2018年08月11日

「空に唄う」白岩玄

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23歳の海生の家はお寺ということで、海生も新米のお坊さんです。
住職である祖父に付いて初めてお通夜を務めることになるのですが、遺影を見ると故人は若い女性のようです。
その女性が棺の上に腰をかけています。
びっくりする海生。
どうやら海生以外の人には見えないらしい。
その後も度々海生の前に現れる女性には行く場所がないようです。
放っておくわけにはいかず、海生は彼女(碕沢さん)に寺に住むよう提案します。
日を追うごとにだんだんと彼女に惹かれていく海生・・・・。
作者は「野ブタ。をプロデュース」でデビュー。
芥川賞候補になりテレビドラマ化もされ、話題になりました。
しかしデビュー作が大きすぎたせいか、正直その後はあまりぱっとしない印象です。
さてデビュー2作目はどんなものかと読んでみたのですが。
いいじゃないですか。
ファンタジーということになるんですかね。
幽霊と同居という非現実的な設定ではありますが、それを変におちゃらけた方向に持っていっていないのがいいですね。
同い年の彼女を「碕沢さん」とさん付けで呼び、ずっと敬語を使い続ける海生の真面目さがいい。
幽霊である碕沢さんにはこの世での生活にいろいろと不便があります。
海生の声以外の音は聞こえない。
物を動かすことができない。
ドアを通り抜けたりすることもできませんので、一人で部屋の出入りができない。
そんな不自由な碕沢さんを不器用ながらも一生懸命に支え、喜ばせようとする海生の健気さがいい。
地味ですがしみじみと感動できる恋愛小説です。
収穫でした。
ドラマにしてもいけるんじゃないでしょうか。
ラベル:小説
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2018年08月09日

「キネマの神様」原田マハ

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国内有数のデベロッパー(再開発企業)に勤める歩は39歳の独身女性。
巨大再開発プロジェクトの計画立ち上げに関わり、シネマコンプレックスを中心とした文化・娯楽施設担当課長に抜擢されます。
しかし業者と通じて職権乱用しているとの身に覚えのない噂が流れて左遷の辞令。
歩は辞職します。
同時期、映画好きでギャンブルが生きがいの父が倒れ、多額の借金も発覚。
医療費、借金の返済。
年収1000万の大手企業課長の娘に両親はそれとなく期待するのですが、いまや無職の身です。
それをなかなか言い出せなくて。
ある日、父が映画雑誌のブログに歩の文章を投稿するのですが、これがきっかけで歩は編集部に採用され、また父の文章が面白いとブログで連載することに。
ここから歩や父親の生活は想像もしなかった展開になります・・・・。
デベロッパーの女性課長という設定は以前に読んだ作品にもありましたね。
この設定がお好きなようですが、マンネリです。(笑)
さて、この小説はタイトルからもわかるように映画をモチーフとした作品です。
そこにブログというツールを取り入れて、これは今どきの設定ですかね。
ただちょっと感覚がズレているのが気になりましたが。
こういうのを取り上げるときは、ほんと最先端の感覚でないとつらい。
腐臭が鼻についてしまいます。
それはそれとして、父親の記事に対してローズ・バットという謎の人物がコメントするというやりとり。
これが話を盛り上げます。
登場人物の、そしておそらく作者の映画への思いが存分に込められています。
映画をモチーフにしつつ、家族、なにより映画好きな男同士の友情が熱く語られています。
ちょっと甘い話ではありますが、わくわく感動しつつ読みました。
ラベル:小説
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2018年08月07日

「流」東山彰良

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時代は1970年代。
台湾。
主人公、葉秋生の祖父が何者かにより殺されます。
誰が? どのような理由で?
悪友との付き合い、恋愛、徴兵。
台北で青春時代を過ごす秋生ですが、もちろん祖父のことは絶対に忘れるわけにはいきません。
青春に付き物のいろんなことを経験しつつ、しかしつねに祖父のことが頭から離れない秋生。
やがて知る真実とは・・・・。
台湾版アメリカン・グラフィティだな、と思ったのが正直な印象です。
といっても内容はずっと暗くて重いですけどね。
秋生の青春を描きつつ、祖父殺しの犯人を追い続けるというミステリーな要素もあります。
そして台湾の当時の歴史ですね。
これが濃密に描かれており、作品を実に厚みのあるものにしています。
やはりここですかね。
これは第153回直木賞受賞作なのですが、当時の台湾を匂いがわかるほどにきっちりと描いたのがよかったのかなと。
話の内容自体は台湾を舞台にした青春小説ですから、これだけでは軽い。
家族を描きつつ、背景をきっちり盛り込んでの成功でしょう。

ラベル:小説
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2018年08月05日

「日本の朝ごはん」向笠千恵子

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最近は朝ごはんを食べない人が多くなったと言われています。
私もその一人ですが。(笑)
1日の始まりである朝にごはんを食べないのはよくないというのが大方の意見ですね。
私は別に支障ありませんけども。
しかし仕事にしろ勉強にしろこれから体を動かし頭を使うわけですから、エネルギーを補充しておくというのは理にかなっているとは思います。
さて、本書では著者が朝ごはんを訪ねて日本各地に赴いておられます。
北は北海道から南は沖縄まで。
それは宿の朝ごはんであったりキャンプの朝ごはんであったり。
牧場の朝ごはんであったり寺の朝ごはんであったり。
いろんなシチュエーションの朝ごはんが紹介されているわけですが、それはただ単にいろんな種類がありますよだけじゃないんですね。
栄養学的医学的にどうこうというだけでもない。
タイトルでもあるように日本の朝ごはんの“風景”を取り上げておられるわけです。
家族そろって1日の始まりの食事をいただく。
朝食、昼食、夕食と3食ありますが、やはり朝食がいちばん日本の食卓のイメージが強いように思います。
そんな風景も失われつつあるようですが。
だからこそのこの本なんですね。
ラベル:グルメ本
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2018年08月03日

「サザエさんの東京物語」長谷川洋子

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著者は「サザエさん」の作者である長谷川町子の妹です。
そのような立場から見た長谷川家はどのような家庭だったのか。
長谷川町子とはどのような人物だったのか・・・・。
いまや国民的アニメである「サザエさん」。
日曜日の夜には欠かせない番組となっていますよね。
それだけに「サザエさん症候群」なんて言葉も生まれたりして。
誰もが知る「サザエさん」ではありますが、原作者が長谷川町子という人物だいうのはアニメのクレジットでけっこう皆さんご存知でしょう。
しかしアニメではなく原作を読んだことがあるということになると、その数はガクンと減るのでは。
ましてや長谷川町子がどのような人物であったのかとなると。
この本にも書かれていますが、晩年に日本漫画家協会・文部大臣賞を受賞した際、あまり人前に出たがらない長谷川町子氏が出席されたのだとか。
誰もまさか長谷川町子が出席するわけはないだろうと思っていた中での出席。
「パーッと花が開いたように脚光を浴びて会場に現れた」とのこと。
「動く長谷川町子を初めてみた」と会場はどよめいたそうです。
こうなるともう伝説の人物ですね。(笑)
で、この本の内容ですが、決して長谷川町子伝ではありません。
あくまで主人公は著者です。
長谷川町子の素顔についても語っておられ、またいくつかの写真も添えられてはいます。
ですがこれはあくまでも著者のエッセイです。
著者から見た長谷川家の記録。
これはこれで興味深く読ませていただきました。
しかし「サザエさん」という言葉を使うのは便乗的だなという気がしましたね。(笑)
ラベル:漫画本 エッセイ
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