2019年03月10日

「お江戸の姫君 右京之介助太刀始末」高橋三千綱

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ある夜、女が浪人に追われる現場に出会った右京之介の手下の弥太。
捕らえられた女を助けようとした弥太ですが、逆に浪人に斬られそうになります。
しかしその浪人を別の浪人が斬り捨て、助かったかと思いきや、これまたその浪人に斬られそうになります。
「殺られてしまうのネ」と念仏を唱える弥太を助けてくれたのが我らが若様こと右京之介です。
その隙を突いて右京之介を腕の立つ黒装束の女が襲います。
寸前で攻撃をかわした右京之介は、女を捕らえて吉原の遊郭に閉じ込めます。
実はこの女は屋敷から逃げ出してきたお姫様でした。
さて、これから右京之介の周りでなにが始まるのか・・・・。
えっと、シリーズ第4弾になりますか。
なんだか前作あたりから内容が複雑になりまして。
今回もお姫様の父親の兄弟がどうこうという話があり、これがまあ事件のきっかけとなっているわけですが、そこにお女中やその旦那がどうという話も加わり、右京之介に惚れる問屋の娘が現れたり、とにかくややこしい。(笑)
私の頭が悪いだけなのかもしれませんが。
もうすこしすっきりしていただければありがたいんですけどね。
でも単純すぎても今回のような話は成り立たず深みもないわけですが。
それはともかく、やはりこの作品は右京之介のキャラでしょう。
いかにも高橋作品らしい飄々とした主人公。
実に魅力的です。
地の文やセリフの言い回しなども時代小説としては軽薄と受け止められるかもしれません。
ですが、何より登場人物に魅力があり小説として面白い。
若様がお江戸に新風を吹き込むがごとく、この作品も時代小説に爽やかでユーモラスな風を吹き込んでおられるのではないでしょうか。
次作も楽しみに読ませていただきます。
ラベル:時代小説
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2019年03月08日

「怖い絵 泣く女篇」中野京子

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シリーズ第2弾です。
今回紹介されているのは22作品。
正直なにが「泣く女篇」かいまいちよくわからないんですけどね。
紹介されている作品すべてが女の悲しさを描いているわけではないもので。
最後にピカソの『泣く女』を紹介しており、それをサブタイトルにしたのか。
表紙になっているドラローシュの『レディ・ジェーン・グレイの処刑』が怖いのは確かです。
今から斬首されるわけですから。
ジェーン・グレイはイングランド最初の女王。
しかしその期間はわずか9日間で、追われて半年後には処刑されてしまったそうです。
当時の年齢はなんと16歳。
ですがこの絵を見る限り取り乱した様子はうかがえません。
左手薬指の指輪、純白のドレスが清楚な花嫁を思わせ、このあと首を斬られ血まみれな現場になることを想像すると、絵を見る側のほうがうろたえてしまいそうです。
ミレーの『晩鐘』も紹介されています。
誰もが知る有名な絵ですね。
農夫婦が畑で日暮れに鐘の音を聴きながら、1日の終わりに祈っている姿です。
しかしこの絵を亡き子を土に埋め祈りを捧げている絵だと指摘したのはダリ。
そういうふうに見ると怖く悲しい絵といえます。
まさに「泣く女」でしょう。
ピカソの『泣く女』はキュビズムな絵なのでパッと見は滑稽です。
しかしよく見るとあられもなく号泣しているイメージが伝わってきます。
モデルは当時の愛人だったそうですが、他にも付き合っている女性がいたピカソ。
女同士の修羅場もあったようで、ずいぶんと女性を泣かせたようです。
でもこれ、「泣く男」ではまさしく絵にならないんですよね。(笑)
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2019年03月06日

「雪の鉄樹」遠田潤子

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祖父、父とも庭師の家に生まれ育った雅雪。
自身もやはり庭師です。
地元ではたらしの家といわれるほど祖父も父も女好き。
つねに女を家に引っ張り込んでいます。
そんな中で育った雅雪は、二十歳のころから十三年間両親のいない遼平という少年の面倒を見続けています。
幼い頃は雅雪に懐いていた遼平ですが、現在は雅雪を恨むようになりました。
雅雪が隠してきたある過去を知ったからです。
過去に何があり、そして十三年経った今、なにがあるというのか。
なぜ雅雪は遼平の面倒を見、その祖母にひたすら罵倒され頭を床に擦り続けているのか。
雅雪の体が引き攣れ、不自由なのはなぜなのか・・・・。
冒頭から読者に謎が提示されますが、なかなかその理由は明かされません。
読み進めていくとじわじわと氷が解けてくるようにその謎が明らかになってきます。
骨太な文章でぐいぐい読ませるその筆力が実にいい。
第15回大藪春彦賞候補になったという経歴も頷けます。
描かれているのは家族の愛憎であり、男女の愛憎です。
たらしの家系という設定がなんとも絶妙ですね。
情というものを持たない祖父の冷徹なキャラがすごい。
その犠牲になった父、それを目の当たりにしてきた雅雪。
この雅雪のキャラがまたいい。
トラウマを抱え、精神的な傷を負いつつ、ひたすら贖罪し続ける孤独感と悲壮感。
すべての謎が読者に明らかにされたとき、雅雪は、遼平は・・・・。
再生の物語でもあります。
ラベル:小説
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2019年03月04日

「実況・料理生物学」小倉明彦

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著者は大学の教授です。
大阪大学の理学部学生実習室での講義を書籍化したという体裁の内容です。
料理を生物学として体感し理解しようという趣旨です。
いやあ、面白そうですね。
こういう講義なら私も受けたい。(笑)
料理というのはすべて化学で説明できるわけで、カレーライス、ラーメン、ホットドッグ、お茶など、ごく身近な食べ物を題材にして講義しておられます。
なぜ牛乳は白いのか、なんてことも化学で説明がつくわけですね。
胃は消化液を出しているのになぜ胃を消化しないのか、なんて話もあります。
言われてみればそうですよね。
不思議な話ですが、ちゃんと理由があります。
料理を通じていろんな化学・生物学が学べる楽しい一冊です。
ラベル:グルメ本
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2019年03月02日

「ビブリア古書堂の事件手帖6 ~栞子さんと巡るさだめ~」三上延

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栞子から太宰治の「晩年」を奪うために階段から突き落とした田中敏雄。
おかげで栞子はいまだに杖をついて歩かなければなりません。
そんな田中から脅迫めいた手紙がビブリア古書堂に投げ込まれます。
五浦は田中に会いますが、手紙はどうやら田中ではなさそうです。
では誰が騙っているのか。
逆に田中は違う「晩年」を探してくれと依頼します・・・・。
シリーズ第6弾。
どんどんマニアックになってきましたね。
もともと古書を扱った作品ですからなんら路線は間違っていないのですが、ちょっと一般読者にとっては入り込み過ぎかなという気がしました。
逆に言えば古書マニアにはたまらないのかもしれませんが。
なにしろ太宰ですからね。
そしてアンカットがどうとかこうとか。
このあたり難しい所です。
いよいよ次巻で最終ですが。
まあ潮時でしょう。
さて、どのようにまとめるのか。
また時間をおいて読ませていただきます。
ラベル:小説 本・書店
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