梶原一騎。
まさに漫画界の巨星でしたね。
「巨人の星」、「あしたのジョー」、「愛と誠」、「タイガーマスク」、「柔道一直線」・・・・。
数々の名作を世に生み出しました。
この本はタイトル通りそんな梶原一騎の生涯を実に深く描き出しています。
ただ優れた漫画原作者であったというだけならおそらく著者も梶原氏を取り上げることはなかったのではないでしょうか。
漫画業界だけではなく社会的にもダーティーなイメージが付きまとっていた梶原氏。
青少年に多大な影響を与えた作品を生み出しつつ、しかしその過程にはどのような私生活があったのか。
その闇の部分が人間・梶原一騎がいまだ語り継がれる理由でもありましょう。
やはり読んでいても作品を生み出していく過程より、それにともないどんどん変貌していく氏の生き様に興味を惹かれます。
本来はとても純粋な人物でありながらもコワモテで聞こえた梶原一騎。
後年は作品について誰も口出しできず、編集長さえ意見できず、パーティでも誰も回りに近づかなかったといいます。
空手家・大山倍達との決裂も氏の人生にとっては大きな出来事でした。
漫画家・つのだじろうやプロレスラー・アントニオ猪木軟禁事件、恐喝、銀座の女や芸能人との数々の女性スキャンダル、暴力団との関係、傷害容疑による逮捕・・・・。
転げ落ちるような荒んだ生活、どんどん質が低下する作品・・・・。
体も心もボロボロになっていきます。
家庭生活も恵まれていたとはいえなかったようですね。
マイホーム主義をとことん嫌っていた氏ですが、実は憧れへの裏返しであったような感もあります。
晩年はどうにか別れた家族とも元に戻り穏やかな生活をされていたようですが、最後の章を読むと散々狂乱の限りを尽くした氏もやはり人の親なんだなと思えます。
本来の純粋さや優しさが垣間見えるのです。
そして五十歳の若さで氏は世を去ります。
まさに太く短く、駆け抜けていったような人生でした。
人間・梶原一騎を知る貴重な一冊です。