表題作は坊ちゃん文学賞を受賞したデビュー作とのこと。
いきなり「僕は捨て子だ」という書き出しで始まります。
主人公の育生が母親の実の子であるという証拠に臍の緒を見せろと迫るのですが、母親は卵の殻を見せ「育生は卵で産んだの」と、しゃあしゃあと答えます。
そんなこんなでタイトルがきてるわけですが。
最後のほうで母親は「この話をするのは最初で最後」と真実を語ります。
もう一篇の「7's blood」。
主人公の七子は女子高生。
死んだ父の愛人の息子である小学生の七生と同居することになります。
母親は入院しているので実質二人暮らしです。
そんな生活の中で異母姉弟はどのように心を打ち解けさせていったのか。
どちらの小説も血のつながりというものを扱っているのですが、しかしそれを超えた大きな気持ちを感じさせる内容です。
血のつながりというのはもちろん大切な事実でしょう。
しかしそれが家族として絶対の条件であるのか。
つながりがなければ家族として成り立たないのか。
血が繋がっていなくても親が違っても通じ合うものがあるではないか。
優しさあふれる温かい小説でした。
ラベル:小説