2017年08月26日

「花腐し」松浦寿輝

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栩谷はデザイン事務所を経営していましたが倒産寸前です。
あちこちのノンバンクで借金していましたが、その中の社長の小坂という男からある依頼を受けます。
自分の持っている古いアパートを取り壊したいのだが、一人だけ居座っている住人がいる、そいつをなんとかしてもらえないか。
なんとかしてくれたら借金のことは多少考えてやろうじゃないか。
もうどうにもならないと開き直っている栩谷は、時間潰し程度にその話を引き受けます。
訪ねて行った先には伊関という男がおり、パソコンの機材が山のように積み上げられた部屋ではマジック・マッシュルームを栽培しています。
そんななんともつかみどころのない伊関を相手に栩谷は・・・・。
「花腐し」というのは万葉集の和歌にある言葉で、卯月ごろに卯の花を腐らせるように降り続く長雨のことをいうのだとか。
なるほど、そのような言葉から感じさせる雰囲気がこの作品全体に漂っていますね。
借金を背負って自己破産しかない栩谷。
今にも崩れそうなアパートに住み続ける伊関。
どちらも人生に対して投げやりでどこか達観したようでもありますが、この気怠さは実に湿気があって陰気です。
昔の女を思い出すあたり、よけいにじっとりと気が滅入る気がしますね。
ですが明るく人並みの生活だけが人生じゃない。
いろいろな過去を抱えつつ、陰で生きていくのもこれまた人生でありましょう。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『ま』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする