2018年04月15日

「手塚治虫の冒険 戦後マンガの神々」夏目房之介

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1989年に手塚治虫が亡くなり、その後「手塚治虫はどこにいる」を書き下ろした著者。
それがきっかけとなり葛飾区教育委員会から手塚治虫についての講義を依頼され、まとめたのがこの本とのこと。
内容はもちろん手塚作品についてなのですが、その時代時代の手塚作品の表現を比較検証するため、他の漫画家の作品も多数取り上げられています。
田河水泡、佐々木マキ、福井英一、白土三平、水木しげるつげ義春大友克洋・・・・。
手塚マンガの変遷とともに戦後のマンガの変遷も解き明かしているわけです。
手塚治虫という人はとにかく描き直しをする人でした。
単行本になるときに描き直す、版が新しくなると描き直す。
それほどつねに表現が古くならないよう意識しておられたんですね。
またあれほどの大御所であってもつねに他のマンガ家の作品を意識しておられ、劇画の登場は以降の作風に大きな影響を与えました。
ひたすら生涯新人のような気持ちを持っておられたようです。
さて本書ですが、普通マンガ評論というとハードソフトで言えばどちらかといえばソフト面を論評する傾向があると思います。
ストーリーであるとかテーマであるとか作者の思想であるとか。
しかしこの著者はハード面にこだわっておられます。
絵ですね。
線、コマ割り、構図、心理描写の表現など。
線なども晩年の微妙な震えまで見極めておられます。
やはり描く立場の視線ということでもあるんでしょうか。
そう考えるとただサラリと読み流すだけではなく、マンガというのは実に見るべき箇所が多いということに気づきます。
奥が深い。
その奥の深さをマンガに持ち込んだのがこの手塚治虫です。
むやみやたらと国民栄誉賞を乱発させている昨今ですが、なぜ手塚治虫ほどの人物に与えなかったのか。
不思議でなりません。
ラベル:漫画本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『な』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする