短編集です。
西村寿行といえば長編でその力量を発揮される作家だと思いますが、短編もやはり読ませます。
この作者の短編の特徴として、ごく平凡な生活を営む主人公の日常に突如暗い影が差し込むというパターンがあります。
表題作もそう。
安いアパートに住む夫婦。
隣(我が家)の生活の物音が筒抜けです。
たまりかねて念願のマンションを購入。
しかしその隣人が変質者的な人間で、じわじわと主人公夫婦に精神的な抑圧を加えてきます。
飼っていたカナリアを殺され、虫をベランダに放たれ、あげくの果ては幼い娘までも標的に。
なけなしの蓄えで買ったマンションをいまさら手放すわけにもいかず、ついに主人公は殺意を抱くまでに・・・・。
日常のささいな事柄に潜む狂気。
こういう小説はさすがに上手いなぁと思います。
ラベル:小説