2017年08月04日

「聖痕」筒井康隆

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葉月貴夫は誰もがうっとりとなってしまうほどの美男子。
しかしその美貌ゆえ5歳のときに暴漢に襲われ、性器を切断されてしまいます。
家族の協力を得ながら周りにそれを隠し続ける生活を送る貴夫。
やがて成長しても性欲のない貴夫が興味を持ったのが料理の世界。
学生時代から料理を勉強し美食を追い求め、やがて自分のレストランを持つことになります。
貴夫の美貌はもちろんスタッフにも美女が集まり、料理も申し分なく店は繁盛します。
しかし通常の営業を続けつつも、だんだんと男と女が会員制の特別室や2階の従業員宿泊室で濃密な時間を過ごすような店になっていきます・・・・。
時代は1970年前後あたりから東日本大震災まで。
オイルショックやオウム真理教事件、リーマンショックなど実際の出来事も話の中に出てきます。
それらを時代背景としながら主人公の半生を描いているわけですが、幼いころに性器を失くしそのために性欲も失ってしまったことにより主人公の貴夫がまるで聖人のようになっていきます。
レストランが出会い茶屋のような存在になっていくことも貴夫の公認なわけで、それは貴夫にとって未知な世界への好奇心なのか達観した大きな心の故なのか。
料理という味覚、男と女による愛欲、どちらも悦楽な世界ではありますが、主人公のキャラクターもありそれらの描写は淡々としています。
貴夫というフィルターを通すとなんだかすべてが浄化されるような。
最後にホルマリン漬けされた自身のペニスを貴夫は「ぼくの贖罪羊(スケープゴート)」だと言います。
それは何に対してのスケープゴートだったのでしょう。
ラベル:小説 グルメ本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『つ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする