2017年04月06日

「漂砂のうたう」木内昇

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御一新から十年。
もともとは武士だった定九郎ですが、現在は根津遊郭の美仙楼という店で客引きをしています。
龍造という妓夫太郎に使われ、遣手のばあさんにつつかれるような毎日。
出世の見込みもありません。
自分より格下の仲どんと呼ばれる雑用係の嘉吉にも追い越されそうです。
やたらと定九郎につきまとう噺家の弟子であるポン太という謎の男や、美仙楼で一番人気の花魁小野菊などさまざまな人物と関わりながら、先行きの見えない不安と虚ろな日々を過ごしています・・・・。
江戸から明治に時代が変わり混沌としている時期、武士という身分を失った定九郎が翻弄される様が描かれています。
周りの人物たちの配置がいいですね。
ひたすら美仙楼を守り続ける龍造、ずる賢く油断のならない嘉吉、得体のしれない神出鬼没のポン太、凛として気高く自分を持ち続ける小野菊。
それぞれが目まぐるしく変化していく時代の中を自分なりに精一杯生きています。
どうにも生き方の定まらない定九郎と対照的に、ひたすら一点を見続けるような生き様の小野菊がやはり魅力でしょう。
武士から遊郭の客引きへ堕ちた定九郎、苦界に身を沈めた小野菊。
どちらも身分が堕ちた立場ではありますが、しかし二人が日々見つめているものは明らかに違います。
時代の波に飲まれながらも泳ぎ続ける、いろんな人たちの人間模様が描かれたいい小説でした。
ラベル:時代小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 『き』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする