2018年02月18日

「姫百合たちの放課後」森奈津子

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タイトルからもわかりますように“百合”たちを描いたコメディ短編集です。
まあなんとも馬鹿馬鹿しい内容ではあります。
しかしそれは作者の狙い通り。
例えば「花と指」はいかに美しく独創的なオナニーをするかという競技で『自慰道』と名付けられ、柔道のようにいまやオリンピックの正式種目となっています。
馬鹿馬鹿しさはいいのですが、出てくる曲が山口百恵の『ひと夏の経験』とか『横須賀ストーリー』とか、なんでこうも古臭いのか。(笑)
私が面白く思ったのは「お面の告白」ですかね。
主人公は芸能人のゴーストライター。
編集者が美人女優にインタビューしたテープからエッセイを仕上げるのですが、テープにはなにも入っていませんでした。
いい加減な編集者は「適当にでっちあげておいて」なんて言います。
それならばと主人公は女優の17歳の女子高時代を書くことにします。
内容はもちろんレズビアン。
お姉さまと下級生の秘めやかな愛。
悪ノリが過ぎてほとんどポルノ小説です。
書かれた女優はたまったものではないですね・・・・。(笑)
全部で9編。
まあどれもプロ作家としてはどうなんだろうと思うレベルですが、面白ければ勝ちです。
「花と指」は団鬼六の「花と蝶」、「お面の告白」は三島由紀夫の「仮面の告白」、「2001年宇宙の足袋」はアーサー・C・クラークの「2001年宇宙の旅」
それぞれタイトルをパロディにしたお遊びもあります。
ラベル:小説
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2018年02月16日

「熊の敷石」堀江敏幸

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数年ぶりにパリを訪れた私。
しばらく音信不通になっていた友人のヤンと会うことにします。
ヤンの住む田舎を訪れ、ユダヤ人の歴史に触れ、私は目の見えない息子を持つ家主の女性と出会います・・・・。
主人公の『私』は作者を思わせ、私小説のような紀行文のような雰囲気をもつ作品です。
私にとってはなんとなく乾いた空気を感じさせる小説でした。
それはやはり小説としては淡々としているからですかね。
友人ヤンとの再会、家主のカトリーヌ、目の見えない2歳半の息子ダヴィッドとの出会い。
なにがあるのかというと特になにがあるわけでもありません。
それらが柔らかく引っ掛かりのない文章でつづられていきます。
もうちょっとぐっとくるものが欲しい気がしましたね。
それが何かと問われると答えられないのですが。
ラベル:小説
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2018年02月14日

「ぽろぽろドール」豊島ミホ

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すべて人形をモチーフにした短編集です。
小学校3年生の女の子がおばさまにもらった等身大の男の子の人形。
頬を打つと涙を流す仕掛けが施されています。
学校で嫌なことがあると帰ってきて頬を打つのです・・・・。(ぽろぽろドール)
田舎から街の高校に出てきた女子高生の主人公。
クラスの中心にいる女子に憧れるのですが、自分とは世界が違い近づけません。
ある日父親が酔っぱらってもらってきた景品の人形が彼女にそっくり。
主人公は憧れの彼女と同じ名前を付け、その人形をかわいがります・・・・。(手のひらの中のやわらかな星)
美しい顔を持っていた14歳の少年。
交通事故で顔を負傷し、手術して1か月後に包帯を取った顔を見た主人公はそのひどい状態に吐いてしまいます。
美しい恋人も自然と去っていき、ある日その恋人に似た人形を街で見つけ購入します・・・・。(僕が人形と眠るまで)
その他3編。
どれも人形は憧れであり、それを投影する自分自身であり、なにより感情移入できる存在だったりするんですよね。
それで心が癒される人もいるでしょう。
ただ人形というのはなんというか、ちょっと怖い存在です。
ペットと違って無機質な存在ですし、形は人間ですし。
それだけになんとも不気味です。
昔から人形には魂が宿るなんていいますし。
この短編集はそういう怖さについて書かれたものではありませんが、私は少しそういうものを感じました。
ラベル:小説
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2018年02月12日

「オール・アバウト・セックス」鹿島茂

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文藝春秋編集部から「エロス関係の本だけを取り上げる書評のページを担当してみないか」と提案され、「どうせなら書評を通しての日本のセックスのフィールド・ワークのようなものを試してみたいと思った」とのことで始まった連載。
それを1冊にまとめたのがこの本です。
ということでいろんなジャンルのエロに関する本を紹介し、書評しておられます。
連載にあたり、そんなおあつらえ向きの本が毎月みつかるのか。
いざ始めてみるとそんな心配は杞憂だったとのことで、予想をはるかに超えた点数が出版されており、1年の予定だった連載が3年を過ぎて42回になったとのこと。
いやあ、それだけいろんなエロに関する本が出版されているんですねぇ。
もちろんただのエロ本では取り上げる意義がありません。
その時代を反映したもの、学術的に掘り下げたもの、文学として感心させられるもの、などなど。
なかなか興味深く読めました。
紹介されている本を見かけたらぜひ購入してみようと思います。
(ブックオフの100円コーナー限定ですが 笑)
ラベル:書評・作家
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2018年02月10日

「贋世捨人」車谷長吉

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作者の半生的な私小説です。
昭和36年の春に高校受験を失敗したところから始まっています。
本命の高校に失敗し、最低ランクの高校へ。
その後は慶應義塾に入学、卒業後は広告代理店へ。
しかし金儲け主義の仕事に興味が持てず退職。
新左翼系の出版社に就職し、そこも辞め、職を転々とし、やがては料理屋の下足番になり贋世捨人として生きていこうとします・・・・。
事実を基にはしているでしょうが、やはりフィクションであり小説なんでしょうね。
主人公はいつものごとく生島嘉一。
作者の分身です。
コツコツと地味な話を重ねているのですが、なぜかこの作家が書くと面白いんですよね。
真剣さが逆に空回りしているような滑稽さも感じさせます。
これも作者のキャラといいますか文体といいますか、作家としての才能といいますか、そのようなものなんでしょうか。
巻末に車谷長吉自歴譜というのが載っています。
作者の手による自歴なわけですが、これがまたちゃんと作品になっていて面白いんですよね。
やはりこの作家には意識的か無意識か、にじみ出るユーモアがあります。
ラベル:小説
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