2019年03月06日

「雪の鉄樹」遠田潤子

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祖父、父とも庭師の家に生まれ育った雅雪。
自身もやはり庭師です。
地元ではたらしの家といわれるほど祖父も父も女好き。
つねに女を家に引っ張り込んでいます。
そんな中で育った雅雪は、二十歳のころから十三年間両親のいない遼平という少年の面倒を見続けています。
幼い頃は雅雪に懐いていた遼平ですが、現在は雅雪を恨むようになりました。
雅雪が隠してきたある過去を知ったからです。
過去に何があり、そして十三年経った今、なにがあるというのか。
なぜ雅雪は遼平の面倒を見、その祖母にひたすら罵倒され頭を床に擦り続けているのか。
雅雪の体が引き攣れ、不自由なのはなぜなのか・・・・。
冒頭から読者に謎が提示されますが、なかなかその理由は明かされません。
読み進めていくとじわじわと氷が解けてくるようにその謎が明らかになってきます。
骨太な文章でぐいぐい読ませるその筆力が実にいい。
第15回大藪春彦賞候補になったという経歴も頷けます。
描かれているのは家族の愛憎であり、男女の愛憎です。
たらしの家系という設定がなんとも絶妙ですね。
情というものを持たない祖父の冷徹なキャラがすごい。
その犠牲になった父、それを目の当たりにしてきた雅雪。
この雅雪のキャラがまたいい。
トラウマを抱え、精神的な傷を負いつつ、ひたすら贖罪し続ける孤独感と悲壮感。
すべての謎が読者に明らかにされたとき、雅雪は、遼平は・・・・。
再生の物語でもあります。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『と』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする