2018年06月30日

6月の一冊

今月は14冊読みました。

・「トンデモ本の逆襲」と学会[編]
・「なにを食べたらいいの?」安部司
・「パンク侍、斬られて候」町田康
・「何をいまさら」ナンシー関
・「やさしいため息」青山七恵
・「うなぎでワインが飲めますか? そば、てんぷら、チョコレートまでのワイン相性術」田崎真也
・「白樫の樹の下で」青山文平
・「昭和、あの日あの味」月刊『望星』編集部編
・「花散里」円地文子
・「迷える空港 あぽやん3」新野剛志
・「ジゴロ」中山可穂
・「脱・限界集落株式会社」黒野伸一
・「ボランティア・スピリット」永井するみ
・「河口へ」佐藤洋二郎

「トンデモ本の逆襲」、トンデモ本ってなかなか自分で買ってまでは読みたくない。
でもこの本を読めばじゅうぶん楽しめます。
「なにを食べたらいいの?」、添加物まみれの現代の食事情。
でも外食や出来合いの物を避けてストイックにいけば、そう難しいことではなかったりもします。
「パンク侍、斬られて候」、町田康が時代小説を書けばこう来るのかと。
やはり一筋縄ではいかない作家さんですね。
「何をいまさら」、いつもながらの素晴らしい消しゴム版画とするどいエッセイ。
といってもかなり昔のエッセイ集ですが。
「やさしいため息」、平凡な日々にふと現れた些細な非日常。
でもやっぱりそれも平凡な日常に埋もれます。
「うなぎでワインが飲めますか? そば、てんぷら、チョコレートまでのワイン相性術」、私はワイン好きでなんにでも合わせますよ。
うなぎや天ぷらなんて当たり前、たこ焼き、キムチ、冷奴、鍋、ニラサラダ、ゴーヤチャンプルー、漬物、えっと他にもいろいろ、どうですか田崎さん。(笑)
「白樫の樹の下で」、ちょっとミステリーな要素が入った時代小説でしょうか。
閉塞した時代に生きる矜持を持った若者たちの青春小説でもあります。
「昭和、あの日あの味」、今さら昭和なんて言っても鬱陶しがられるだけかもしれませんが。
でもノスタルジーですよね。
「花散里」、老齢といってもいい女性たちの恋愛遍歴。
いいじゃないですか、もっともっと女性も奔放に恋愛を。
「迷える空港 あぽやん3」、主人公が鬱になってしまって。
現代の社会問題を取り入れてるのでしょうが、そもそもの設定と無理があるように思いました。
「ジゴロ」、もちろん内容はすべてレズビアンの恋愛です。
いつも同じ感想を書いている気がしますが、中山可穂は熱く激しい。
「脱・限界集落株式会社」、シリーズ第2弾。
さすがにこれ以上はちょっと厳しいでしょう。(笑)
「ボランティア・スピリット」、アジアからの留学生や外国人労働者を扱った短編集。
それらの人に対しての日本人の偏見をシニカルに突いています。
「河口へ」、いわゆる肉体労働者を主人公とした短編集。
毎日汗を流して危険を伴った作業をしつつ、それでも日々の暮らしがあるわけです。

さてさて。
この中から一冊を選ぶわけですが。
そうですねぇ、図抜けてこれだというのはなかったです。
しかし心に熱く染みるものがあったということで、「ジゴロ」でしょうか。
今月の一冊はこれで。

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2018年06月28日

「河口へ」佐藤洋二郎

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短編集。
どの作品も肉体労働者を主人公としています。
そして現場には外国人労働者がいます。
『クロ』と呼ばれる肌の黒い外国人、『パキ』と呼ばれているのはパキスタン人。
そんな中で汗を流して働いている男の日々が描かれています。
今の若い人とひとくくりにはできませんが、そういう人たちとは対極の生活ですね。
おしゃれなスポットが出てくるわけでなし。
あ、東京ディスニーランドなんて出てきます。
しかしそれは現場から眺めることができる場所というだけだったりします。
いい女が出てきて恋愛物語が始まるわけでもありません。
出てくるのは飯場の飯炊き女です。
あるいは場末の飲み屋の女。
そんな女に手を出そうとしている男たち。
たぶんこの作品集を読んでもいまやピンとくる人は少ないんじゃないでしょうか。
ネクタイ締めてスーツ着て冷暖房の効いたオフィスで仕事している人たちとは別世界。
今の若い人たちが求めているのとは真逆の生活です。
ですがこういう世界や生活があるのは事実で、だからこそ世の中が成り立っているわけです。
当事者としてはごく当たり前の日常なんですけどね。
社会の下の層といえるかもしれません。
ですがそんな視線をしっかりと皮肉も込めずに淡々と描いているのがこの作品集。
浮かれていないしっかりと地に足の着いた視線があります。
ラベル:小説
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2018年06月26日

「ボランティア・スピリット」永井するみ

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K市にはある大手建設会社の本社があり、その傘下のさまざまな会社で外国人労働者が働いています。
そういった人たちのためにボランティアが始めた日本語教室が市民センターで開かれています。
講師はすべて日本人ですが、いろんな国籍や年齢の生徒たちが集まります。
そんな中で起こる些細な(?)事件・・・・。
連作短編集です。
外国人教師の下に日本人が通う英会話教室ではなく、外国人のための日本語教室というところがミソですね。
立場的に講師である日本人の上から目線的なニュアンスがあります。
生徒たちはアメリカ人やイギリス人フランス人とかではなく、中国人、韓国人、フィリピン人、イラン人といった国の人たち。
どうも彼らは外国人だからというだけで偏見を持たれているようです。
表題作の「ボランティア・スピリット」では李早雪という韓国人留学生が現金を盗んだ疑いを持たれます。
「冬枯れの木」ではナディームというパキスタン人が放火の疑いをかけられます。
「ジャスミンの花」でもやはりナディームがストーカーとして疑われます。
それぞれ疑わしいシチュエーションあってのことなのですが、結局は誤解であったことが判明します。
結局悪いのは日本人であり、はなっから彼らを疑ってしまうその心です。
かといって日本人のほうから親しく近付いたかと思えば打算があったり。
親切な外国人を陥れようとしたり。
なんだかなぁという感じですね。
日本人の外国人に対する偏見への皮肉が込められています。
ところで気になったことがひとつ。
「冬枯れの木」ではナディームが結婚していることになっているのに、その後の「ジャスミンの花」ではなぜか独身ということになっています。
はて。
ラベル:小説
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2018年06月24日

「脱・限界集落株式会社」黒野伸一

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前作では高齢化で過疎となった止村という田舎を救って再生させることに成功した多岐川優。
これはその続編で4年後の話です。
止村には巨大なショッピングモールができます。
目玉は『渋谷マライア』という東京で人気のファッションビルです。
それがテナントとして入ることになりました。
その盛り上がりの影響で麓の街にも駅前の再開発計画が持ち上がります。
昔ながらの雰囲気が魅力ある駅前商店街が、金儲けしか考えていないような連中につぶされてしまう。
考え方の違いから家を飛び出した多岐川優の妻、美穂は商店街のために戦います。
そして優もそれに協力し・・・・。
昔ながらの商店街や風景を残すのか、開発して新しい町を目指していくのか。
現実でもよくある問題でしょう。
その結果はほとんど後者じゃないでしょうか。
昔ながらの人情ある商店街だののどかな風景だのいっても、大部分の人は都会の便利な生活からはいまや抜けられないはずです。
商店街の個人店での買い物よりも、コミュニケーションしなくて済むスーパーやコンビニでの買い物のほうがいいと若い人たちは思っています。
そんな人たちは今後もどんどん増えていく。
なのでこういうのって都合のいい理想なんですよね。
自分は都会的な生活を維持しつつ、でも昔ながらの風情は残しておいてほしいっていう。
だからこそこのような小説が理想のシチュエーションとして読まれるのでしょう。
現代社会において、カタルシスを満たす内容ですね。
でも実際にこのような生活を維持しようとしておられる人たちもいらっしゃいます。
少数派だと思いますが、私は支持したい。
ラベル:小説
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2018年06月22日

「ジゴロ」中山可穂

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カイは新宿2丁目で歌っているストリートミュージシャン。
そんな彼女に惹かれて何人もの女性が近づいてきます。
カイはまるでジゴロのように人妻や高校生と逢瀬を重ねます・・・・。
連作短編集です。
恋人のいるカイですが、相手は仕事が忙しく満たされていません。
その寂しさを埋めようとしているようでもありますし、自由に恋愛を楽しんでいるともいえます。
カイを中心とした連作ではありますが、「ダブツ」は女子高生、「恋路すすむ」という作品はラテン音楽の元歌手で現在は飲み屋のママをしている女性が主人公。
作者はあとがきでその2作が気に入っていると書いておられますが、私は中でも「恋路すすむ」が熱くて壮絶で印象的した。
この激しさはさすがの中山可穂です。
やっぱりこの作家さんはいいなぁ。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 03:31| Comment(0) | 『な』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする