2020年05月21日

「霧町ロマンティカ」唯川恵

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50歳手前で航空会社をリストラされた梶木岳夫。
妻と離婚し、その後付き合っていた女性にも去られてしまい、現在は寂しい独り身です。
亡き父親が遺した別荘で暮らそうと軽井沢にやってきます。
無職で収入はなく不安はあるものの、とりあえずの生活はなんとかなりますし、自由の身です。
岳夫はここでいろんな人たちと出会います。
飲み屋の女将、その娘、常連の人妻、女性獣医、などなど。
岳夫はこの軽井沢でどのように生活し、自分を見つめ直していくのか・・・・。
裏表紙のあらすじを読みまして思ったのは、こりゃ「島耕作かいな」と。
いろんな女性と出会い、なぜかそのすべての女性にモテて、次々いてこましていい思いをするという。
すみません、そんなのじゃなかったです。(笑)
まず読み始めて思ったのが、今までの作者の作品とはちょっと雰囲気が違うな、と。
そう、中年男性が主人公だからなんですね。
女性の恋愛を書いてこられた作家さんですから、私が今まで読んできたのはすべて女性が主人公だったはず。
なので雰囲気の違いは感じたものの、それは決して違和感というものではありません。
そして主人公はいろんな女性と出会いますが、「島耕作」ではありませんでした。(笑)
ま、その中の一人とは関係してしまうのですが。
航空会社で外国から飛行機を輸入する部署で何十億という取引もしていた岳夫。
しかし会社から離れ、この土地で一人生活していく上でそんな経歴はなんの意味もないわけで。
仕事からも女からも見放された中年男が、この地でこれからどのように生きていくのか。
敷地に迷い込んできた犬を飼うことにするのですが、その犬とのつながりがいい。
仕事や女には裏切られ(女に関しては自業自得だったりもするのですが)ますが、しかし犬は飼い主を裏切りません。
この犬とのやりとりの描写がいいですね。
男として、家族を捨てた父親の人生を知り、噛み締めるところもいい。
主人公の岳夫の人生がメインではありますが、それぞれの女性たちの人生にも触れられています。
様々な事情を抱えた大人の男と女たち。
軽井沢という霧の町で展開されるストーリー。
読み応えのある味わいのある一冊でした。
ラベル:小説
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2020年05月19日

「1985年のクラッシュ・ギャルズ」柳澤健

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1985年。
日本武道館や大阪城ホールを満員にした女子プロレスラーのコンビ、クラッシュ・ギャルズ。
まさに人気は頂点でした。
プロレスといえば男性が好むスポーツというイメージがありますが、彼女たちに熱狂したファンたちはほとんどが少女たち。
クラッシュ・ギャルズの何が少女たちを熱狂させたのか。
一時代を築いた彼女たちの真実に迫ったノンフィクションです・・・・。
私の周りにもいましたね、クラッシュ・ギャルズファン。
芸能雑誌にも登場し、アイドル並の人気がありました。
その前はビューティ・ペアでしたっけ。
もひとつ前にはマッハ文朱なんていましたが。
さて、クラッシュ・ギャルズは長与千種とライオネス飛鳥というペアなのですが、どちらも重い事情を抱えた家庭で育っています。
ある日テレビで観た女子プロレスに大きな影響を受け、自分の進む道はこれしかないと女子プロレスラーを目指したというのは共通していますね。
ですが、入門当時はライオネス飛鳥はオーディションでトップ合格したエリートでしたが、正規のオーディションを経ていない長与千種は同期のダンプ松本らと同じく雑草組。
その二人がコンビを組むことになるのですが、実力では上回る飛鳥よりもルックスやスター性を持った千種のほうが人気を取ります。
この本を読みますと長与千種というのはプロレスのエンターテイメント性にかけては天才的な才能の持ち主だったようで。
なのでファンも7:3とか8:2とかで圧倒的に千種が多かったとか。
徹底的にプロレスをエンターテイメントと考えてリングで歌うことも辞さない千種。
なんでそんなことをしなければならないのかと思い悩む飛鳥。
すれ違いが始まります。
著者はこの本の中ではっきりと「プロレスはショーである」と書いておられます。
筋書きがあるんだと。
どっちが勝つか前もって決まっているんだと。
千種のすごいところはきっちりその役割を飲み込んで、エンターテイナーとしての演出能力がずば抜けていたところなんですね。
逆に飛鳥は実力はあるものの、ある意味不器用で華がない。
ここにすれ違いのひとつの原因がありました。
その後二人は紆余曲折のプロレス人生を歩みます。
そしてこの本はクラッシュ・ギャルズの軌跡を描きつつ、女子プロレスの歴史も描いています。
女子プロレスがいちばん輝いていた時代を綴った一冊といえるでしょうか。
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2020年05月17日

「ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~」三上延

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いよいよ本作が最終巻となりました。
あらすじはあまり細かく説明すると長くややこしくなりますのでかいつまんでいいますと、今回登場する本はシェイクスピアです。
「ファースト・フォリオ」というもので、これはシェイクスピアの戯曲をまとめて出版した最初の作品集だとのこと。
現存が確認されているのは二百数十部で、その価格は過去にサザビーズのオークションで6億円で落札されたこともあるとか。
吉原という一癖ある骨董屋が3冊の表紙の色違いのファースト・フォリオを所持しており、この中の一冊が本物だといいます。
それを古書市の競売に出品し、栞子と母親の智恵子の目利きを試そうというのです。
栞子と智恵子は本物を見抜くことができるのか。
失敗すれば大恥をかくどころか経済的にとんでもない打撃を受けることになります。
他の古書店主が息を詰めて見守る中、競売が始まります・・・・。
この栞子と智恵子の競り合いが今回のクライマックスで、なかなかの緊迫感。
読んでいてヒヤヒヤしました。
その行方はともかくとしまして。
7巻のストーリーがようやく終結したわけですが、でもなんといいますか、そのわりにはあまり万感の思いがないといいますか。(笑)
まあ五浦と栞子の関係は落ち着くべきところに落ち着いてめでたしめでたしですし、ビブリア古書堂の経営もまずは安泰で妹の文香の進学も問題なく。
栞子と母親智恵子の関係もやや氷解して一歩前進かな、とは思うのですが。
でも作者はあとがきで「大輔と栞子の物語には一応の結末をつけたつもり」と書いておられますが、「本編として完結するというのは間違いなんですよ」と。
どないやねん。(笑)
「今後スピンオフという形でまだまだ続きます」とのこと。
いや、こういうのってあまりダラダラ番外編で続けられてもね。
本編でしっかりと完結させた上でのスピンオフじゃないでしょうか。
続編はもちろん読みますけども。(笑)
シリーズ後半は結構マニアックでややこしい内容になってきてましたので、スピンオフではもっと肩の力の抜けたエピソードを読みたいです。
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2020年05月15日

「煮たり焼いたり炒めたり 真夜中のキッチンで」宮脇孝雄

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料理のエッセイやレシピ紹介にはいろんな切り口がありますが、本書は外国のさまざまな料理本からレシピを紹介しておられます。
ちなみに著者はミステリーの翻訳家。
なるほど。
外国のレシピ本なんて普通の人が見てもよくわかりませんもんね。
こんな人がこんな本を出している、こんなレシピが載っていると紹介しているわけです。
もちろんただ抜粋して翻訳しているわけではありません。
ご本人はもちろん実際に作っておられるようで、原文のレシピ通りではなくここはこのようにしてもいいだろうと日本人向けなアレンジのアドバイスもしておられます。
サワークリームがなければヨーグルトでもいいだろう、とか。
ハーブがなければパセリのみじん切りでいいだろう、とか。
そう、料理本のレシピって、中には「そんなもん家にないわ」というような材料や調味料が使われていたりします。
この本が出たのは1991年なので、当時は今ほどいろんな外国の食材がなかった時代でしょうし余計そうでしょう。
今でもレシピにエシャロットとか出てきても「近所のスーパーにそんなん無いわ」ですし、ワインビネガーなんていわれても「この料理のためだけにそんなん買ってそのあと何に使うん・・・・」となります。(笑)
まあ本格的に料理にこだわる人はあれこれ使いまわすんでしょうけど。
ちなみにこの本、単行本のときのタイトルは「書斎の料理人」だったそうです。
翻訳という仕事のストレス解消にゴルフなどではなく、たまたま自分の場合は料理だったと。
たしかに料理はストレスの解消になりますね。
私も無性に料理したくなる時があります。
そしてパチンコだゴルフだよりはよほど安価で生産的(?)です。
それはともかく、元のタイトルのままでよかったのになぁと思うんですけど。
ラベル:グルメ本
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2020年05月13日

「ランウェイ・ビート」原田マハ

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ある日転校してきた溝呂木美糸。
通称ビート。
身長150cmと小柄ですがとてもおしゃれな男子高校生です。
そんなビートがいじめられっ子の犬田ことワンダに目をつけ、おしゃれでイケメンに仕立てます。
やがて皆ビートに刺激され、ファッションショーを開き、ブランドまで立ち上げようとするのですが・・・・。
途中までは「野ブタ。をプロデュース」的な話ですね。
ですが、ひどい。(笑)
むちゃくちゃです。
まずどのキャラも変貌しすぎ。
いくらなんでもワンダが見た目だけでなくそこまで性格変わらんだろうと。
ワンダをいじめていたミキティにしても。
途中から出てくるデザイナーのミナモにしても、最初のクールさはどこにいったのか。
で、語り手が何回か変わるのもどうも落ち着きません。
主人公が高校生たち、そしてケータイサイトに連載されていたせいかちょっと軽くおちゃらけた文体なのですが、これも無理があります。
角田光代唯川恵がジュニア小説を書いていたころのような小っ恥ずかしさですね。
まあ皆で一丸となって大きなものに立ち向かっていく、自分たちが変えていくんだ、というその熱さは伝わりましたが。
ラベル:小説
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