2018年12月19日

「私の食べ歩き」獅子文六

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作家による食エッセイです。
エッセイというよりも随筆といったほうがぴったりしますか。
日頃の日本での食べ物からパリで生活していたときに食べ歩いたフランスのレストランまで、幅広く書かれています。
相当な経験と知識をお持ちですが、魯山人などと違って(笑)文章に嫌味がないんですよね。
するすると気持ちよく読めます。
戦中戦後の食事情や、解説で山本益博氏も書いておられるようにパリの今は無き名料亭の名前がずらりと出てくるあたりも貴重な資料でしょう。
それらの話にいろいろエピソードを絡ませているあたりはさすがに作家の随筆というべきでしょうね。
ラベル:グルメ本
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2018年12月17日

「Cボーイ・すくらんぶる」唯川恵

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岡村菜奈18歳。
無事高校を卒業して短大進学も決まり、この春から親元を離れて金沢での寮生活が始まります。
カントリーボーイに辟易している菜奈は、ぜひとも金沢での生活で素敵なシティーボーイの恋人を見つけるんだと意気込みます。
しかし金沢に旅立つ前日、幼馴染みの涼太に呼び出され、結婚してほしいとプロポーズを受けます。
それだけならまだしも強引に大事なファーストキッスを奪われて。
好きでもない涼太にそのようなことをされ、平手打ちしてその場を去った菜奈。
寮生活が始まったものの、同じ大学に進学し寮も一緒な幼稚園からのライバルである日野杏子がなにかと目障りです。
杏子には幼稚園時代に好きな男の子を奪われた経験があるのです。
そして新入寮生歓迎コンパでその男の子こと智彦君と偶然再会した2人。
火花が散ります。
さて、菜奈の恋愛や大学生活は・・・・。
直木賞作家・唯川恵のコバルト時代の作品です。
発行は昭和60年。
30年以上も前ですね。
タイトルの「Cボーイ」というのはカントリーボーイとシティーボーイを引っかけているのですが、いまや死語。(笑)
雑誌「POPEYE」の時代ですよね。
そして「すくらんぶる」とひらがなで表記しているあたりも時代を感じさせて小っ恥ずかしいものがあります。
今になってそれをツッコんでもどうしようもないし作者もおそらく赤面するでしょうからともかくとしまして。
内容も今からすれば幼いといいますか純粋といいますか。
ファーストキスがどうとか、コンパでドキドキという世界です。
でも今のスレたティーンズラブ小説からすればこれが実に初々しく懐かしい。(笑)
恋愛については時代と共に男女間のハードルというのはもちろん大きく変わりましたけども、精神的な根本の部分では変わってないんじゃないかという気がします。
ただ昔は10段階だったのが今は1段階2段階で済んでしまっているというのはありますね。
なのでこのような10段の階段の1段目のようなティーンズ小説は時代錯誤かもしれませんが、だからこそもう一度読まれなおしてほしいという気もします。
ラベル:小説
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2018年12月15日

「パルプ」チャールズ・ブコウスキー 柴田元幸 訳

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私立探偵ニック・ビレーン。
いつも酒を飲んで競馬に入れあげ、ろくに仕事ができないのですがそれでも依頼は来ます。
妻の浮気調査だったり、いるのかいないのかよくわからない赤い雀を探してほしいという依頼だったり。
それだけならまだしも“死の貴婦人”という死神が出てくるかと思えば、地球を侵略するためにやってきた宇宙人の美女まで登場します・・・・。
いやもうめちゃくちゃです。(笑)
行き当たりばったりです。
普通こういうのは主人公が飲んだくれだなんだといってもここぞというときはビシッと締めるのですが、そんなのはまったくありません。
死の貴婦人に助けられたり宇宙人の美女に助けられたり。
主人公の刹那的で投げやりな生き方がまさしくストーリーにも表れているようです。
というか、めちゃくちゃな主人公を描くためのこのめちゃくちゃな話の展開なのか。
人生を達観したような世間を鼻で笑ったようなこの内容はさすがにブコウスキーというべきなんでしょうか。
ラベル:海外小説
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2018年12月13日

「ああ、堂々の自衛隊」宮嶋茂樹

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不肖・宮嶋、堂々のデビュー作です。
まず第一部ではPKOでカンボジアに派遣される輸送艦『みうら』に同乗し、艦内の自衛隊員たちを取材。
『みうら』の規模は2000トン。
青函連絡船が5000トン、東京⇔和歌山間のフェリーが1万数千トンとのことで、しかも『みうら』は船底が平ら。
つまり波が高くなるとかなり大変なことになるわけで。
そんな中での取材が始まります・・・・。
途中台風に見舞われたりしてとんでもない目に遭ったりするのですが、しかしそこは不肖・宮嶋、なんともまあ面白おかしく描いておられます。
爆笑の連続ではありますが、自衛隊員の大変な任務もきっちりと伝えているあたりはさすが。
第二部ではいったん凱旋した不肖・宮嶋、第二次出征です。
カンボジアはタケオ基地を取材。
基地の近くに小屋を建て、密着取材です。
これまた現地の取材でしかわからない実態をしっかりと書いておられます。
日本に居ながら現地の実態もわからず、自衛隊がどのような苦労をして活躍しているのかも知らずに派遣を批判する人たち、のんきに見学にやって来るピースボートやわざわざ反対の横断幕を持って批判に来る日本人市民連合の連中、大朝日や大毎日への強烈な皮肉は痛快です。
さすがの宮嶋といえましょう。(笑)
もちろん写真も掲載されており、いい写真を撮られますね。(というか、それが本職)
自衛隊員たちや現地の子供たちの笑顔、凱旋した自衛隊員たちと家族との再会の写真など、ぐっとくるものがあります。
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2018年12月11日

「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹

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山陰地方の山脈の奥に隠れ住む“辺境の人”にぽつんと紅緑村に置いて行かれた万葉。
村の若夫婦に引き取られ育てられましたが、やがて製鉄業で界隈に君臨する赤朽葉家に嫁ぎます。
子供の頃から未来の光景を見ることのできた万葉は千里眼奥様と呼ばれるようになります。
その娘で長女の毛毬、そして語り手である孫の瞳子。
赤朽葉家、女三代の物語です・・・・。
しっかりと世界観を作っておられるなという印象ですね。
万葉と毛毬が丁寧に描かれていますし、その二人を語りつつ赤朽葉家という家族を描き、ミステリーの要素もあり、そして1950年代からの日本の経済や風俗をきっちりと取り込んで厚みのある小説となっています。
語り手の瞳子から見て祖母は千里眼奥様、母は一世を風靡した漫画家、しかし瞳子自身は何物でもない平凡な女性。
このあたりの設定も時代を追って旧家の消滅といいますか時代の終焉といいますか、まさしく伝説的な雰囲気となっています。
私は特に第二部の毛毬の章がよかったですね。
毛毬のキャラが秀逸です。
なんだか嶽本野ばらの「下妻物語 ヤンキーちゃんとロリータちゃん」を連想しましたが。(笑)
このキャラには作者も手応えを感じられたようで、後に「製鉄天使」というスピンオフ作品を書いておられます。
読んでいるあいだはどっぷりと世界に浸ることができました。
お見事。
たいへん読み応えのある力作だと思います。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『さ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする