2019年12月31日

12月の一冊

今月の読書は15冊でした。

・「京都の中華」姜尚美
・「最悪」奥田英朗
・「名人 志ん生、そして志ん朝」小林信彦
・「ごくらくちんみ」杉浦日向子
・「潜入ルポ ヤクザの修羅場」鈴木智彦
・「素晴らしい一日」平安寿子
・「銀座八邦亭」森田誠吾
・「香港の食の物語」辻村哲郎
・「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」渡辺一史
・「ニッポンぶらり旅 宇和島の鯛めしは生卵入りだった」太田和彦
・「チャタレイ夫人の恋人」ロレンス
・「手塚番 神様の伴走者」佐藤敏章
・「はじめての恋ではないけれど」伊東悠香
・「わが百味真髄」檀一雄
・「世界ニホン誤博覧会」柳沢有紀夫

「京都の中華」、京都の中華が独特だというのはこの本で初めて知りました。
もちろん京都の中華屋すべてというわけではないでしょうけど。
「最悪」、つながりのなかった3人の人生がとんでもない形で交錯する。
なかなかの読み応えでした。
「名人 志ん生、そして志ん朝」、親子そろって名人という稀有な例ですね。
私は世代的に志ん朝ですが。
「ごくらくちんみ」、小説というよりは珍味を紹介した小話ですね。
内容はどうってことない。
「潜入ルポ ヤクザの修羅場」、ヤクザの実態が非常に近い距離から書かれています。
一般人にとっては近づけませんし近づきたくもないので、この世界を知るにはありがたいルポです。
「素晴らしい一日」、頭を下げてあちこちお金を借りて回る1日を描いています。
でも卑屈さがないところがこの作者の持ち味か。
「銀座八邦亭」、古き良き時代の銀座の物語。
味わいがありました。
「香港の食の物語」、食のガイドブックであり、香港の文化も紹介した一冊。
香港には縁がありませんが、思いのほか楽しめました。
「こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち」、障害者とそれを介護するボランティアの日々。
これを読むと障害者や介護への認識が変わります。
「ニッポンぶらり旅 宇和島の鯛めしは生卵入りだった」、ぶらりと旅に出て、その先で知らない居酒屋に入って時を過ごす。
酒飲みが憧れるシチュエーションです。
「チャタレイ夫人の恋人」、ひたすら退屈で長い小説でした。
理解できない私が悪いのでしょうが。
「手塚番 神様の伴走者」、マンガの神様手塚治虫という人物を、担当した編集者にインタビューすることにより浮かび上がらせています。
自伝ではなく資料により固めたドキュメントでもなく、生の声で手塚治虫が語られています。
「はじめての恋ではないけれど」、失恋がきっかけで見つけた本当の恋。
まあこういうこともあるでしょう。
「わが百味真髄」、買い出し命、料理命だった檀一雄。(笑)
その執念にはむしろ微笑ましさが漂います。
「世界ニホン誤博覧会」、外国にある変な日本語を集めた一冊。
軽く読めて笑えてひまつぶしには最適かと。

ということで今月の一冊ですが、読み終わって「これで決まりだな」というのはなかったですね。
読んでいる途中で「今月はこれがダントツだな」と思う作品に出会う場合もあるのですが。
でも今月はノンフィクションにいいのが多かったです。
「京都の中華」、「名人 志ん生、そして志ん朝」、「潜入ルポ ヤクザの修羅場」、「香港の食の物語」、「手塚番 神様の伴走者」、「わが百味真髄」。
その中でも「手塚番 神様の伴走者」ですかね。
手塚治虫という偉大な人物を編集者という立場で間近に見てきた人達の証言。
生き証人なんていうと大げさかもしれませんが、もう何年もすれば直接手塚治虫を知る人たちがいなくなってしまいます。
貴重なインタビュー集だと思います。
今月はこれで。

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2019年12月29日

「世界ニホン誤博覧会」柳沢有紀夫

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「日本語でどつぞ」と書かれた看板に遭遇し、その魔力に取りつかれてしまったという著者。
つまり、海外で見かけるヘンテコな日本語ですね。
それらを「どつぞ」と名付け、自分だけでなくネットでも協力を募り、収集した数々の「どつぞ」を本書に公開されました・・・・。
ありますね、ヘンな日本語。
ただ、こういうのはすでに宝島社から「VOW」シリーズとして刊行されていますので、目新しさはありません。
看板や商品のパッケージなどに特化しているというのが、まあ本書の個性でしょうか。
でもこういうのって流行り廃りなく、いつの時代にもそこそこウケる定番ネタではありますよね。
揚げ足取りの面白さです。
しかしこういうのを笑っていますが、日本はどうなんでしょうか。
例えば安物のTシャツにプリントされた英文なんか、アメリカ人なんかから見てどうなんでしょう。
日本人からすればオシャレ(?)であっても、外国人からしたらプッと噴き出してしまうかもしれません。
以前に外人さんが背中に大きく「熊出没!」と書いたTシャツを着ておられるのを見たことがあります。
意味が分かっているのかいないのかはわかりませんが、字面とかデザインを見てカッコイイと思ったんでしょうね。
日本人ならまず着ないでしょう。(笑)
和製英語なんてある意味この類かもしれませんね。
野球で「ナイター」なんていいますけど、正しくは「ナイトゲーム」だとか。
物を挟むことを「サンドする」なんていったりしますけど、「サンド」とは英語で砂ですからね。
挟むなんて意味はまったくありません。
でも日本では「パンでハムと玉子をサンドします」なんて平気で使っています。
「ポカリスエット」なんて「ポカリの汗」ということで意味不明。
「どつぞ」に話は戻りますが、だんだんとこのような間違いは是正されてきているようですね。
あらゆる所に日本人が進出し、そうなるとやはり間違いを指摘されることも増えてきたでしょうし、自主的に日本語で書かれた文章を見直すこともあるでしょう。
本来なら大変いいことであるはずなのですが、そんなのちょっと寂しい・・・・というか面白くないやん。
やはりこういう“文化”は受け継いでいただきたいですね。(笑)
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2019年12月27日

「わが百味真髄」檀一雄

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食通として知られた作家、檀一雄の食エッセイです。
いや、この人の場合食通という言葉は当てはまらないですね。
食通といいますとある程度スノッブさがないとだめでしょう。
美食家的な。
この本を読みますと、むしろそういう気取ったのとは対極のところで食を楽しんでいるようなところがあります。
本書にも書かれている通り、ぶらりと訪れた土地で立ち飲みや立ち食いの店に入り、コップ酒を楽しむみたいな。
そして檀一雄といえば食べるよりもむしろ作る側の人ですね。
「檀流クッキング」なんて本も書いておられるくらいですから。
とにかく料理大好き、買い出し大好き。
いや、わかります。
私もそういうの大好きですから。(笑)
本人も「世界を股にかけた料理人」と自称しておられたとか。
日本国内にとどまらず、まさしく世界を旅してその土地の料理を食べ、自分なりに咀嚼して再現したりしておられたようです。
旅に行く先々でその土地の食材を仕入れ料理しておられたとのこと。
わかるなぁ。
旅先の市場のなんという魅力的なことか。
自宅の庭に山ゴボウらしいものが自生しているのに気づき、味噌漬けにして家族で食べたところ、家族全員猛烈な下痢と嘔吐に見舞われたというエピソードも紹介しておられます。
そんな経験があるにもかかわらず、ある日庭に茸を見つけ、これは竹孫(キヌガサダケ)だと飛びつきます。
植物図鑑で調べると、どうもアミガサダケのようだと。
さっそく摘み取って料理し、酒友達に振舞ったところ大好評。
実際にアミガサダケだったのかどうかは不明ですが、いつの間にかその場には以前の山ゴボウで懲りている細君の姿はなかったとか。(笑)
食通というよりも食い魔といいますか、とにかくなんでも自分の手で料理して食ってやろうという探求心というよりも執念のようなものを感じますね。
このような話を読んでいますと、気取って流行りの店を追いかけてグルメを気取っているなんて、なんとも上っ面を撫でているだけなのだなぁと思えてきます。
こだわるのなら、もっと根本から「食」というものに食らいつかねば。
自分でも料理していろんな素材を“咀嚼”しなければ。
そんな思いを持ちました。
ラベル:グルメ本
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2019年12月25日

「はじめての恋ではないけれど」伊東悠香

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相澤奈々はまもなく25歳になる平凡なOL。
ですが同じ職場に彼氏の佐々木涼もいるし誕生日には指輪も買ってもらって、平凡ながらも幸せな日々です。
そんなある日、職場に年下の女子が途中入社してきます。
20歳の江藤マユリ。
最初は後輩としてかわいがっていた奈々ですが、男性社員に気のあるそぶりをして弄ぶタイプの女だということがわかってきて複雑な心境に。
自分とは無関係な男性にちょっかいを出しているうちはよかったのですが、なんと彼氏である涼にも接近していきます。
そしてついには涼を奪われてしまうのです。
精神的にもボロボロになってしまった奈々が逃げ口として求めた相手が、仕事に厳しく冷たい雰囲気の上司、樋口恵介でした。
奈々は恵介と心がない体だけの関係になります・・・・。
若くてキャピキャピした自分より若い女。
しかも男に気があるようなそぶりをするものだから男受けがいい。
同性からして思いっきり嫌な女ですよね。
そんなのに彼氏を取られたら、そりゃ精神的にダウンするでしょう。(笑)
そういう下地を作っておいて、上司と関係を・・・・というのはベタではありますが、作者もまあちゃんと辻褄は考えておられるのだなと。
いや、このエタニティのシリーズ、そんなの考えずにいきあたりばったりの脳内妄想で書いておられるような作家さんもいらっしゃいますので。(笑)
エッチの描写に関しましては、ヒロインがけっこう積極的なのがいいですね。
というのは、現実の男女の付き合いにおいて女性はいつも男性の誘いを待っている、なんてことはないわけですし。
付き合っていれば女性のほうからアプローチすることも当然あるわけで。
そのあたりは積極的というより、むしろ自然だなと思いました。
本編の他、2編の後日譚があります。
「Je te veux」という編にはちょっとホロッとさせられたりもしました。
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2019年12月23日

「手塚番 神様の伴走者」佐藤敏章

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手塚治虫といえばマンガの神様。
見た目も上品で優しそうなおじさんといった雰囲気です。
しかしそれは第一印象だけ。(笑)
担当の編集者からしたらとんでもないオッサンなのでした。
平気で嘘はつく、締め切り間際に逃げる、ときには原稿を落とす(締め切りに間に合わないこと)、などなど。
そんな手塚の担当編集者を手塚番と呼びます。
この本は手塚番となったばかりに地獄を見た(?)13人の編集者、プラス外伝として3人の編集者へのインタビュー集です・・・・。
マンガ界の裏話に興味のある人なら皆ご存じでしょうが、先述したように手塚治虫という人はとにかく編集者泣かせのマンガ家だったそうです。
九州に脱走したなんてエピソードもあります。
とにかく目を離すといなくなったり原稿を後回しにされたりするので手塚番はひたすら付きっ切り。
泊まり込み18泊なんてエピソードも紹介されています。
しかしさすがにマンガに関しては天才。
その仕事量たるや凄まじいものがありました。
もちろんすべてひとりでこなせるわけはなくアシスタントを何人も使っていたわけですが、出張先から電話でアシスタントに何ページの何コマ目はどこそこの引き出しにあるどの資料を使って、みたいな指示もしたようですね。
すべて頭の中に入ってるんですよ、原稿はもちろん作品に関係するすべてのことが。
記憶力はものすごく優れていたようですね。
まあとにかくエピソードといいますか、伝説には事欠かない偉人です。
個人的には少年チャンピオンの名物編集長だった壁村耐三氏へのインタビューが読みたかった。
この本の中でも何度か名前が出てきます。
伝説の編集者ですから。
この企画を立てた時点では亡くなっておられたようで。
手塚にハサミを投げつけたとか、リンゴを齧りながら手塚の仕事場にぶらりと現れてそのリンゴを投げつけたとか。
なにしろヤクザに腹を刺されてその傷をセロテープで貼り付けて出社したとか、この人もまたとんでもないエピソードの持ち主ですから。
私も一度だけお会いしましたが、「おぅ、〇〇。描けよ」と声を掛けていただきました。
ものになりませんでしたが。(笑)
手塚治虫にしろ編集者にしろ、こんな人たち今後は出てこないでしょう。
今から思えば、昭和って濃い時代だったんですねぇ・・・・。
ラベル:マンガ本
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『さ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする