2010年08月29日

「ちょんまげぷりん」荒木源

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遊佐ひろ子はシステムエンジニアリングの会社に勤めるシングルマザー。

保育園に通う友也と二人暮らしです。

そんな親子がある日近所で侍の恰好をした男と出会います。

成り行き上男を家に連れ帰り話を聞いたところ、恰好をしているのではなくて本物の侍でした。

男の名は木島安兵衛。

どうやら文政九年(一八二六年)からタイムスリップしてきたらしいのですが・・・・。

食事を与え、警察に行くよう勧めていったんは家から出すのですが、数日後安兵衛はずぶ濡れになりまたひろ子の家に戻ってきます。

警察に行くこともふんぎりがつかず、あちこちうろうろしていたとのこと。

飢えと疲労でへとへとになり、頼れるのはひろ子だけと戻ってきたのです。

乗りかかった舟とひろ子は安兵衛を家に置くことにします。

息子の友也も懐いていることですし。

だんだんと現代の文明にも慣れ、世話になるだけでは心苦しいと安兵衛は家事を引き受けます。

特に料理については目覚しい進歩があり、中でもスウィーツの腕前が素晴らしい。

遊びに来たひろ子の友人親子にまるで三ツ星レストランのデザートワゴンのようなそれらを振舞うと大好評。

友人はおせっかいにもテレビの手作りケーキコンテストに勝手に応募するのです。

書類審査を通過し、予選もクリア。

そして本選で優勝。

ここが物語のちょっとした山場ですね。

ただそれから三人の生活に変化が訪れます。

その姿といい言葉遣いといい、またたく間に世間の注目を浴び、一躍時の人となる安兵衛。

マスコミに引っ張りだこになり、ひろ子と友也からだんだんと離れていってしまうのです・・・・。

いわゆるタイムスリップ物ですね。

それ自体は目新しい設定ではありません。

その人物がタイムスリップした先で何をするのかがこういう話のミソになります。

その時代に受け入れられるのか、はじかれてしまうのか。

歴史を変えるべく動くのか、時代に溶け込むのか。

どんな騒動を繰り広げるのか。

この小説では安兵衛はなんとパティシエになるのです。

和菓子の職人ではなくケーキなどの洋菓子です。

そんな物語の流れの中に現代社会への風刺がちらほらと伺えます。

居候先が母子家庭という設定、公衆の場で迷惑をかける子供への大喝、テレビでのフェミニズムな女性弁護士に対しての正論、子供とのコミュニケーション、働くことの喜び・・・・。

安兵衛の無骨なキャラが嫌味なくとてもいい味わいを出しています。

古風な言葉でのやりとりに何度も噴き出したりしましたし、そしてほろりとさせられもしました。

物語の流れはステレオタイプではあります。

でも素直に身をゆだねて楽しみたいですね。

いい小説でした。

ラベル:小説
posted by たろちゃん at 17:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 『あ』の著者 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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