2017年12月04日

「抱擁」日野啓三

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東京の中心部に残っている古い住宅街。
そんな住宅街の谷底のように見える低い場所に、『私』は広い庭に樹木が覆い茂って小さな森のようになっている敷地を見つけます。
その中に建っているのはびっしりと蔦に覆われた古い洋館です。
なぜか私はその洋館に心を惹かれます。
偶然その場で出会った荒尾という男の紹介で私は洋館に案内されます。
住んでいるのは老主人、その息子の嫁である若夫人のたか子、老人の孫である霧子、お手伝いの小田さん。
無口で心を閉ざした少女の霧子に私は関心を持ちます。
それを察した老主人は私に霧子の感情教育のための家庭教師を依頼し、私は引き受けることにするのですが・・・・。
シチュエーションといい登場人物といい、どれも幻想的です。
まず都会の真ん中にある小さな森の(ような)中の洋館という舞台がいい。
そして館内には壺や仮面、甲冑など老主人が世界中から集めた様々な収集品。
登場人物は、生と死を悟ったかのような老人、遺産目当てに露骨な欲を見せる若夫人、そしてガラスのように繊細でなにかを透視しているかのような少女。
そんな中でお手伝いの小田さんはニュートラルといえるでしょうか。
重力を感じさせるような閉ざされた空間で私と少女は何を見、何を感じあったのか。
また生々しい現実はそこにどのように割り込んだのか。
耽美的な非現実感がなんとも心地よいようなシュールな気分にさせる作品でした。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『ひ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする