2020年08月12日

「最終便に間に合えば」林真理子

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5編収録の短編集。
表題作はフラワーアレンジャーの女性が主人公です。
鳥の羽と粘土を組み合わせて作る造花のアーティスト。
OLからの華々しい転身としてマスコミにも紹介され、地方で講演などもし、そこそこ名も売れた美登里。
札幌で講師をするセミナーを終え、ふと昔付き合っていた男、長原がこちらにいるのを思い出します。
いや、札幌でのセミナー講師という仕事が決まった時点で長原のことは意識していました。
連絡を取り、会って食事する美登里と長原。
東京に戻る飛行機の最終便を意識しながら、食事中、そしてタクシーの中でと男と女の駆け引きが展開されます・・・・。
相変わらず女の本音を赤裸々に書いておられますね。
見栄もそうですし、性欲さえも。
恋愛小説を書く女性作家はたくさんいらっしゃるのですが、このあたりが他の作家とは違うんですよねぇ。
もちろん他の女性作家もそのようなことは書いておられるのですけど、等身大でないような気がするのですね。
例えば嫉妬の感情にしても、料理に例えましたら他の作家はレシピ通りの味付けなのですが、この作者は「えっ、そんな味付けもあったの!?」という書き方をされます。
でもそれはごく普通に誰もが思う(であろう)感情なんですよね。
他の女性作家が遠慮してしまうようなことを、恥じずに偽らずに書いておられる。
例えが悪いですが、男性の前で清楚に振舞っているのも女性なら、その同じ女性が自分の部屋ではパンツ一丁であぐらをかき、鏡見ながらムダ毛を処理したりしている。(ちなみに本作にそのような描写はありません。念のため。笑)
極端で品のない例えですけど。
この作者はあえて後者を書きます。
本来なら女性が男性に見せたくない(読ませたくない)部分です。
他の女性作家が突っ込めなかった部分を描いて、同性からの支持を得たのですね。
で、表題作ですが、まさしく昔の男に対しての女の見栄、くすぐられて揺らぐ気持ち、性欲など、しっかりと駆け引きの中で描いておられるなと思いました。
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『は』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする