鳥取県と岡山県の県境にある「八つ墓村」。
その名前の由来は永禄九年に遡ります。
八人の落武者がこの村に逃げのびてきました。
三千両もの黄金を携えて。
はじめはこの落武者たちを快く迎えた村人ですが、金に目が眩み八人を惨殺するのです。
しかし肝心の黄金は見つかりません。
その半年ほど後、この村にしきりに落雷があり、八人の怨念かと村人は怯えます。
落武者惨殺の首謀者であった田治見左座衛門は事件からずっと体の調子がおかしくなり、庭の杉の大木に落雷したことで発狂してしまうのです。
そして家人やら村人を次々とぶった切り、自分も首をはねて死んでしまいます。
そのときの死者が左座衛門も含めて八人。
落武者の怨念だと恐れた村人は、犬猫のように埋めておいた八人の落武者の死骸を掘り起こし、丁寧に埋葬し八つの墓を立て、明神とあがめ奉ることにしました。
これが八つ墓村という名前の由来です。
そして大正×年。
当時の田治見家の主人要蔵も嫁の鶴子に逃げ出されたことが原因で狂気が爆発。
やはり村人を片っ端から殺してまわります。
その数三十二人。
八の倍数です。
やはり八つ墓の祟りであると、村人を恐怖のどん底に陥れます。
そして昭和×年。
ある弁護士から主人公の辰弥の消息を探している人がいるといわれ、辰弥は八つ墓村に行くことになります。
実は辰弥は大正×年に事件を起こした要蔵の息子であり、田治見家の跡取りとして迎えられたのでした。
当時要蔵から逃げた鶴子が連れ出した子供が辰弥であり、辰弥はそこで初めて自分の生い立ちを知ります。
しかしそこからまた八つ墓村を舞台に新たな連続殺人事件が起こるのです・・・・。
つねに辰弥がかかわる形で事件が起こります。
否応なく事件に巻き込まれていく辰弥。
要蔵の息子ということで村人には元々歓迎されていなかった辰弥ですが、まさに不吉を持ち込んだとして疎んじがられ、やがては犯人扱いされ村人に命を狙われ追い込まれます。
犯人は誰なのか、何の目的で無差別な殺人を重ねていくのか。
偶然八つ墓村にいた探偵の金田一耕助も事件の解明に乗り出します・・・・。
いわゆる探偵小説ですね。
現在からすれば懐古的でありやや耽美的な雰囲気もあり、ミステリーというよりその呼び名のほうが相応しい。
連続殺人事件の犯人とその目的の謎を軸に、村の地下全面に拡がっている鍾乳洞の謎や、隠されている三千両の黄金を探すという冒険小説の要素もあります。
そして恋愛も。
ただ恋愛話はあまりにもお粗末と言わざるを得ませんが。(笑)
最後はお決まりの探偵による長い講釈です。
これって謎解きというよりも、作者が最後に必死になって辻褄合わせの弁解をしているように思えてしまうのです。
ま、水戸黄門の「控え控えいっ」の印籠出しや、遠山の金さんの「おぅおぅおぅっ」の刺青出しと同じく、待ってましたっと喜ぶのが正統な楽しみ方なのかもしれませんが。