主人公の女子高生はクラスや部活にあまり馴染めない存在です。
そんな主人公にとってクラスメート(男子)の「にな川」は、同じようなタイプの気になる存在。
オリチャンという人気モデルのファンな彼は、授業中にそのモデルが載っている女性ファッション誌を拡げているようなオタクです。
実物のオリチャンに会ったことがあるという主人公はその話題がきっかけで彼の部屋に招待され、なんとなくな付き合いが始まります。
2回目に彼の部屋を訪れたとき、彼はオリチャンのラジオ番組をイヤホンで聴き始めます。
目の前に彼女の存在なんかないかのように。
そんな彼の後姿を見て「この、もの哀しく丸まった、無防備な背中を蹴りたい。痛がるにな川を見たい」という欲望に駆られ、主人公は彼の背中を蹴飛ばすんですね。
タイトルはここからきているわけです。
蹴られた「にな川は前にのめり、イヤホンは引っぱられCDデッキから外れて、ラジオの曲が部屋中に大音量で鳴り響」き、「驚いた瞳で、彼は息をつめて私を見つめている」という描写には、絵が浮かんできて笑ってしまいました。
笑う箇所かどうかわかりませんけども。
なんで彼女が彼の背中を蹴ったかですが、解説の斉藤美奈子は一種の性衝動と読みます。
たしかに高校生の男女が二人きりで部屋にいながら、エロい雰囲気にはならないんですね。
どちらも頑なに自分の殻にこもるタイプ。
普通の青春小説ならどちらともなく求め合い・・・・といった展開になるのでしょうが。
私は「相手に自分の姿を見ていたたまれなくなった」という気がしました。
自己嫌悪をある意味自分と似たようなタイプの相手にぶつけたのではないかと。
自分に対する苛立ちやもどかしさがそのような形になって噴出したというような気もします。
まあ読み方は人それぞれとしまして、作者にとっては「インストール」に続く第二作。
デビュー作よりはよかったと思います。
ただどちらも閉鎖的といいますか、広がりがない気がしますが。