2017年07月21日

「伝説の総料理長 サリー・ワイル物語」神山典士

CIMG3089.JPG

時代は1920年代。
日本に本格的なフランス料理を伝えたシェフがいました。
横浜のホテルニューグランドの初代料理長であり、弟子としてあのホテルオークラの小野正吉ら日本を代表する多数の料理人を育てあげた人物です。
その伝説的なシェフの名前は、サリー・ワイル・・・・。
日本のフランス料理の歴史を遡りますと、本格的なそれを初めて紹介したのはサリー・ワイルに行きつくようです。
昭和2年のこと。
料理が美味しいのはもちろんのことですが、それまでお仕着せのコースで食べるものと思われていた常識を覆し一品料理でも注文できるようにした「グリルルーム」をオープンしたり、どんな料理にも応じ、シェフ自らダイニングに顔を出し挨拶してまわり、ピアノを入れフィリピンバンドに演奏もさせたとのこと。
つまり堅苦しいマナーでガチガチだったレストランを、もっと気軽に楽しめるようにエンターテイメントの場としたわけですね。
そのような貢献もしつつ、ワイルの本格的な料理を学ぶためいろんな人物が集まり、その後の日本のフランス料理を支えていく人たちも育てていったわけです。
ただその料理人人生は決して順調満帆だったわけではありません。
むしろ晩年は日本に多大な功績を残した割にはやや寂しいものだったといえるかもしれません。
1973年に勲五等瑞宝章を受けていますがこのときすでにワイルはスイスで病床にあり、皇居での授与は叶いませんでした。
ですがワイルの残した功績は今でも脈々と受け継がれています。
そんなサリー・ワイルですが、ほとんど今までの料理史で取り上げられたことはありませんでした。
私もフランス料理関係のいろんな本を読んできましたけど(といってもたかが知れてますが)、これ以前に出された本でサリー・ワイルの名前を目にしたことはなかったように思います。
本書でもそのことについて触れられていますね。
資料もほとんど残っておらず、当時を知る人もこれまたほとんど残っていません。
そんな中で根気よく取材を重ね、よくここまでのことを書いたものだと思います。
まさに渾身のノンフィクションです。
そして唯一のサリー・ワイル資料本であり、今まで知られていなかった日本フランス料理の歴史を記す貴重な一冊ではないでしょうか。
ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 『こ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月19日

「走ル」羽田圭介

CIMG3090.JPG

本田は陸上部に所属する高校2年生。
ある日、自宅の物置に放置されていたロードレーサーを引っ張り出し、分解されていたそれを手入れし組み立て、いつもは電車通学している学校に乗っていきます。
陸上部の朝練で皆が皇居の周りを走っている中、もう3年生が抜けていないのをいいことに一人自転車で参加。
休憩時に皆のジュースを買いに行くため練習を抜けたのですが、なんとなくそのまま授業をさぼって国道4号線を北上。
1時間目だけさぼるつもりが宇都宮市を目指して走り始めます。
しかしそれだけでは済まず、福島、山形、秋田、青森と、野宿し、友人や彼女にメールを送りながらどんどん北上を続け・・・・。
自転車小説といいましょうか、青春冒険小説といいましょうか。
いやあ、ただひたすら自転車で走るというそれだけで一冊の小説になるんですね。
ロードレース用の自転車を扱った小説というと例えば「サクリファイス」シリーズのように当然ロードレースというジャンルを思い浮かべますが、これはひたすら国道を走り続けるんですね。
ライバルと競争するわけでもない。
自分との闘いなどという大げさなものでもない。
旅をしながらメールでのやりとりはありますが、途中で誰かと知り合ったりするわけでもなく登場人物はほとんどいない。
ひたすら走るという行為にストイックさは感じますが、求道的ではありません。
走るのを終えて主人公が何かを得たという示唆もありません。
まさに「走ル」小説です。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 『は』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月17日

「泣いたらアカンで通天閣」坂井希久子

CIMG3091.JPG

大阪は新世界のはずれにあるラーメン屋『味よし』。
親父のゲンコが作るラーメンは不味く、いつも閑古鳥が鳴いています。
やる気のないゲンコに活を入れながらどうにか店を支えている一人娘のセンコ。
そんな日常の中、『味よし』の向かいにある質屋『かめや』の息子カメヤが東京から帰ってきます。
カメヤはセンコの幼なじみ。
出張で帰ってきたという割にはどうも様子がおかしいのですが・・・・。
ベタベタな話ですねぇ。(笑)
新世界といういかにも大阪を象徴する街を舞台にし、これ見よがしの大阪弁とキャラクター。
ちょっと鼻に付くものの、ここまで徹底するとこれはこれでしっかりとした世界であり作品です。
笑いあり、涙あり、人情あり。
吉本新喜劇の小説版といったところでしょうか。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 02:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 『さ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月15日

「天才 創造のパトグラフィー」福島章

CIMG3092.JPG

天才と呼ばれる人物は歴史上いろいろいました。
モーツァルト、ダ・ヴィンチ、アインシュタイン・・・・。
それら天才の生まれた環境、過ごしてきた人生とはいったいどのようなものだったのか。
精神医学の立場から歴史に名を残す天才たちを考察します・・・・。
私は自分が凡人のせいか、天才と呼ばれる人たちには興味があります。
憧れといっていいかもしれません。
それらの人たちの活躍には大いなる敬意を持ちます。
さて、天才たちを精神分析で当てはめますと、やはりそこには『狂気』とか『分裂気質』といった症状が見受けられるようです。
正気と狂気のあいだ、こういうあたりから創造のインスピレーションが沸いてくるのでしょうか。
もちろんそんな簡単な理屈ではないでしょうけども。
歴史上の天才には早熟な人もいますし晩成な人もいます。
どちらかというと早熟な人が多い気がしますけどね。
天才というのはやはり先天的なものなのか、家庭環境などに影響される後天的な要素もあるのか。
興味が尽きません。
むやみやたらと天才という言葉を使いがちですが、本当の天才というのはそうそう存在するものではありません。
もし家庭やその他の生活環境が影響するのだとしたら、これからの時代、どんどん天才の出現が減っていくのではないかと思っているのですが・・・・。
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ふ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月13日

「たった一人の熱狂」見城徹

CIMG3093.JPG

幻冬舎社長の見城徹。
敏腕編集者として知られた人です。
とにかくエネルギッシュといいますか、バイタリティがあるといいますか。
仕事に対して全力でぶつかっていくというイメージがありますね。
その結果数多くの話題作やベストセラーを出しておられます。
それほど仕事に“熱狂”するモチベーションの源はなんなのか。
仕事や人生についての考え方、人間関係、日頃の言動・・・・。
SNSで発言した55の言葉について新たに構成し書き下ろした一冊です。
それにしてもこのテンション、凄まじいですね。
でないとここまでの存在にはなれないんでしょうけど。
読んでいてまさになるほどとは思うのですが、なかなかこのレベルで実行できる人は少ないかと思います。
ビジネス書であり自己啓発書であり、自伝であり・・・・。
読み応えありました。
ラベル:エッセイ
posted by たろちゃん at 03:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 『け』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする