重鎮の料理研究家によるエッセイです。
重鎮と書きましたけども、これはお世辞でも比喩でもない。
現在料理研究家を名乗る人は多数いらっしゃいます。
もちろんそれぞれご活躍なさっておられます。
でもほとんどの人が創作料理紹介家じゃないですかね。
昔ながらの日本の家庭料理をきっちり伝えようとしておられる人なんてほとんどいませんよ。
もちろん研究した結果の創作を披露しておられるんでしょうけど。
時代により料理も変わりますけど。
でも私はそんな創作料理よりも、昔の仕事を知りたい。
昔のごく普通の家庭料理です。
季節に応じた素材を使った料理。
旬を意識した料理ですよね。
意識したといいますか、昔は意識なんてしていなかったはずです。
その季節になればこの素材が出回る、なのでそれを使ってこのような料理を作る。
当たり前のことだったはずです。
特に和食というのは旬を取り入れた非常に理にかなった料理です。
でもなんで日本人の食事はこんなボロボロになってしまったのでしょう。
この本で著者はごく普通に食材の旬を語っておられます。
その素材の魅力、それを生かした料理法。
昔から伝えられた味。
こういうことをきっちりと後世に伝えようとしておられるから重鎮なんです。
食というのは突き詰めますと命ということになります。
自分の命をつなぐために食べる。
食べるというのは他の命をいただくということ。
だから「いただきます」という言葉がある。
武田鉄矢のウンチクみたいですね。(笑)
それはともかく。
でも、そこまで伝えようと仕事しておられる料理研究家さんなんてどれだけいます?
料理人にしても、それを伝えるマスコミにしても。
ましてや食べ手においてはミーハーなネットのグルメ連中。
昔、バブルと呼ばれた時代がありました。
当時は誰もそんな自覚はありませんでした。
今からすればなんで気付かなかったのと思います。
その真っただ中にいれば気付かないんですよね。
食に関しては今がそうです。
グルメとかなんとか、もうだめですって。
いいかげん、昔の価値に気付きましょうよ。
この本を読んで心を洗ってください。
ラベル:グルメ本