永吉は豆腐職人。
京から江戸の深川にやってきました。
長屋の一軒を借り「京や」という豆腐屋を始めるのですが、硬い江戸の豆腐に慣れている人たちには栄吉の柔らかい京風の豆腐が口に合いません。
それでも長屋で知り合い妻となったおふみやその両親、そしていろんな人たちの協力を得て次第に大きくなり、表通りに店を出すまでになります。
そのような内容の物語がとても密にみっちりと描かれています。
永吉の京言葉に深川の人たちの歯切れのいい台詞がまた心地いい。
そして人々の人情。
時代設定もきっちりとしており、どしっとした安定感があります。
読ませますねぇ。
永吉一代の成功物語かと思っていたらそうではなく、おふみとの間に生まれた三人の子供に話は移ります。
博打に手を出し借金をこさえ、家を追い出される長男の栄太郎。
「京や」の跡を継ぐことになる次男の悟郎。
その悟郎を支えるしっかり者の妹おきみ。
悟郎の嫁のすみ。
永吉やおふみの亡き後、子供たちはどのように「京や」を維持していくのか。
親子、いや、家族の絆の話としてぐいぐい読ませてくれるのです。
第126回直木賞受賞。
直木賞にしろ芥川賞にしろこれのどこがという受賞作も多い中、これは堂々の直木賞でしょう。
いい小説でした。
ラベル:時代小説