2018年08月19日

「杳子・妻隠」古井由吉

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山登りをしていた青年が谷に下ります。
その深い谷底にひとり座っていたのが女子大生の杳子です。
どう考えてもまともな精神の持ち主ではありません。
かといってあからさまに異常というわけでもないのですが。
それから3か月後、彼はまた偶然に駅で杳子と再会します。
そこから彼と杳子は定期的に会うことになるのですが・・・・。
精神を病んでいる女子大生と青年の恋愛です。
青年は杳子の庇護者的存在なのですが、しかし客観的な視線(読者の視線)で見ますと、彼も杳子ほどではないにせよ同じ世界の人間なんですよね。
そしてどちらも現実感というか生活感がない。
特に彼のほうはひたすら杳子の相手をしていますが、まったくそれ以外の生活が描かれていない。
ひたすら物語は二人の世界を描いています。
世界が閉塞している印象を受けますね。
併録されている「妻隠」はアパートに住む若夫婦の夫の視線で語られています。
アパートの隣には一軒家があり、建築の仕事をしている男たちの寮です。
荒くれな男たちの視線に妻はいつも晒されています。
だからといって別に事件が起こるわけでもないのですが、全体に不穏な空気が流れていますね。
住居のシチュエーションがそうですし、夫婦のつながりのバランスもどうも不安定です。
どちらの作品も暗く狭く、そのぶん世界は濃密です。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『ふ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする