2021年01月19日

「鳩の撃退法(上・下)」佐藤正午

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津田伸一は過去に直木賞を受賞したこともある小説家です。
しかし業界から干され、現在はデリヘルの送迎ドライバーをしています。
そんな津田のもとにあるきっかけで3千万円もの大金が転がり込んできます。
さっそくその中の1枚を使ったところ、何人かの手を渡ったところで偽札だったと判明。
警察だけでなく“本通り裏”の人物もその出所を追求しているようです。
その“本通り裏”というのは家族3人失踪事件やその街で起きた他のヤバイ事件にも必ず関わっているという人物で。
知らぬ間に津田は事件に巻き込まれていることに気づきます・・・・。
これ、「5」の続編なんですよね。
といっても話につながりはなく、小説家として干された津田伸一の後日談といいますか。
しかし後日談というようなのんびりした内容ではありません。
上下巻合わせて1000ページ以上の長編です。
津田は偽札を使った人物として追われ、しかも結果的に他のヤバイ事件にも関わってしまっている。
とっととトンズラすればいいものを、この男は首を突っ込んでいく。
この飄々とした津田のキャラは実に佐藤正午らしい。
まず主人公である自分が体験した事件を小説化して読者に提示しているというメタフィクション的なスタイルです。
そして現在と過去が入り混じってけっこうややこしい構成ではあります。
ですがしっかりと緻密に構成されており、巧みに伏線が張られています。
上手いなぁと思いますね。
ただ「鳩の撃退法」というタイトルにどのような結末をつけるのかなと読みながら思っていたのですが、それに対しては私はちょっと肩透かし感がありましたね。
尻すぼみ的な感を持つ人も多いんじゃないでしょうか。
この作品、第6回山田風太郎賞を受賞しています。
今まで無冠の帝王だった佐藤正午氏がようやく認められました。
選評会で筒井康隆氏が「この人を逃がすな」とコメントされたとか。
このあと「月の満ち欠け」で第157回直木賞を受賞されましたが、筒井氏のコメントが結構影響したんじゃないでしょうか。
私はそう思っています。
というか、もうとっくに受賞しておかしくないほどの作家でしたけどね。
やっと正当に評価されたのかという思いです。
まあなんにせよこの作品は相当な力作です。
あ、佐藤正午の小説に力作なんて言葉はふさわしくないか。(笑)
ラベル:小説
posted by たろちゃん at 01:00| Comment(0) | 『さ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする