2020年07月20日

「輝ける闇」開高健

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舞台はヴェトナム。
語り手の「私」は日本人で、なんやらアメリカの軍隊と行動を共にしているようです。
どうやら私は作家であり、取材ということで記者として同行しておられるようですね。
さて、その私はヴェトナムで軍隊と行動を共にし、何を見たのか・・・・。
もちろんあのヴェトナム戦争です。
いうまでもなく「私」は作者です。
なのでルポタージュ形式の小説ともいえますね。
作家としていよいよこれからという時期に、戦時中のヴェトナムに飛び込んでの取材。
それがこの小説です。
サントリーの「やってみなはれ」の精神ではありませんが、さすがにこれは・・・・。
戦地のヴェトナムではありますが、あくまで取材している記者という立場なので、けっこうのんびりとしておられたりもします。
ですがラスト、周りのいろいろなことにも影響され、軍のけっこう無茶な作戦に同行するんですね。
この命からがらの、恥も外聞も捨てての、必死の逃避がものすごい迫力で迫ってきます。
200人の大隊が17人になっていたなんて記述はぞっとします。
いまさらですが、なにをやっていたんだアメリカ、ですよね。
しかし作者もよく食らいついたなと。
もちろんそんな状況に巻き込まれての泣き言も書かれています。
そりゃそうでしょ。
実際に泥に顔を埋め込むほどの銃撃なんてされたら、ションベンちびりますし、日頃のプライドなんてないですよ。
この作品についてですが、小説としては淡々としていてルポタージュっぽいし、かといってルポとしては心情が描かれていて小説っぽい。
そういう意味ではどっちつかずな気もしました。
とはいえ、それはあくまで私自身の感想で、この作品の評価に物申すものではありません。
でも。
こんな小説書く作家、現在にいますか?
もちろん時代もあるでしょうけど。
戦場に飛び込んで命張って、その事実を身に染ませて消化して。
書く。
開高健、あっぱれ。
ラベル:小説
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2020年07月18日

「世界のインスタント食品」森枝卓士

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インスタント食品といえば、いまやもう日本人には欠かせないでしょう。
じゃあ海外ではどうなのか。
この本では世界各地のインスタント料理事情を紹介しておられます・・・・。
日本ではインスタント食品なんて当たり前で、むしろ家庭に欠かせないくらいですよね。
では海外ではどうなのかと著者は取材します。
やはりあるんですよねぇ。
ただ国によって、やはり個性といいますか違いがあります。
この本で紹介されている各国のそれらをいちいちここで紹介はできないのですけども。
それぞれの国には食文化があり、インスタント食品が普及するならば、当然それを土台としたインスタント食品になるんですよね。
で、言えることは、やはり必然性。
著者はラーメンこそまさにインスタントの代表であろうというようなことを書いておられます。
まったくその通り。
日本人に「インスタントな料理てなんですか?」と質問すると、ほとんど「ラーメン」という言葉が返ってくるんじゃないでしょうか。
技術的には手間がかかるのでこんなこと一からやっとれんわい、というのがやはりインスタント商品になりやすい。
そりゃラーメンなんて麺からスープから手作りするとなるととんでもない手間ですからね。
だからそういうのがインスタント商品になる。
カレーなんてのも日本においてはインスタントの代表食品ですが、いまやインスタントのカレールーを使ってそれを手作り料理という人もいます。
若い女性に得意料理は何ですかと訊いて「カレーライス」なんて回答があったりするのですが、おいおいです。
市販のカレールーを使って作るカレーライスが本人としては立派に料理なんですね。
スパイスの調合から始めて「得意料理はカレーです」ならなるほどと思うのですが。
まあそれほどインスタント食品というのは身近になっており、料理のベースとなっているわけで。
他の国でもインスタント料理に関して日本に負けず劣らずもあれば、ほとんど普及していない国もある。
なぜか。
ここで説明するのはめんどくさいので本書でぜひ。(笑)
ラベル:グルメ本
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2020年07月16日

「〈美少女〉の現代史 「萌え」とキャラクター」ササキバラ・ゴウ

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現在のマンガやアニメにおいて、美少女というのは欠かせない存在です。
ではこの美少女というのはいつから登場するようになったのか・・・・。
もちろんマンガの中に登場するヒロインたちは皆美少女としてかわいく描かれてました。
でも最初のころはそれに“意味”はありませんでした。
さすがにわざわざブサイクには描きませんしね。
しかしだんだんとヒロインに“萌え”るファンが出てくるのですね。
まあ、ざっくばらんにいいますとオタクです。
マニアックな人たちが作品内の美少女キャラに注目する。
そうなると特定のマンガ家が注目を浴びたりする。
例えば吾妻ひでおとか。
やがてラブコメブームなんてのがやってきます。
有名なところではあだち充とかですね。
(柳沢きみおの「翔んだカップル」がラブコメの元祖といわれたりもしているのですが、本書ではそのような扱いはされていません。美少女マンガとはちょっと違うからか。笑)
ロリコンブームなんてのもありました。
内山亜紀なんてその代表だったように記憶しています。
少年チャンピオンというメジャー誌にまで進出しましたから。
で、本書の内容としましては、マンガやアニメにおいての「美少女」という存在の変遷を、マンガ・アニメ史を追いつつ、世間の風潮もちょっと意識しつつ、その時代時代でどのように捉えられてきたのか、なぜそのように変化してきたのかということを分析しておられます。
それはマンガの世界でもそうですし、現実においても価値観の変化がありますから。
少年マンガでは「スポ根」などというスポーツにそれこそ命を懸けるようなマンガもあったわけです。
「巨人の星」みたいな。
またそれに読者も胸を熱くしたわけですが。
これが現代になりますと(といってもけっこう前になりますが)同じ野球マンガでも「タッチ」になってしまうんですよね。
主人公は野球そのものに情熱を燃やしているわけではなく、ましてや命なんて懸けるわけもなく、美少女(朝倉南)を甲子園に連れていくのが目的だと。
美少女というのが作品内で非常に重要な役割を果たしていることになります。
彼女の存在が主人公(男)を行動させる動機になっています。
ま、そのようなことを詳しく分析、解説しているのがこの一冊です。
「美少女」をモチーフにマンガ史を語っているともいえます。
ラベル:マンガ本
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2020年07月14日

「圏外同士」冨士本由紀

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蕪木秀一郎は58歳。
食品メーカーに30年務めてきましたが、3年前に本社の部長職から社員30人ほどの子会社の社長に就任しました。
早い話が出世コースからの脱落です。
まだまだ自分はいけると思ってみたり、いやもうだめなのかと思ってみたり。
家庭では妻との関係も完全に冷え切っています。
そんなある日、美貌の女、夏日乃絵と知り合います。
乃絵は服飾デザインの専門学校を卒業し、国内の有名ブランドに就職しました。
しかし下働きばかりで嫌気がさしていたころ、同じ専門学校だった北川慎と再会します。
彼が店番をしていた店に作品を置いてもらったところ、予想に反してそれらは売れ、ファッション誌でも紹介されるようになります。
何の未練もなく会社を辞めた乃絵。
しかしその後いまいちパッとしません。
慎と話し合い、ニューヨークで勝負しようと渡米。
ですが当然ながら現実は甘くないということを思い知らされ、しかも最悪な経験をし、挫折。
慎とも別れ、帰国したところ秀一郎と出会ったわけです。
一目見て乃絵に惚れた秀一郎は、デカイことを言って収入を得なければならない乃絵を自分の会社に就職させます。
入ってみて会社のショボさに唖然とする乃絵。
下心丸出しの秀一郎に乃絵は見向きもしません。
可愛さ余って憎さ100倍の秀一郎。
2人はどのように絡み合い、日々前進していくのか・・・・。
ユーモア小説というべきでしょうか。
ただちょっと秀一郎のキャラが極端すぎですかね。
作りすぎな感があります。
ただこのコメディのようなキャラが小説をユーモラスにしているのは確か。
これ、まともな人物だったらかなり重い内容です。
初老の男が若い女(といっても30手前くらいですが)に入れあげ、ストーカーまがいの行動まで起こしてしまうのですから。
しかも妻には見放され。
妻は秀一郎を残しボランティアで海外に行ってしまうのですね。
こうなると男は惨めなものです。
乃絵は今回東京で開催される世界各地の主要都市で行われているファッションイベントに参加するべく、寝る間も惜しみ猛然とスパートをかけます。
しょぼくれた男と女たちのパワフルさが対照的。
まあ秀一郎もそれはそれで新しい一歩を踏み出すような気配はありますが。
でもラストはもうちょっとはっきりと結果を示してほしかった気もします。
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2020年07月12日

「セラピスト」最相葉月

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さまざまなジャンルを取材してきた著者。
今回は「心」や「精神」といった内面の世界でした。
といっても内面を覗き見ることは不可能ですので、心を病んだ患者をカウンセリングするカウンセラーや精神科医を取材しておられます。
彼らはいかにしてクライエント(患者)と関係性を築き、心を治療するのか。
河合隼雄の箱庭療法、中井久夫の絵画療法などを取材し、著者自身も実践しておられます。
5年ほどの年月をかけ取材してきて9割がた取材を終えたあたりで、著者の体に異変が起きます。
もともと精神的な病を抱えていることを自覚しておられたそうですが、原因不明の発疹や頭痛、胃痛、関節痛・・・・。
身体疾患の治療を終えた著者が最終的に訪れたのは精神科でした。
もちろん取材で精神科医やカウンセラーは何人も知っておられましたが、取材とプライベートは切り離さなくてはなりません。
紹介も何もなく町の小さなクリニックを訪れます。
下った診断は双極性障害II型。
信頼できる医師だったらしく、気分は安定し残りの取材や執筆を再開できたとか。
やはり心のことですので、医師と患者の相性というのはとても大切なようです。
これによって良くも悪くもなります。
軽度のものも含めれば精神的に病んでいる人は実に多い。
自分だって他人事ではありません。
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