2017年12月10日

「飛田で生きる 遊郭経営10年、現在、スカウトマンの告白」杉坂圭介

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大阪にある飛田新地。
いわゆる遊郭ですね。
実際に界隈を歩いてみますと、「今の時代にこんな街があるのか」と。
夜は妖しげにライトアップされ、なんとも妖艶で風情のある雰囲気を醸しています。
この本の著者は、そんな飛田で10年間店を経営してきました。
そんな“中の立場”の人が内情について書いた本というのは珍しいと思います。
当時31歳だった著者は勤めていた会社をリストラされ、深夜のファミレスでアルバイトをしていました。
そんなとき学生時代の先輩に声を掛けられ、飛田で親方をやると儲かるぞと誘われたのです。
素人がいきなりそんな簡単に飛田で親方なんてできるものなのか。
そんなに簡単に儲かるものなのか。
迷った挙句、著者は店を始めることにします・・・・。
店を始めるにはどんな手続きが必要なのか。
どのようにして女の子を集めるのか。
女の子の取り分や親方の儲けは。
などなど、なかなか知ることのできない話を興味深く読むことができました。
そして当然のことながら経営の四苦八苦ですね。
現在は店の名義を知人に譲り、自身はスカウトマンをしておられるとのこと。
その理由はやはり「くたびれたから」だそうです。
ただでさえ女性を使うのは大変です。
しかも仕事の内容が内容だけに。
続編の「飛田の子」ではそんな女の子たちにスポットを当てておられるようです。
すでに購入済みですので、また楽しみに読ませていただきましょう。
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2017年12月08日

「味 天皇の料理番が語る昭和」秋山徳蔵

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天皇の料理番として半世紀以上を務めた料理人の食エッセイです。
16歳から西洋料理の世界に入り、20歳でパリへ。
明治42年のことです。
もちろん現在のように誰もが簡単に海外に行ける時代ではありません。
本場で修業した著者は、大正天皇の御大礼に伴い日本に呼び戻されます。
そして昭和47年に辞任するまで天皇の料理番を務めてこられました。
この本ではそんな料理人としての半生について、また宮中でのいろんなエピソードについて書かれています。
しかし普段の食事から宮中での公式行事の料理まで、40年以上もよく続けてこられたなと。
相当神経を使われたことだろうなと察します。
この本が最初に出版されたのは1955年。
最後に食卓の作法が載っているのですが、さすがにこれは時代を感じさせますね。
ちなみにこの著者の経歴は杉森久英によって「天皇の料理番」として小説化され、また何度もテレビドラマ化もされています。
最新は2015年でした。
サブタイトルにもあるように、昭和という時代の食事情を語った内容でもあります。
ラベル:グルメ本
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2017年12月06日

「無敵のラーメン論」大崎裕史

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ラーメンについて網羅した一冊です。
大きくは第一部と第二部に分かれており、第一部は「ラーメンとはなにか」。
ダシとタレ、麺、具、東京ラーメンの系列、それぞれ章を割いて全国各地のラーメン店を紹介しつつ解説しておられます。
第二部は「ラーメンの日本地図」。
5年間で回った北海道から九州まで、各地の地域による特色を紹介。
いまや国民食ともいえるラーメンですが、これほど地域や店による違いのある料理は他にないでしょう。
この本ではなぜラーメンは人気があるのかということについては分析しておられませんが、そんな多彩さも人気の要因でしょうね。
そして値段と入りやすさ。
本格的な日本料理やフランス料理となるとそうそう気軽に足を運べるものではありません。
金額も1回の訪問で万単位となりますし、やはり予約を入れてそれなりの恰好をしてということになります。
普段着でぶらりと訪れるというわけにはなかなかいきません。
その点ラーメン店なら通りすがりにぶらっと入れます。
金額も千円でじゅうぶんお釣りが来ますしね。
中には店をはしごする猛者もいます。
そのあたりの気軽さがやはり人気なのでしょうし、ラーメンについて語る人たちが他の料理に比べて圧倒的に多い理由でもあるでしょう。
いまや誰もがラーメン評論家です。
まあそれよりなにより、やはり美味しいというのが一番の理由でしょうけど。
無限のバラエティがあって安くて美味しい。
とにかく店によって違いがあって飽きずに楽しめる。
そんなラーメンという料理に魅せられた著者の客観的なラーメン論です。
なにが無敵なのかわかりませんが。(笑)
ラベル:グルメ本
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2017年12月04日

「抱擁」日野啓三

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東京の中心部に残っている古い住宅街。
そんな住宅街の谷底のように見える低い場所に、『私』は広い庭に樹木が覆い茂って小さな森のようになっている敷地を見つけます。
その中に建っているのはびっしりと蔦に覆われた古い洋館です。
なぜか私はその洋館に心を惹かれます。
偶然その場で出会った荒尾という男の紹介で私は洋館に案内されます。
住んでいるのは老主人、その息子の嫁である若夫人のたか子、老人の孫である霧子、お手伝いの小田さん。
無口で心を閉ざした少女の霧子に私は関心を持ちます。
それを察した老主人は私に霧子の感情教育のための家庭教師を依頼し、私は引き受けることにするのですが・・・・。
シチュエーションといい登場人物といい、どれも幻想的です。
まず都会の真ん中にある小さな森の(ような)中の洋館という舞台がいい。
そして館内には壺や仮面、甲冑など老主人が世界中から集めた様々な収集品。
登場人物は、生と死を悟ったかのような老人、遺産目当てに露骨な欲を見せる若夫人、そしてガラスのように繊細でなにかを透視しているかのような少女。
そんな中でお手伝いの小田さんはニュートラルといえるでしょうか。
重力を感じさせるような閉ざされた空間で私と少女は何を見、何を感じあったのか。
また生々しい現実はそこにどのように割り込んだのか。
耽美的な非現実感がなんとも心地よいようなシュールな気分にさせる作品でした。
ラベル:小説
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2017年12月02日

「安井かずみがいた時代」島崎今日子

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作詞家、安井かずみ。
といっても今の若い人はほとんど知らないでしょうね。
そもそも作詞家自体、そうそう名前が知られる存在じゃないですから。
ましてや現在は歌謡曲も廃れ、ミュージシャンが自分で作詞作曲して歌う時代です。
作詞家という職業も危うい。
1960年代にデビューした安井かずみは数々のヒット曲を連発し、時代の寵児となりました。
例えば郷ひろみの「よろしく哀愁」は彼女の作です。
その他、「わたしの城下町」、「危険な二人」、「赤い風船」、「不思議なピーチパイ」など、挙げていったらきりがないくらい。
そんな彼女の生涯を追ったノンフィクションです。
作詞で注目を浴びたばかりでなく、その生き様は当時の女性の憧れでもありました。
いまやもう廃れましたけど、一時期カリスマなんたらなんて表現が流行りましたよね。
現在の芸能人では安室奈美恵や浜崎あゆみなどが若い女性に大きな影響を与えたカリスマ的存在でしたが、当時はそれが安井かずみだったといえますか。
ファッションとかの見た目はもちろん、生き様でその存在感を示していたように思えます。
章によりいろんな著名人(26人)へのインタビューで安井かずみのエピソードや言動を紹介し、その人間性や魅力を浮き上がらせています。
独身時代、そして加藤和彦との結婚後。
なんともセレブなおしどり夫婦でした。
結婚後の安井の変化についても書かれています。
このあたり、経済的にはじゅうぶん自立した女性でありながら、決してフェミニズムを主張するわけではなく加藤に尽くす安井の姿が描かれています。
また加藤も安井に相当な神経を使って尽くしていたようです。
安井が亡くなってすぐの加藤の再婚にはいろんな意見がありますけども。
安井が逝去したのは1994年。
すでにピークは過ぎており、時代も作詞家ではないだろうという雰囲気。
でもご存命ならそのあとどのような仕事をされたのでしょう。
非常に興味あります。
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『し』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする