2009年10月15日

「魔王」伊坂幸太郎

Cimg0412

「魔王」と「呼吸」の連作2編収録。

「魔王」の主人公、安藤は会社員。

早くに両親を亡くし、弟の潤也と二人暮らしをしています。

理屈っぽく考え深い兄。

考えることは得意ではないが記憶力と直観力に優れている弟。

ふとしたきっかけで安藤は自分が思った言葉を念じて、他人にしゃべらせられる能力があることに気づきます。

しかしその能力を使い始めてからどうも体の調子が悪い。

会社で倒れて医務室に運ばれてしまったりもします。

ちょうどその頃、政治の世界に一人の強烈な個性を持った男が現れます。

日本の国を変えることができるくらいのカリスマ性ある人物です。

しかし多勢の意見に同調し流されるのが嫌いな主人公は、その政治家にファシズムの危険性を感じるのですね。

主人公は政治家の演説場に向かいます。

自分の力でなんとかその政治家の独走を止めようと。

体の不調に見舞われながらも主人公は念じます。

「私を信じるな!」、「目を覚ませ!」

政治家にしゃべらせることに成功しますが、民衆の興奮に飲まれてなんの効果もありません。

やがて主人公に暗闇が訪れます。

「呼吸」はその5年後の話。

弟の潤也を妻の視点から書いています。

潤也もまた兄とは違った能力に気づきます。

なぜかじゃんけんでは負けない。

競馬も単勝なら勝ち続けることができる。

たまに兄が乗り移ったようになる潤也は、これで稼いだお金で世の中を変えることができるのではないかと。

妻は貯金通帳に記載された億単位のお金に気づきます。

妻は言います。

「お金じゃなくて、勇気かも」

潤也は言います。

「俺は、勇気すらお金で買えるんじゃないかって思うんだ」

答えは書かれていません。

今まで何冊か読んだ伊坂作品に比べると、ちょっと小難しくエンターテイメント性は低いですね。

憲法九条とかムッソリーニだファシズムだといった話題が出てくるせいかもしれません。

しかし主人公に『超能力』のようなものを設定することにより、しっかりとエンターテイメントな小説として成り立っていると思います。

決して思想にかぶれた説教臭い小説ではありません。

私としてはもっと突っ込んで掻き回してほしい気もしましたが、このあたりで余韻を残して切り上げるのが味わいなのかなぁ。(笑)

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 18:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 『い』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック