真剣師とはお金をかけて将棋を指すギャンブラーのこと。
「新宿の殺し屋」と異名を取った小池重明氏の物語です。
とにかく滅法将棋が強い。
しかしそれ以外はめちゃくちゃな私生活で、勤務先の金を持ち出しては女と駆け落ちなどということを何度も繰り返しています。
将棋に関しては最初は街中の将棋道場から始まり、めきめきとその頭角を現してきます。
そして「新宿の殺し屋」と呼ばれるまでになるのですが、当時二期アマ名人を獲得している大阪の加賀敬治氏から果たし状が届き、通天閣の将棋道場で決戦となります。
これはまさしく死闘だったそうですが、見事勝利し、事実上のアマ日本一に。
このあとはプロ棋士もことごとく退け、角落ちではありますが大山十五世名人、中原十六世名人、そして平手で森けいじ八段まで撃破。
大山名人との対局の前夜など、飲み屋で暴力事件をおこし留置場から二日酔いで駆けつけるという有様。
それだけの実力の持ち主ががなぜプロにならなかったのかといいますと、年齢制限があったこと。
しかしその才能に特例を認めるべきではないかとの声もあり、一時期はプロ入り寸前までこぎつけたのですが、問題はやはり小池氏の私生活でした。
あのような人物に特例を設けるべきではないと。
このあとはアマ大会で優勝し、二期連続のアマ名人になったりもしました。
しかしもはや真剣師で食べていける時代ではありません。
プロにもなれず、そして肝硬変が体を蝕んでいました。
結局四十四歳という若さでこの世を去ることになります。
まさしく波乱万丈、将棋を指すためにだけ生まれてきたような人だったようです。
団鬼六氏の重厚な筆が、見事に真剣師の生き様を描ききりました。
ラベル:ノンフィクション