2018年03月10日

「爪と目」藤野可織

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母を亡くした3歳の“わたし”。
父は母が生きていたころから“あなた”と付き合っていました。
不倫です。
母が亡くなったあと父は“あなた”と再婚し、“わたし”と一緒に暮らすことになります・・・・。
裏表紙のあらすじを読みますとホラーということですが、私はちょっと違うと思いますね。
一般的にイメージするホラーじゃない。
どちらかというと心理サスペンスという気がしますが、まあラストはたしかにホラーなのかも。
しかし3歳児がこのような考えや行動をとるということにいくらなんでも無理があると思います。
解説ではそのような常識的な思い込みは捨てようとあるのですが。
それはともかくとしまして、父も新しく母となった“あなた”も“わたし”にまったくの無関心です。
なにも見ていない“あなた”に“わたし”はなにをしたのか。
復讐ともいえますし、あなたのお望みどおりにしてあげるという親切心(怖)ともいえます。
他2編収録。
どちらもややシュールで不穏な雰囲気の作品です。
ラベル:小説
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2018年03月08日

「空の剣 男谷精一郎の孤独」高橋三千綱

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男谷精一郎は十五歳。
地獄道場といわれる「兵原草蘆」に内弟子として住み込んでいます。
一年経てば残っている者は数名という厳しい実戦稽古で知られる道場で修業を積んで四年。
しかし閉鎖に伴い師の平山子龍から破門を言い渡されます。
張りを失った精一郎は武者修行という名目の下、二歳の時に家を出ていった顔も知らない母親が住むという秩父を目指して旅に出ます・・・・。
男谷精一郎というのは実在の人物だそうですが、剣豪としてはほとんど知名度がないですね。
しかし作者の高橋氏がいろんな剣豪に興味を持つ中で印象に残ったのが、中村一心斎と男谷精一郎だったそうです。
男谷精一郎について書かれた小説はほとんどなく、氏が筆を執ったこの作品が唯一の本格的な“男谷精一郎もの”となるのかもしれません。
内容は主人公が十五歳ということで青春小説ともなっています。
このあたりは氏が得意とするところでしょう。
芥川賞を受賞した「九月の空」も剣道少年の青春小説でした。
旅の途中でいろいろなことを経験し、人と出会い、少年が成長していく物語でもあります。
何人かの女性との出会いもあるのですが、そのあたりはさらりと流し、甘い内容となるのを避けておられるようです。
女性に対してのほのかで淡い想いが爽やかです。
作者は他にも「右京之介助太刀始末」シリーズなどの時代小説を書いておられますが、それらに比べるととぼけた感じも控えめです。
これもやはり男谷精一郎への思い入れ故ということでしょうか。
ラベル:時代小説
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2018年03月06日

「おいしい店とのつきあい方」サカキシンイチロウ

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飲食店には常連というのがいまして。
店の人と親しげに話してたりなんかして。
レストランなんかだとシェフが挨拶に出てきたりして。
同じコースを頼んだのに明らかにあちらのほうがいい料理が出てきたりして。
カウンターの飲み屋なんかでも「ちょっとこれ食べてみて」なんてサービスで小鉢が出てきたり。
「あれ頼むよ」なんて言葉だけで裏メニューが出てきたり。
けっこうそういうのに憧れる人は多いようです。
フレンチレストランではそれを『ソワニエ』と言うそうでして、それを目指そうなんて特集した料理雑誌もあったりしました。
私などアホらしと思うのですが、しかし無愛想にされるよりは愛想よくしてもらったほうが気持ちいいですし、同じお金を払うならいいものを食べたいというのは道理だとも思います。
この本では外食産業のコンサルタントをしているという著者が、店への予約の段階から、店での振る舞い、マナー、注文の仕方、などなど、ご自身の経験も例に挙げコース仕立てでアドバイスしておられます。
レストランに行く楽しみは予約の段階から始まっているのです、なんて最初に書かれると、「ああ、また始まった、マンネリのウンチクが」と思ったのですが、読み進めていくとけっこう細かくいろいろと書かれており、通り一遍のレストラン入門書ではないなという感想を持ちました。
100パーセントこの通りにすべきかというとそれはちょっとなと思う部分もありますが、まずまず参考になるんじゃないですかね。
読み物として面白かったです。
ラベル:グルメ本
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2018年03月04日

「美人論」井上章一

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美人とはなんぞや。
定義とは。
どのような女性を美人というのか。
女性の容姿について語るわけですから、当然あちこちから反発もあります。
特にフェミニストといわれる人たちから。
しかし男性にとっては誰が美人だのいい女だのという話題は昔からの定番で。
やはり昔から美人と不美人というのはやはりあったわけで、露骨に美人を持ち上げることもできずなんやかんや理由をつけて美人を排斥していたのですね。
美人は性格が悪いとか。
顔ではなく体が健康な女性こそが美人なんだとか。
なんとか不美人の人たちを救おうとしていたわけです。
識者たちも「私はそんな基準では女性を選ばない」とか。
そういう基準で女性を選ぶ男性は知性がないとか。
ちょっと苦しいですね。
でも現在は美人というのは有利なアイテムですし、女性自身もそれをわかって武器にしています。
明治時代から美人不美人はどのように扱われてきたのか。
その変遷がよくわかる一冊です。
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2018年03月02日

「染彩」芝木好子

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和服の絵柄を染彩するのが生業の葉子。
画家の良人は若い女に惹かれて出ていき、中学生の息子と仕事場と兼用の住居で二人暮らしです。
そんな葉子のもとに週に2日大学生の典夫が仕事を手伝いに来ています。
彼を助手に作った作品を職人として呉服店に、芸術家として展覧会に出品し、少しずつ精進していく葉子。
一緒に仕事をしているうちにひと回り以上歳下の典夫に心惹かれますが、世間体もあり自分のそんな気持ちに戸惑ってしまいます・・・・。
染彩にひたむきな女性の姿がいいですね。
でも商売気がなく生きることにはちょっと不器用で。
それは恋愛に対しても。
この作品では仕事場のある鷺宮、そして隅田川や銀座といった芝木作品には馴染みのある土地が舞台となっています。
時代は昭和半ばころでしょうか。
それらの設定と芸術がいつもながらに味わい深く趣のある世界を醸しています。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『し』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする