2017年11月30日

11月の一冊

今月は14冊読みました。

・「リケイ文芸同盟」向井湘吾
・「夜を乗り越える」又吉直樹
・「寂花の雫」花房観音
・「小説家の作り方」野崎まど
・「東大オタク学講座」岡田斗司夫
・「ばかもの」絲山秋子
・「江戸川乱歩傑作選」江戸川乱歩
・「くさいはうまい」小泉武夫
・「ハンドモデルの恋人」綾瀬麻結
・「おでんの汁にウツを沈めて 44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー」和田靜香
・「なんとなく、クリスタル」田中康夫
・「ナポリタン」上野玲
・「顰蹙文学カフェ」高橋源一郎 山田詠美
・「紙の月」角田光代

「リケイ文芸同盟」、理系の人間が文系である小説の編集者になるという設定。
でもそれが生かしきれなかったように思います。
「夜を乗り越える」、芥川賞を受賞して話題になった又吉直樹氏のエッセイ&文学論。
はあそうですか、という以上の感想はなく。
「寂花の雫」、京都を舞台にした男と女の出会いと別れ。
たいした内容ではありませんが個人的には楽しめました。
「小説家の作り方」、読んでなるほどと思いました。
ライトノベルというジャンルだからこその佳作でしょうか。
「東大オタク学講座」、いまや無視できない『オタク』という存在。
第一人者が各ジャンルについて解説しておられます。
「ばかもの」、堕ちていく男、そして女。
小説の終わりは再会であり始まりです。
「江戸川乱歩傑作選」、うーん、やっぱり乱歩。
時代を超えて読ませてくれますね。
「くさいはうまい」、『匂い』が敬遠される昨今。
なんの、匂いの強い食品ほどはまればくせになるのです。
「ハンドモデルの恋人」、素人以上プロ未満なエタニティ文庫です。
まあそれなりに楽しむべきでしょう。
「おでんの汁にウツを沈めて 44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー」、コンビニでのお仕事エッセイです。
裏話苦労話がいろいろと面白い。
「なんとなく、クリスタル」、30年前のベストセラー。
今読んで面白かったです。
「ナポリタン」、スパゲッティナポリタンについての考察です。
思い入れはわかります。
「顰蹙文学カフェ」、文学や作家はもっと顰蹙を買うべきだと。
そのような作品も作家もあまり見当たらなくなりましたねぇ。
「紙の月」、金に翻弄される人間の話。
いや、金は二次的なもので、戒むべきはきりのない欲望ですよね。

では今月の一冊をば。
う~ん、これといってなぁ。
読み応えということでは「紙の月」でしたね。
さすがの角田光代。
そして野崎まど「小説家の作り方」も思いのほかよかったです。
しかし今回は「なんとなく、クリスタル」田中康夫でいきましょうか。
今からすれば古くさく小っ恥ずかしい当時のトレンドのはずが、30年も経つとめぐりめぐって新鮮で面白かった。
うん、今月はこれでいきましょう。

CIMG3163.JPG
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 今月の一冊 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月28日

「紙の月」角田光代

CIMG3160.JPG

専業主婦で子供もいない梅澤梨花は41歳。
銀行でパートを始めます。
得意先をまわり、集配金を届けたり預かっていた通帳や書類を届けたりが主な仕事です。
顧客から呼び出されて定期や普通貯金のお金を預かったりもします。
真面目で客からの受けもよい梨花は、やがて契約社員となります。
ある日、顧客の孫である大学生の光太と出会うのですが、そこから梨花の人生の歯車が狂い始めます・・・・。
怖い小説ですね。
といってもホラーな怖さではなく。
お金の怖さです。
いや、お金自体は怖くもなんともない。
それを追い求める欲望が怖いのです。
光太に貢ぐため顧客のお金に手を付ける梨花。
最初はすぐに返せばいいといった考えでしたが、すぐに歯止めが効かなくなります。
平凡な専業主婦だったはずが、大学生の男を相手に大金持ちのマダムを演じてしまうのです。
ブランド物を買い漁り、高級ホテルのスイートルームに泊まり、車を買い与え、マンションまで借りてやり・・・・。
なんだかんだと横領し、やがてその金額は1億円。
やはり人間は身の程を知るというか足るを知らなければだめですね。
話のメインは梨花ですが、梨花の昔の友人たちの生活も描かれています。
中学・高校とクラスメートだった岡崎木綿子、昔梨花と付き合っていた山田和貴、料理教室で一緒だった中條亜紀。
やはり皆、なんだかんだとお金にまつわる苦労をしています。
木綿子はひたすら節約して家計をやりくりしています。
スーパーで買い物袋を持参して5円割引きをしてもらったり、使いすぎるといけないので財布には2千円しか入れなかったり。
しかしそんな倹しい生活をしているせいか、小遣いを与えられていない娘はスーパーで化粧品を万引きしてしまうのです。
和貴の家庭では裕福な家の出である妻が何不自由なく暮らしていた自分の子供時代と自分たちの子供の現状を比べ、子供たちになにもしてあげられないと現在の生活レベルを嘆きます。
やがて妻はいきなり羽振りよく子供にいろんなものを買い与え、お金の出所は自分の母親だと和貴に説明するのですが、実は消費者金融でした。
和貴の出した結論は離婚です。
亜紀は出版社の編集者。
浪費癖があり、そのためにこれも消費者金融に手を出して借金し、夫から離婚されてしまいます。
娘がいましたが夫が引き取り、現在は12歳。
ときどき会っているのですが、娘に言わせるとママというよりも友達感覚だそうです。
会うたびにブランド物で着飾りかっこよく素敵な友達感覚の母親を演じてきましたが、結局娘は亜紀のことを金づるとしか考えていませんでした。
皆お金に振り回されています。
まあ現実の問題としてやはりお金は必要ですが、人生を破滅させるほど追い求めてはいけませんね。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『か』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月26日

「顰蹙文学カフェ」高橋源一郎 山田詠美

CIMG3161.JPG

文学は死んだのか。
みんな本を読まなくなりましたし、だから本が売れない。
電車の中でも皆がうつむいていじっているのはスマホです。
文学はまだ存在しているのか。
その答えはこの本に出てくる作家たちです。
「わたしたちが文学だ!」
その発言や生き様で世間の顰蹙を買う文士たち。
昔はその言動で世間から顰蹙を買う作家が大勢いました。
今の作家は昔ほど強烈な個性を持たなくなったようです。
サラリーマン化したといいますか。
太宰みたいな人なんて今後出てこないでしょうしね。
この本に登場する文士は5人。
島田雅彦中原昌也車谷長吉古井由吉瀬戸内寂聴
一癖も二癖もある顔ぶれですね。(笑)
高橋源一郎、山田詠美との対談という形です。
文壇といいますか、ま、この業界に興味ある人には非常に楽しめる内容です。
顰蹙を買えたら作家は一人前だと。
そうですね、作品だけではなく存在そのものが文学というような、そんな作家にぜひ出てきていただきたいですね。(笑)
ラベル:書評・作家
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月24日

「ナポリタン」上野玲

CIMG3162.JPG

私が子供の頃はスパゲティといえばナポリタンでした。
太めの柔らかく茹でた麺、ケチャップまみれの真っ赤な見た目、甘酸っぱいベタな味。
具は薄切りのハムもしくはソーセージ、玉ねぎあたりが定番、あとは店によりピーマン、グリーンピースといったところですかね。
マッシュルームなんかはワンランク上の具材で、ほとんど見かけませんでした。
これこそがスパゲティだと思っていたので、麺にソースを絡めず上にかけたミートソースなんかを知ったときはとてもオシャレに思えました。
ある年齢以上の人には懐かしい料理のナポリタンですが、この本ではそんなナポリタンについて徹底検証しています。
ナポリタンはいつどこで誕生したのか、名前の由来は、日本各地でどのような違いがあるのか。
スパケディの本場イタリアにナポリタンはないというのは有名な話ですが、しかしストックホルムにあると聞いた著者はスウェーデンに飛びます。
中国は上海で正統なナポリタンを食べてみたり。
そしてナポリタンといえば欠かせないのがケチャップ。
ケチャップの歴史にも触れ、ニューヨークにあるハインツの工場を取材。
国内ではカゴメ愛知県小坂井工場。
コンビニのナポリタンもどのように作られているのかとミニストップの埼玉県八潮工場へ。
巻末にはコンビニナポリタンの食べ比べ、全国のナポリタン名店の紹介と至れり尽くせり。
堪能できます。
しかしナポリタンというのは店の主役にはなれませんね。
たいがい洋食屋や喫茶店の1メニューです。
私の周りにも今まで何軒かナポリタン専門店ができましたが、ほとんど長続きせず閉店しています。
ナポリタンに思い入れのある世代といってもさすがにそう頻繁に食べるわけでもないですし、若い世代にはさほど思い入れはないでしょうし。
でもそれでいいと思います。
わざわざ専門店を作って出すようなものではなく、あくまで洋食屋や喫茶店で他のメニューに交じって載っているのを発見し、「お、久しぶりに食べてみるか」というのがちょうどいいポジションかと。
でもそれさえ減ってきているようですが。
ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『う』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月22日

「なんとなく、クリスタル」田中康夫

CIMG3163.JPG

時代はバブル景気前の1980年。
大学生でモデルのアルバイトをしている由利を主人公に、当時の風俗を背景にして“今を生きる”若者たちを描いています。
発表当時にも読んだのですが、なんだかよくわかりませんでしたね。
あまり印象に残っていない。
そりゃまあそうでしょう。
舞台は東京でいわゆる流行の最先端を生きる若者たちの話ですから、当時の私にはまったく縁のない世界だったわけで。(笑)
それは今も変わらないのですが、こちらも年齢を重ねたぶん俯瞰的客観的に読むことができました。
いや、面白いじゃないですか、これ。
話の内容は空っぽです。
なんにもない。
主人公は女子大生でモデルで、先端のファッションに身を包み、流行のスポットで遊ぶ。
だからどうなのと。
しかしそれこそが作者の書きたかったことで、当時のリアルな若者の姿がここにあります。
皆が毎日小難しいことを考えて生活しているわけではありません。
豊かな時代、とりあえず毎日オシャレに楽しく過ごせればいいではないかと。
眉間にしわ寄せて人生を考えるような純文学に対してのアンチテーゼな小説ですよね。
刹那的に生きることへの虚しさなんてものは、はなっからありません的な。
で、ページ構成がこの小説の大きなポイント。
右ページに本文、左ページに注釈。
近代小説にはよくこの注釈が付いており、巻末にまとめて掲載してあったりします。
解説で高橋源一郎氏が「どう読めばいいのだろうか」と書いておられるように、該当する箇所ごとにその都度左ページに目を走らせるのか、右ページを読んでから左ページをまとめて読むのか。
あるいは本文を読み切ったあと最後に一気に注釈を読むべきなのか。
私は最初その都度注釈を読んでいたのですが、そうなると話がぶつぶつと途切れてしまうんですよね。
リズムに乗れない。
なので本文を読み切ってから改めて本文を眺めつつ注釈を読みました。
というか、これむしろ注釈こそがこの小説のメインじゃないでしょうか。
これを書きたいがために本文を書いたような。
なので本文は別に内容なんてなくていいんです。
博学でシニカルなこの注釈、デビュー作にしてすでに田中康夫の本領発揮といったところです。
続編として2014年に「33年後のなんとなく、クリスタル」が出版されています。
これもぜひ読んでみたいですね。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『た』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする