2020年05月11日

「紀伊物語」中上健次

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大島から路地にやってきた道子。
道子の母静子もこの土地で淫乱な女として忌まわれていました。
複雑な血の繋がりがあるこの路地。
そんな土地で道子はなにをしようというのか・・・・。
これね、あらすじを書きようがない。(笑)
「大島」と「聖餐」という2編なんですが、ひとつの長編として読んでもいいでしょう。
思ったのは、道子の変貌ぶり。
「大島」で処女だった道子がなんで「聖餐」でこんなヤリマンになるの?
わけわかんないです。
路地でバンドを組み、半蔵二世が歌う「マザー、マザー、死のれ、死のれ」という歌。
これが路地の終焉に重なります。
中上の作品でお馴染みのオリュウノオバも出てくるのですが、作中で死去します。
まさに路地の終焉なんですよね。
で、「どうだったの?」と問われると、「どうだったんでしょうね」としか私には答えられません。
この作品で中上はこのようなことを主張していたのだ、なんてこと私にはわかりません。
しかし読後感はずっしりときました。
中上健次の小説って、私にとってはすごく重い。
大げさと思われるかもしれませんが、「よっしゃ、読むぞ!」と気合を入れて読まなければならないんですよ。
軽い気持ちで読める小説じゃないんですね。
なので読んだ後は脱力感があります。(笑)
これ、文学の力でしょうか。
この「紀伊物語」、中上作品のなかではもひとつ主流ではないなと思うのですが、しかしベッタリと路地を描いておられるのは貴重かなと思います。
ラベル:小説
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2020年05月09日

「本で床は抜けるのか」西牟田靖

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著者はノンフィクション作家。
職業柄、大量の本を所持しておられます。
木造2階建てのアパートの部屋は自分の足元が見えないほどの本で埋め尽くされています。
もしかしてこれは床が抜けるんじゃないか。
不安に襲われた著者は解決策を求め、井上ひさしや草森紳一らの事例を調べたり、いろんな人たちに取材を開始します・・・・。
いやもう、ずばりストレートなタイトルですね。
これ、本好きにとってはけっこうシビアな問題なんですよ。
他人事じゃないんです。(笑)
実は私もちょっと怯えています。
私の場合、別に作家のように資料として購入しているわけではなく、ただの趣味です。
なので読み終わった本はある程度溜まったらまとめて処分しています。(一部保存)
じゃあ問題ないのではと思われるかもしれませんが、実際家を占拠しているのは私の場合積ん読本なんですね。
読んでいない本が四方八方山積みになっています。
未読の本を処分するわけにはいきません。
なんでそれだけ積ん読本が増えるのかといえば、単純に読むペースよりも購入するペースのほうが数倍で上回っているからです。
じゃあこれ以上本を買わなければいいではないか。
ごもっとも。
しかし本書の解説にこう書かれています。
「本というのは買って読まずにいるのは耐えられるけど、買わずにいるのは耐えられないものなのである」
これ名言ですね。(笑)
いやいや、そんなことに感心している場合ではなく、ほんとに冷や汗かいています。
まあ私のことはともかくとしまして。
(でも本好きは皆同じだと思いますが)
で、著者は蔵書の電子化、処分された本はどうなるのかなど、単純に床抜け問題だけではなく、多方面に取材を拡げておられます。
タイトルの「本で床は抜けるのか」、ある意味これは読書家といいますか蔵書家にとって大問題であるのですが、一般の人にとっては「アホか」のひとことで済んでしまう話かもしれません。
もし心当たりのある人は、ぜひご一読を。
表紙のデザインもシンプルですが実にいい。
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2020年05月07日

「かながわ定食紀行」今柊二

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タイトルの「かながわ」というのは神奈川県のこと。
この本は神奈川新聞に連載された神奈川の定食屋を紹介した記事をまとめたものです。
その数50軒。
著者は定食屋を愛することで知られた人。
他にもいろいろと著書があります。
ですが定食屋を愛するということでは、ある程度の年齢以上の男性なら皆そうではないですかね。
気取った店なんかで昼めしを食いたくない。
安くて旨くてガッツリと。
カフェめしなんて頼まれてもいらんわ。
そんな人は多いと思います。
お洒落なカフェでパスタランチ?
本日のパスタにパンとサラダ?
で、980円?
アホかと。(笑)
んなもんで体が持つかいっ。
財布も持たんわ。
日本男児ならメシでしょ。
白ごはん。
これを大盛りにしてもらってね。
で、鯖の焼いたのだとか味噌煮だとか、トンカツだカラアゲだ、肉と野菜を炒めたのが皿にどばっとか、そんなのをおかずにして、白ごはんをわっしわっしですよ。
ごはんおかわりできますなんて言われたりしたらあんた、食べるペースも進みまして、おかわりしなきゃ損とばかりに1杯目をソッコー空けまして、「すんません、おかわり!」と。
これでしょ、定食屋。
いや、話が飛躍してしまいました。
これはあくまで私の個人的な思いであります。
著者はそこまでは書いておられませんので。(笑)
紹介されているのは必ずしも純粋な定食屋(大衆食堂)というわけではありません。
中華屋や洋食屋もあります。
しかしその姿勢は定食屋だったりするんですよね。
昔ながらの定食屋というのがどんどん無くなっています。
そしてこの本で紹介されている店も現在はやはり何軒も閉店しておられるようです。
寂しいですね。
ファーストフードやファミレス、チェーン店は気軽に入れますし便利です。
ですけどなんの風情もありませんし、店のオトーチャンやオカーチャンとの思い出とか、そんなのありませんもんね。
私は大阪在住で神奈川の定食屋なんてまったく縁がないわけですが、事情は同じ。
だんだんと、いい定食屋は姿を消しています。
このような本が定食屋存続につながりますことを。
ラベル:グルメ本
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2020年05月05日

「主婦病」森美樹

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6編の短編集です。
最初の1編以外、主人公はみんな主婦。
それぞれの話に直接のつながりはありませんが、金髪の若い男がどの作品にも出てきます。
物語のつなぎのような役割ですね。
2番目に収録されている「まばたきがスイッチ」というのがデビュー作です。
主人公は40歳手前。
夫は市役所勤務の平凡で面白味のない男です。
子供はいません。
夫が出て行ったあとはテレフォンセックスのサクラのバイトで小遣いを稼いでいます。
その都度いろんなキャラクターの女を演じて。
新聞の悩み相談室に載っていた『たとえ専業主婦でも、女はいざという時のために最低百万円は持っているべきでしょう』という回答を目にしたのがきっかけです。
経済的には夫の収入で十分なので専業主婦。
しかし妻に全く関心を持たない夫と平凡な毎日。
なんの刺激もないですよね。
時給2千円のサクラのアルバイトも毎日義務のように淡々とこなしています。
そんな彼女が唯一ときめくのが金髪の若い男。
主人公の住んでいるマンションの隣には木造の男子寮があるのですが、毎朝洗濯物を干すときにベランダから見下ろすと金髪の若い男が同じように洗濯物を干しています。
彼を眺めるわずかな時間だけが彼女の胸を高鳴らせます・・・・。
平凡な日常。
でも平凡の裏といいますかすぐそばには人生の岐路が隠れていたりするのだなと。
そんな思いを持ちました。
その岐路に自分から踏み出すのか向こうからやってくるのか。
それはわかりませんが。
ラベル:小説
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2020年05月03日

「パラダイス山元の飛行機の乗り方」パラダイス山元

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いろいろな肩書を持つ著者。
本職はミュージシャンだというまことしやかな噂もありますが、定かではありません。
だって会員制餃子店のオーナーとして餃子を焼きまくり、マン盆栽の家元を務め、アジアで唯一の公認サンタクロースとして毎年世界サンタクロース会議に出席し、1日に何度も飛行機に搭乗しCAの皆さんから「お帰りなさいませ」と言われるような人ですよ。
どこに音楽をやる時間があるというのか。(笑)
その飛行機ですが、とにかく著者の乗りっぷりが凄まじい。
例えば1日で『羽田-伊丹-高知-伊丹-福岡-五島福江-福岡-対馬-福岡-羽田-千歳-羽田』なんてことをやってのけます。
そりゃCAさんも「お帰りなさいませ」と言うでしょう。
無理矢理笑顔を貼りつかせて。(笑)
あるいは羽田から名古屋に行くのに『羽田-福岡-名古屋』なんてのは序の口。
これが福岡ではなく沖縄だったり札幌だったり、なんと外国で香港だったり、挙句の果てはフランクフルト経由・・・・。
東京から名古屋に行くのに何故ドイツなのか。
とまあ、こんな調子で搭乗履歴だけではなく、機内サービスやいろんな裏技(?)を惜しげもなく披露しておられます。
濃い。
面白すぎます、山元さん。
さすがにこれだけ飛行機に乗っていると、家族に宛てた遺書を書くほどのトラブルも体験したとか。
その遺書の中身も公開されています。
もちろん結果はご無事でなにより。
さすがに私はこのようなことができるお金も時間もありませんが、飛行機に乗るという行為には憧れますね。
というか、私にとっては飛行機に乗るなんてイベントですよ。
実際いままでに乗った回数なんて両手で足りるんじゃないですかね。
外国に行ったこともありますが、もちろんエコノミー。
ちょっと前に地元の空港にぶらっと見学に出かけました。
別に旅行に行くわけでもないのに、国際線のターミナルなんか歩くとウキウキしますね。
「おお、○時○分はロサンゼルスに行くぞ」とか「うぉっ、△時△分はパリだぞ、おい」とか。
自分には何の関係もないんですけどね。(悲)
展望台で飛行機の離着陸の様子を見て子供のようにはしゃいでしまいました。
運よくジャンボも見れました。
その大きさに改めて感動。
やっぱり男子はいくつになっても飛行機が好きなんですよ。
ラベル:エッセイ
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『は』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする