2017年10月31日

10月の一冊

今週は15冊の読書でした。
いつもに比べると小説を多く読むことができました。

・「ロスジェネの逆襲」池井戸潤
・「手芸女」野坂律子
・「現代日本の小説」尾崎真理子
・「わたしたちに許された特別な時間の終わり」岡田利規
・「本棚探偵の生還」喜国雅彦
・「思い出のとき修理します4 永久時計を胸に」谷瑞恵
・「ほっこりおうちごはん 「どうぞ飯あがれ」」柴門ふみ
・「草笛の音次郎」山本一力
・「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」ジェーン・スー
・「ミュージック・ブレス・ユー!!」津村記久子
・「食ショック」読売新聞食ショック取材班 著
・「ラストレシピ 麒麟の舌の記憶」田中径一
・「草の上の朝食」保坂和志
・「アメリカの食卓」本間千枝子
・「愛情の系譜」円地文子

「ロスジェネの逆襲」、いまさらの感はありますが半沢直樹シリーズです。
でもやっぱり面白くて引き込まれました。
「手芸女」、手芸を扱っているということでどんなものかと読んでみました。
ラノベ的ではありますが意外とよかったです。
「現代日本の小説」、村上春樹あたりからの作家を取り上げておられます。
後何十年かするとそれらの作家はどういう位置付けになるのかなと、ふと思いました。
「わたしたちに許された特別な時間の終わり」、外国で戦争というとてつもなく大変なことが行われている中、日本には平和な時間が流れています。
どちらも現実なんですよね。
「本棚探偵の生還」、シリーズ第3弾。
いつもながら古本に対しての執念とこだわりが面白い。
「思い出のとき修理します4 永久時計を胸に」、シリーズ最終巻です。
ま、いままででいちばんマシでしたか。
「ほっこりおうちごはん 「どうぞ飯あがれ」」、人気マンガ家の食エッセイ。
いまいち好きになれませんが。
「草笛の音次郎」、渡世人の股旅ものです。
山本一力らしく歯切れのいい文章で楽しめました。
「貴様いつまで女子でいるつもりだ問題」、ほんとエエ歳して女子などというのはやめてもらいたい。
って大きなお世話でしょうけど。
「ミュージック・ブレス・ユー!!」、音楽が欠かせない女子高生が主人公。
音楽の祝福がありますように、といったところですか。
「食ショック」、日本の食事情の情けない実態が書かれています。
戦中戦後の食べ物のない時代はなんだったんでしょうね。
「ラストレシピ 麒麟の舌の記憶」、『大日本帝国食菜全席』というメニューのレシピを巡ったミステリー。
何重にも謎が仕掛けられ、実に面白く読めました。
「草の上の朝食」、毎日をのらりくらりと過ごす若者(でもありませんが)たちの話。
ほんとただの日常な小説です。
「アメリカの食卓」、アメリカで暮らした著者の食エッセイ。
古き良きアメリカという雰囲気があります。
「愛情の系譜」、恋愛で男に対して思い詰めてしまう女の性。
そんな母親の血を受け継いでしまった娘の物語。

今月の一冊ですが、やはり「ロスジェネの逆襲」と「ラストレシピ 麒麟の舌の記憶」が他より頭一つ抜きん出てましたかね。
「ロスジェネの逆襲」は予想通りというか期待通りというか。
「ラストレシピ 麒麟の舌の記憶」が思っていたよりよかった。
さてどちらにするかですが、池井戸潤氏の作品はずっと今月の一冊に選んできましたので、今回は「ラストレシピ 麒麟の舌の記憶」でいきましょうか。
ということでこれに決定。

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2017年10月29日

「愛情の系譜」円地文子

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藍子はアメリカで社会福祉の勉強をし、帰国して初めて務めた少年鑑別所の仕事から離れ、現在は国際社会福祉協会の渉外課に席を置いています。
暮らしは母と妹の女世帯です。
立花という恋人がいるのですが、結婚を考えている藍子に対していまいち態度が煮え切りません。
仕事では鑑別所を出て工場で働いている良晴という少年の面倒を見たりしています。
ある日、アメリカで同じ職場にいたミス・リーが日本に来ることになり、藍子は北海道の雄阿寒岳を案内することになります。
そこで母からは死んだと聞かされていた父親と偶然出会います。
母と父が分かれる際、母は刃物を手にして父を殺そうとした事実を知るのですが・・・・。
藍子は知的で冷静なタイプの女性。
そんな藍子にも父を殺そうとした母の激しい血が流れているのでしょうか。
恋人の立花は藍子と付き合いつつも別の女性と結婚話を進めています。
分別のある振る舞いをする藍子ですが、さすがにたまりかね、母と同じような行動を起こしてしまうのです。
男女の愛の前では理知的な女性もつい我を忘れてしまうのか。
また面倒を見ていた良晴もせっかく更生したものの、大きな罪を犯してしまいます。
そのような人間の弱さ、脆さ、業のようなものがなんともやるせないですね。
しかし藍子も良晴もそれらの険しい道を乗り越え、今後の人生を歩んでいくことが示唆されるようなラストです。
ラベル:小説
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2017年10月27日

「アメリカの食卓」本間千枝子

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タイトルから想像するとアメリカの家庭料理を紹介した軽いエッセイかなと。
読んでみると違いましたね。
もっと広くアメリカの食文化を紹介した内容です。
といっても学術的な記述ではなく、あくまで個人的な経験を書いたエッセイですが。
アメリカというと料理に関してはどうしても低く見がちです。
代表する料理にハンバーガーなんてあったりしますが、これなんかまさにファストフードの最たるものといったイメージがあります。
実際アメリカ人ってこれが好きなんですよね。
ですがアメリカ人が愛するハンバーガーというのは、日本人が持つイメージとはちょっと違うようで。
『芝生の庭の一隅にしつらえられた煉瓦作りの炉には炭火が熾り、何キログラムもあるような挽き肉の塊りは見るまに幾つものハンバーガーに丸められ、片はしから焼けた鉄網の上にのせられる。肉からしたたる脂が火の上に落ちて、肉の燔ける時独特の、あのおいしい匂いを漂わせながら煙があがる・・・・』
この後も描写は続きます。
いろんなトッピングがあり飲み物があり、子供たちは興奮して走り回り、皆大口を開けてハンバーガーにかぶりつく。
ファストフードで購入するハンバーガーとは大違いではないですか。
もちろんすべてのアメリカ人がこのようなことをしているわけではなく、もしかしたら古き良き時代のアメリカの風景なのかもしれません。
『このような状況の下で食べるハンバーガーは、エレガントな料理の一皿をも凌駕するように思うのだが・・・・』と著者は書きます。
まさしくですね。
このシチュエーションはやはり日本で真似ても“別モノ”になってしまいそうです。
ハンバーガーは一例ですが、アメリカにはアメリカのシチュエーションに合った料理があり、そんな中で食べるのがまた美味しいんでしょうね。
ラベル:グルメ本
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2017年10月25日

「草の上の朝食」保坂和志

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「プレーンソング」の続編です。
といいましても、「プレーンソング」自体なにがどうという話があるわけでなく、毎日をだらだらと過ごしているだけの内容なんですよね。
なのでこちらもそのまんまです。
主人公の部屋に居候しているアキラ、島田、よう子ちゃん。
今回は主人公に工藤さんという彼女(?)ができまして、仲間に加わります・・・・。
ほんと生活感がないんですよね。
いや、違う。
生活感はじゅうぶんにある。
それを支える基盤がまったくないんです。
主人公はどうやらサラリーマンのようですが、なんの仕事をしているのかいっさいわからない。
アキラ、島田、よう子ちゃんもいったいなにやってんだか。
毎日ネコに餌をやったり楽器を演奏したり。
経済的に成り立つのかなんて疑問が湧くのですが、そのようなことにはまったく触れられていない。
これはあくまで私の個人的な思い入れといいますか感想なのですが、過ぎ去った青春の日々を思い出すのです。
青春というにはこの作品の登場人物は歳を取っていますけども。
ただ自分の過去を懐かしく振り返っているような、のどかでノスタルジーな雰囲気があるんですよね。
当時は当然生活の苦労があったわけですが(主に経済的なことで)、今となればそんなことよりも仲間との馬鹿馬鹿しくも楽しい毎日が思い出されるわけです。
この作品はそんな苦労を沈殿させて上澄みをすくったような話、という気がするんですね。
苦労のドロドロは書かず、上の澄んだ部分の話を書く。
なのであっさりとしていてコクがない。
コクはありませんが、出汁はじんわりと効いています。
さりげなく味わいを感じさせます。
それがこの作品の、というかこの作家の持ち味なのかなと思うのですが、どうでしょう。
ラベル:小説
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2017年10月23日

「ラストレシピ 麒麟の舌の記憶」田中径一

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佐々木充は『最後の料理請負人』。
人生の最後に食べたい思い出の料理を再現するのが生業です。
そんな佐々木にある中国人が仕事を依頼してきます。
200万円という報酬に釣られ北京にまで出かけた佐々木。
依頼主は楊晴明という99歳の老人です。
依頼の内容は第二次大戦中に満州で作られた『大日本帝国食菜全席』というレシピを日本で探してほしいとのこと。
しかしそれはただのレシピではなく、204品からなる中国の『満漢全席』をも上回る壮大なレシピでした。
どこにあるかわからないそんなものを探し出して、ましてや再現するとなると200万円では割に合いません。
断ろうとする佐々木に楊は5000万円の金額を提示します。
借金を抱える佐々木は心が動き、仕事を受けることにしたのですが・・・・。
なかなかスケールのある話ですね。
佐々木目線の現在(2014年)の日本と、レシピを作った山形直太朗の満州時代(1932年~1941年)が交互に書かれ、いろんな事実や謎が浮上してきます。
『大日本帝国食菜全席』は天皇の満州行幸のため作られたレシピであること。
春・夏・秋・冬と4冊からなるこのレシピをめぐって何度も不可解な事件が起きているということ。
そして佐々木の日本での行動もすべて楊に監視されているようです。
なぜ楊はそこまでして執拗に『大日本帝国食菜全席』にこだわるのか。
何重にも謎がほどこされ、最後の最後までパズルのピースが埋まりません。
中だるみすることなく読み応え十分です。
そして料理を扱った小説というとどうしてもウンチクを語りがちになりますが、いっさいそのようなことがないのも好感が持てます。
料理法や素材の組み合わせについての説明くさいセリフ、味についての装飾過多で大げさな表現など、読んでいてうんざりすることがありますもんね。
これはそのような上辺で料理を扱ったような小説ではなく、戦中の満州を舞台に料理人の人生をしっかりと描いたスケール感のあるミステリーです。
巻末にはなんと『大日本帝国食菜全席』の204品もの料理リストが掲載されており、圧巻です。
作者の創作とのことですが、いや、お見事。
ラベル:小説 グルメ本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする