2019年11月29日

11月の一冊

今月は13冊の読書となりました。

・「清貧の食卓 文人グルメが明かす美味の原点」山本容朗 編
・「鶏」山上龍彦
・「迷惑メール、返事をしたらこうなった。 詐欺&悪徳商法「実体験」ルポ」多田文明
・「恋歌」朝井まかて
・「ようこそポルトガル食堂へ」馬田草織
・「すきやばし次郎 鮨を語る」宇佐美伸
・「不肖・宮嶋 死んでもカメラを離しません」宮嶋茂樹
・「テロリストのパラソル」藤原伊織
・「東京・地震・たんぽぽ」豊島ミホ
・「酒に謎あり」小泉武夫
・「33年後のなんとなく、クリスタル」田中康夫
・「性人伝」いその・えいたろう
・「面影」芝木好子

「清貧の食卓 文人グルメが明かす美味の原点」、いろんな文人の食エッセイが楽しめます。
今と違って食そのものに愛着とこだわりがあるんですよね。
「鶏」、ご自身の中で、主張したいこと書きたいことが上手く乳化されていなかったのかな。
そんな印象を受けました。
「迷惑メール、返事をしたらこうなった。 詐欺&悪徳商法「実体験」ルポ」、思いのほか中途半端で物足りない内容でした。
もっとツッコんでほしかった。
「恋歌」、明治時代に活躍した歌人の中島歌子の半生を描いています。
女の悲しさ、強さ、虚しさ、そういったものがひしひしと感じられました。
「ようこそポルトガル食堂へ」、ポルトガルの料理とワインに魅せられた著者。
ポルトガルのそれらを紹介したエッセイなんてあまりない(?)ので、貴重な一冊かと。
「すきやばし次郎 鮨を語る」、日本の鮨屋の最高峰的な「すきやぎし次郎」の店主、小野二郎。
その小野二郎についてじっくりと書かれています。
「不肖・宮嶋 死んでもカメラを離しません」、ご自身をイロモノ的自虐的に書いておられる不肖・宮嶋氏ですが、いやいやいや、日本でも指折りの報道カメラマンでしょう。
よく知りませんが。(笑)
「テロリストのパラソル」、途中まではよかったんですけどねぇ。
最後の辻褄合わせに白けてしまいました。
「東京・地震・たんぽぽ」、地震や台風など各地で被害が相次いでいる我が国日本。
そんな被害者の極限状態を作者はこのように描いてみせました。
「酒に謎あり」、人種を超えて愛されている酒という飲み物。
その歴史や各国の酒文化を緻密に検証しておられます。
「33年後のなんとなく、クリスタル」、昔ベストセラーになった作品の続編。
前作をベースにきっちりと現在を描いておられるあたりはさすがの田中康夫でしょう。
「性人伝」、“性”というやや後ろめたいジャンルに人生を捧げてきた人たちを紹介。
しかしその堂々の極めっぷりよ。
「面影」、人形師の世界を描いた小説。
男女の愛、芸術にかける情熱が静かに激しい。

さて、今月の一冊ですが、「恋歌」、「東京・地震・たんぽぽ」もよかったのですが、やはり芝木好子の「面影」ですね。
こういう世界に私は魅了されます。
今月の一冊はこれで。

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2019年11月27日

「面影」芝木好子

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久世龍彦は人形師。
一流の人形師であった父親を持つ、いわばエリートです。
そんな龍彦の前に現れたのが桂真子。
龍彦のように正統な血筋を持つわけではなく、突如現れた粗削りながらも天性の才能の持ち主です。
まったく違う個性を持つ二人がお互い男女として惹かれあいながらも、好敵手としてしのぎを削りあいます・・・・。
私は人形という世界に今まで全く目を向けたことがなかったのですが、当然その世界にも芸術としての美があり、技術があるということを認識しました。
今後は意識して人形というものを見ることになりそうです。
それにしても芝木作品に登場する人物たちの、芸術に打ち込むそのひたむきさ。
同時に男女の愛も描かれているのですが、それさえも凌駕するほどの情熱といいますか執念といいますか、激しさがあります。
やはり芝木好子の描く芸術の世界、職人の世界はいいですね。
まだまだ未読の作品が多くありますので、これからも楽しみに読んでいきたいと思います。
ラベル:小説
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2019年11月25日

「性人伝」いその・えいたろう

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“性”について極めた10人の男性へのインタビューです。
本妻、妾、合わせて15人の女性と同時進行で“性活”する男性。
84歳で週2回とか。
女性の汚れ下着を収集し、その数およそ1200枚という人もいらっしゃいます。
といっても決して下着泥棒で集めたのではなく、街中で声を掛けて貰ったといいますから、むしろその交渉術のほうがすごいのでは。(笑)
スワッピング1000回以上のご夫婦なんてのも登場します・・・・。
いやしかし。
どんな世界にも達人といいますか、その道を極めている人というのはいるのですねぇ。
私もスケベにおいては相当なものと自負しておりますが(恥)、こんな人たちを見せられたら。
性欲と双璧である食欲の場合、それを自慢する人は老若男女数多い。
グルメだ食通だと皆誇らしげです。
しかしそんな人たちも“性”に関しては口をつぐみます。
世間では“食”は陽であり“性”は陰という認識でしょう。
“性”について公に語るのははしたないと。
この本に登場する人たちはそんな陰の趣味を堂々と恥じることなく実践しておられる。
いや、趣味ではなくライフワークであり人生そのものですね。
まことにあっぱれです。
着飾って高級なレストランで食事している男女も、いざ密室に二人きりとなると本能むき出しで性欲を堪能しています。
しかし日常ではそんなことしてませんというような顔をし、このような人たちの性癖に顔をしかめたりしてはいないでしょうか。
同じですよ、食を語るのも性を語るのも。
世の中に食通がいるように、性通がいてもいいじゃないか。(笑)
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2019年11月23日

「33年後のなんとなく、クリスタル」田中康夫

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1980年に発表された小説、「なんとなく、クリスタル」
当時はずいぶんと話題になりました。
それから33年。
大学生だった登場人物たちも今は50代。
ヤスオは主人公だった由利と再会し、当時の記憶と現在が入り交じります・・・・。
この小説の主人公ヤスオというのはもちろん作者の田中康夫氏です。
どこまでが実話かはわかりませんが、長野県知事時代のことなどもきっちりと記述しておられます。
知事以外にも参議院議員、衆議院議員、などを経歴してこられたわけですが、しかしこの小説の肩の力の抜け感はどうよ、と思いますね。
ことさらそれを誇示するわけでなく、あくまでもさらり淡々と書いておられます。
もちろんそれがテーマの小説ではありませんので当然ですけども。
あくまでただの経歴です。
今、目の前の快楽を享受する若者たちを描いた前作と、そのスタンスはなんら変わりないように思えます。
と言いましてもこの国の未来を憂う気持ちはひしひしと伝わってきますが。
前作は中身がないだなんだの評価も飛び交いましたが(私もそう思ってました)、今から思えばさりげないけどとんでもなくしっかりきっちりと日本の現在と未来を書いておられたんですよね。
最後に日本の出生率のデータが記されているのですが、私など当時はその唐突な提示に「なんじゃこりゃ」と思ったものです。
とんでもない。
今後の日本の未来をビシッと突き付けておられたわけです。
本作のラストはヤスオが黄昏時の光に向かい歩み出すシーンで終わります。
「微力だけど無力じゃない」という言葉が作中に何度か出てきます。
それぞれが自分の生き方で歩んでいく。
その結果・・・・まだ希望はありますよね。
ラベル:小説
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2019年11月21日

「酒に謎あり」小泉武夫

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この地球上、酒を持たない民族はほとんどいないそうです。
そう考えると不思議な気がしますね。
大昔の文化の交流がなかった時代にも、地球のこちら側とあちら側で酒という飲み物が発生していたということですから。
どこかに発生源があり広まったわけではなく、自然と各地で誕生したんですね。
最初は偶然の発酵によるものだったはずですが、人間はそれを見逃さなかった。
つまりそれほど酒というのは人間にとって魅力ある飲み物だということです。
人種に関係なく。
で、当然その土地に応じた酒が発展していくわけです。
日本なら米を使った酒、フランスなら葡萄とか。
そんな風に人間と酒は大昔から切っても切れない関係なわけですが、この本では『味覚人飛行物体』、『鋼鉄の胃袋』、『発酵仮面』など様々な異名を持つ小泉センセイが、酒の歴史を縦軸に世界各国の酒を横軸に、縦横無尽に酒について検証しておられます。
身近な存在でありながら意外と知られていない酒についての話。
例えば『酒』という言葉はどこから来たのか、といういきなりなストレートパンチでこの本は始まります。
酒飲みを自負する人でもほとんどが答えられないでしょう。
なるほど、まさに「酒に謎あり」です。
ラベル:グルメ本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『こ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする