2020年05月31日

5月の一冊

今月の読書は以下の15冊でした。

・「張形と江戸をんな」田中優子
・「パラダイス山元の飛行機の乗り方」パラダイス山元
・「主婦病」森美樹
・「かながわ定食紀行」今柊二
・「本で床は抜けるのか」西牟田靖
・「紀伊物語」中上健次
・「ランウェイ・ビート」原田マハ
・「煮たり焼いたり炒めたり 真夜中のキッチンで」宮脇孝雄
・「ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~」三上延
・「1985年のクラッシュ・ギャルズ」柳澤健
・「霧町ロマンティカ」唯川恵
・「早春 その他」藤沢周平
・「ニッポン全国酒紀行 酔っぱライター飲み倒れの旅」江口まゆみ
・「末裔」絲山秋子
・「酒のかたみに」監修 髙山惠太郎

「張形と江戸をんな」、江戸時代の性に対する女性のオープンさは意外です。
現代みたいに男女関係がチャラいというんじゃなく、ちゃんと自身の性欲に向き合っていたといいますか。
「パラダイス山元の飛行機の乗り方」、とにかく飛行機に乗るのが大好きな著者。
東京から名古屋に行くのにフランクフルトを経由したり、到着した空港から外に出ず乗ってきた飛行機でまた帰るなんて当たり前。(笑)
「主婦病」、タイトルにふと考えさせられました。
なるほど、これもまた“病”なのかと。
「かながわ定食紀行」、大阪在住の私にはなんら実用性のない神奈川県の定食屋紹介の本。
でもわかりますし伝わるんですよねぇ、定食屋好きな者としては。
「本で床は抜けるのか」、本を読まない人にとってはまったく異次元な話でしょうね。
しかし本好きにとっては深刻な話なのです。
「紀伊物語」、舞台はどっぷりと“路地”です。
その路地の終焉が描かれています。
「ランウェイ・ビート」、青春の熱さはいい。
しかし作者が無理をした痛々しさがなんとも悲惨。(笑)
「煮たり焼いたり炒めたり 真夜中のキッチンで」、外国のレシピ本から料理を紹介しておられます。
料理好きな翻訳者ならではかと。
「ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~」、いよいよ最終巻となりました。
巻を重ねるごとにちょっと最初のコンセプトからズレて小難しくなってしまったように思います。
「1985年のクラッシュ・ギャルズ」、私はプロレスにはまったく興味ないんですけど。
でもこういう裏のドラマというのはやはりいいですね。
「霧町ロマンティカ」、中年男性のリタイア後を描いた小説。
作者にとってさりげなく新しいジャンルに踏み込んでおられます。
「早春 その他」、作者にとっては珍しい現代小説。
貴重ですね。
「ニッポン全国酒紀行 酔っぱライター飲み倒れの旅」、ただ飲むだけでなく、しっかりと酒を造る人たちを取材し紹介しておられます。
ぜひともライフワークとして酒を造るいろんな人たちを取材していただきたいです。
「末裔」、いま自分が生きているこの世界は先祖からの歴史あっての現実なのか?
そんな認識を喚起させるような小説でした。
「酒のかたみに」、文学の歴史に名を遺した作家たちの酒。
昔の作家と酒ってなんでこんなにドラマチックなんでしょう。(笑)

で、今月の一冊を選ぶわけですが。
そうですねぇ、唯川恵さんの「霧町ロマンティカ」が思いのほか沁みたんですよね。
そんな大きな話ではないんですけども。
久しぶりに唯川作品を読んだせいもあるかもしれません。
今月はこれを選びます。

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2020年05月29日

「酒のかたみに」監修 髙山惠太郎

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「月刊たる」という大阪の出版社が発行している酒の専門誌に掲載されたエッセイ集。
もちろん内容は酒について書かれたもの。
いや、酒についてというよりも、酒を愛した作家たちについて書かれたエッセイですね。
昔の作家は酒が似合いました。
文壇バーなんてのもありましたし。
なのでエピソードにも事欠きませんでした。
そんな作家たちを、身近にいた編集者や文筆を生業とした人たちが語っておられます。
ここに登場する作家は、開高健、有吉佐和子、色川武大、立原正秋井上靖源氏鶏太池波正太郎、梶山季之、高橋和巳、森敦、稲見一良中上健次、吉行淳之介。
錚々たる顔ぶれですね。
皆すでに亡くなっておられます。
執筆しておられるのは菊谷匡祐立松和平山本容朗などなど。
こちらもまた亡くなっておられます。
昔の作家と生で接し、いろんな言動を見聞してきた人たちがいなくなる。
寂しいことですがこれも時代であり歴史であります。
なのでこのようなエピソードを文章で残しておられるのはとても貴重ですし、嬉しいことでもあります。
このあと「続・酒のかたみに」、「新・酒のかたみに」と出ており、どちらも購入済み。
また楽しみに読ませていただきましょう。
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2020年05月27日

「末裔」絲山秋子

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富井省三が帰宅するとドアに鍵穴がなかった。
そんなバカな。
しかしないものはない。
家の脇を通って裏に出るにも粗大ゴミが押し込まれ、隣からゴミ屋敷といわれるような状態。
とても通り抜けられません。
妻に先立たれ、息子は結婚して家庭を持ち、娘は家を出て消息不明。
つまり省三は一人暮らしで、中から開けてくれる者もいません。
家を閉め出されてしまい、町を彷徨うことになります。
謎の占い師と出会い、しゃべる犬と出会い、夢と現実のあいだを行き来し、やがて省三は現在誰も住んでいないはずの鎌倉の亡き伯父宅にたどり着きます・・・・。
いままで読んできたこの作者の作品とはちょっと雰囲気が違いますね。
かなりシュールです。
笙野頼子のような筒井康隆のような。
省三に起こっていることは夢なのか現実なのか。
これが横軸だとしたら、自分の人生や家族の人生、そして町や家の歴史や記憶といったものが縦軸となるのでしょうか。
この縦横さがなんとも私にとっては体の具合が悪い時に見る悪夢のような雰囲気を感じさせるのですね。
ノスタルジーな雰囲気もあるのですが、先が見えている人生に対しての冷ややかな諦めも感じますし、開き直りも感じます。
私にとってはちょっと難しかったですけど。
ラベル:小説
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2020年05月25日

「ニッポン全国酒紀行 酔っぱライター飲み倒れの旅」江口まゆみ

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酔っぱライターを自称する著者が日本の酒に腰を据え、全国を取材したのがこの本です。
以前に著者は「中国で、呑んだ!喰った!キゼツした!」という本を上梓されました。
凄まじい酔っぱらい本でした。
今回は日本。
世界中の酒を飲みまくり酒造りの現場も見てこられた著者ですが、日本では「飲むばかりでなにもやってないじゃないか」と。
というわけで、酒造りの現場を求めてあちこち旅立ちます・・・・。
取材しておられるのはホッピーの製造元だったり陶陶酒だったりデンキブランだったり。
酒飲みを自認する皆さんならこれらの酒はもちろんご存じでしょうね?
著者は取材し、ご自身でも工程を体験しておられます。
もちろん日本酒や焼酎、泡盛などの酒蔵も。
そしてバーテンダー、ソムリエ、きき酒。
一日入門ですが、これらも体験しておられます。
なかなか徹底的です。
酒飲みとして性根が座っていますね。
話題の酒を飲んであーだこーだ言う人は実に多い。
しかしその気に入った酒がどのように造られているのか、どんな人が造っているのか。
そこまで考える人なんてなかなかいません。
ましてや醸造元まで出向いて自ら仕込みを体験したいなんて人がどれだけいるでしょう。
ほとんどいませんね。
まあライターだからそれも仕事の内といえばそうなんでしょうけど。
ラベル:グルメ本
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2020年05月23日

「早春 その他」藤沢周平

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時代小説2編、現代小説1編、そしてエッセイという珍しい構成の一冊です。
表題の「早春」が時代小説の作家として知られる作者には珍しい現代小説。
5年前に妻を亡くし、娘の華江と二人暮らしの岡村。
華江は妻子持ちの男と付き合っています。
岡村は会社では窓際族、くたびれた建売の家はあと3年ローンが残っています。
妻の手料理が恋しく、立ち退きの話がある場末の和風スナックバー「きよ子」に通い、ママの清子に愚痴をこぼすような日々。
しかしある日いつものように「きよ子」に寄ってみると、灯りがついておらず真っ暗です。
しかたなく帰宅した岡村は華江から結婚するかもしれないという話を聞かされます。
付き合っている男がいよいよ妻と離婚を前提に別居したとのこと。
もし結婚して家を出るとなると、父親をひとり残すことになってしまいます。
そんなことに後ろめたさがあるのか、娘は「きよ子」のママに再婚を持ち掛けてみてはどうかといいます。
未亡人だという清子にまんざらでもない気持ちを持っている岡村ですが、だからといって声をかけてはいそうですかと話が進むものでもありません。
灯りが消えていた「きよ子」が気になる岡村は休日の昼間に店を訪れてみます。
向かいの店の女が言うには、どうやら店を畳んだようだと。
立ち退きの話は聞いていたものの、何も言わずにいきなり店を閉めるような人ではなかったはずなのに。
岡村は釈然としない気持ちになります・・・・。
なんともやりきれないようなリアリズムがありますね。
妻に先立たれ、職場では窓際族。
娘も結局は父親よりも付き合っている男です。
自分はこの家の相続権を放棄するので、再婚相手にそのように話を持ち掛ければいいとさえいいます。
まだローンが残っておりくたびれた家ではありますが、自分にとって勲章でもあるこの家をあっけなく「いらない」とはなんたる言い草か。
しかもかすかに期待していた「きよ子」のママも、実は未亡人ではなく旦那も子供もいたようです。
立ち退きにはさほど関心のない素振りをしていましたが、いちばんしつこくごねて高い立ち退き料を取ったのが「きよ子」のママだったとか。
やがて店は跡形もなく壊され、娘は初めての無断外泊をします。
いろいろなものが自分から去っていくんですね。
なんとも初老男性の寂しさ漂う一編です。
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『ふ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする