2009年07月25日

「不随の家」広谷鏡子

表題作の主人公は寝たきりの老女です。

ある朝、目覚めると大便を漏らしていました。

娘に面倒を見てもらっているのですが、それを見た娘の冷ややかな対応・・・・。

寝たきり老人の人格とその介護をテーマにした小説とも読めるのですが、しかし作者の主張はちょっと別のところにあるようです。

主人公の老女が実の娘を嫌悪するその理由。

自分と同じ女という性だという理由で、主人公は実の娘を嫌悪しているのです。

それなりのエピソードは描かれています。

娘と夫の自分が入り込めないような繋がり。

それに嫉妬や疎外感のようなものを主人公は感じます。

自由にならない体を抱え、誇りはあるものの娘に下の世話までしてもらわなければならない屈辱感。

そんな関係の中に、不安定な家族の繋がりが描かれています。

併録は「瑠璃のなかの夏」という作品ですが、私はむしろこちらに読み応えを感じました。

葉子と有里という二人の女性の視点で語られます。

葉子は大学の図書館に勤める図書館司書。

有里は朝鮮人の父親と日本人の母親を持つ在日三世。

あてもなくぶらぶらとした生活をしています。

葉子は毎日の平凡な生活に”出口”を求め、有里は朝鮮人でありながら叔母に「朝鮮人のくせに朝鮮語を知らない」と嫌味をいわれています。

そんな二人が朝鮮語学院という語学学校で出会います。

ちょっと頼りない葉子、しっかりしているけど放浪的な生活をしている有里。

二人は韓国に出かけ、それぞれのアイデンティティを模索します。

アイデンティティなんてそう簡単にこれがそうだと見つかるものではないと思いますしそのようなラストでもありませんが、読後は雨のあと雲の切れ間から陽が差し込むような清々しい開放感がありました。

解説は柳美里に書いてほしかったな。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 19:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 『ひ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック