み直し、昔の道場で型を稽古し、釣りにも出かけ、いろいろやってみようと思っていたところ、友人で町奉行の佐伯が訪れます。
佐伯はいろんな話を持ち込んで清左衛門の協力を仰ぎます。
また、藩のためにいろいろと動くこともあり、隠居ながらもなんだかんだと清左衛門は“働く”ことになります・・・・。
連作短編集。
タイトルに残日録とありますが、日記形式ではありません。
まず最初に仕事を引退した男の空疎感、寂寥感が示されるわけですが、これはまあ現代のサラリーマン(に限らずですが)にも当てはまるわけですね。
よく定年退職した人が心にぽっかり穴が開いてしまい、毎日なにをして過ごせばいいのかわからないなどという話を聞きます。
私など働くのが大嫌いな人間ですから、三年寝太郎どころか十年寝太郎でも平気ですけどね。(笑)
毎日のやりがいを失う虚しさ、世間から存在を忘れられてしまうという疎外感を恐れる人は多いようで。
この作品の主人公は隠居しながらもなんだかんだと大きな仕事をこなしたりしています。
そのあたり定年後やりがいを失う人たちの理想といえるかもしれません。
引退しても自分が必要とされているという。
話自体はさほど派手ではありません。
ですがじわりと染み入る味わいがあります。
このあたりの読み心地はやはり藤沢周平ですかね。
シリーズでもう何冊か読みたいと思いましたが、残念ながらこれ一冊のようで。
ま、腹八分目で箸を置くほうがいいのかもしれません。(笑)
ラベル:時代小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ふ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする